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エアギャップバックアップとは?理想の隔離環境を実現する方法を解説
ランサムウェア攻撃は年々巧妙化し、近年ではバックアップインフラそのものが攻撃対象となっています。こうした脅威への備えとして注目されているのが「エアギャップバックアップ」です。
本記事ではエアギャップの基本から物理エアギャップの課題、クラウド上で同等の隔離を実現する論理エアギャップの仕組みまでを解説します。
エアギャップバックアップとは
エアギャップバックアップとは、本番環境とバックアップデータの間にネットワーク的・物理的な「隔たり(gap)」を設けることで、攻撃者がバックアップに到達できない状態を作るセキュリティ手法です。万一ランサムウェアが社内ネットワークに侵入しても、エアギャップで隔離されたバックアップは影響を受けないため、確実な復旧が可能になります。
エアギャップは、バックアップの基本原則である「3-2-1ルール」をさらに強化する手段としても有効です。3-2-1ルールでは、3つのデータコピーを2種類の異なるメディアに保存し、1つをオフサイトに保管することが推奨されていますが、このオフサイトコピーをエアギャップ環境に置くことで、保護レベルを大きく引き上げることができます。
なお、エアギャップには大きく分けて「物理的エアギャップ」と「論理的エアギャップ」の2種類があります。以下では、それぞれの仕組みと特徴について詳しく見ていきましょう。
物理エアギャップの仕組みと運用課題
物理エアギャップはエアギャップの原型ともいえる手法で、長年にわたり多くの企業で使用されてきました。しかし最近では、データ量の増大やビジネスにおける即時復旧の要件が高まる中で、運用上の限界が顕在化しつつあります。
物理エアギャップの仕組み
物理エアギャップとは、バックアップデータをテープや外付けディスクなどのリムーバブルメディアに保存し、ネットワークから「物理的に切り離して」オフサイト(外部倉庫など)に保管する方法です。バックアップメディアとネットワークの間に物理的な接続経路が一切存在しないため、ネットワーク経由による不正アクセスを完全に排除できます。
アクセスを確実に遮断できるというセキュリティの高さから、金融・医療・公共機関など厳格なデータ保護が求められる分野で長年採用されてきました。
物理エアギャップが抱える運用課題
物理エアギャップには、いくつかの構造的な課題があります。
最も大きいのが復旧速度の問題です。テープメディアの搬送や読み込みには時間がかかり、RTO(目標復旧時間)が長期化します。ビジネスの即時復旧が求められる現代において、この遅延は大きなリスクです。
運用面でも、テープの搬送スケジュール管理、保管倉庫の維持費用、メディアの経年劣化チェックなど手作業の工程が多く、ヒューマンエラーのリスクが伴います。保存できるデータの容量はテープメディアの物理容量に依存するため、データ量が急増した際にスケールアップが難しい場合もあります。
論理エアギャップとは?クラウドで実現する隔離環境
物理エアギャップの課題を解消するアプローチとして注目されているのが、論理エアギャップです。ここでは、その基本的な仕組みと、実効性を確保するために求められる要件を整理します。
論理エアギャップの基本的な仕組み
論理エアギャップとは、物理的なメディアの切り離しに代えて、暗号化・アクセス制御・ネットワークセグメンテーションなどのソフトウェア制御によって「仮想的な隔離」を実現する手法です。
バックアップデータはクラウドストレージ上にオンラインで保持されますが、厳格な認証と制御を経なければアクセスできない設計となっています。テープの搬送や保管といった物理プロセスを排除しつつ、物理エアギャップに匹敵する堅牢な隔離環境を実現します。
論理エアギャップで求められる要件
論理エアギャップが物理エアギャップに匹敵する防御力を発揮するには、いくつかの要件を満たす必要があります。
要件
内容
不変性(イミュータビリティ)
Object Lock等の仕組みにより、書き込み後のデータを改ざん・削除できない状態にする
MUA(マルチユーザー認証)
単一アカウントの認証情報が漏洩しても、複数担当者の承認なしには削除操作を実行できない仕組みにする
可視性の制御
攻撃者がバックアップの存在を発見・列挙できないようにする
これらの要件を高い水準で満たすほど、物理エアギャップに迫る堅牢性を確保できます。
Wasabi Covert Copyで論理エアギャップを構築する方法
クラウドストレージ上に論理エアギャップを構築するには、複雑なツールやポリシー設定が必要になることが少なくありません。Wasabi Hot Cloud Storageの「Covert Copy」は、こうした手間をなくし、わずか数クリックで論理エアギャップ環境を構築できる機能です。
>Covert Copy | Wasabi Technologies Japan合同会社
Covert Copyとは?「見えない金庫」を作る仕組み
Covert Copyの仕組みはシンプルで、保護したいストレージバケットを選ぶと、Wasabiがそのデータのコピーを自動で作成し、権限を持つユーザー以外には「見えない状態」にします。
さらに、コピーされたデータは厳重にロックされ、変更・削除・暗号化が一切できないイミュータブル(不変)な状態で保持されます。万が一コピーの存在が知られたとしても、データにアクセスするにはMUAによる承認が必要です。1人の管理者の認証情報が漏洩しただけではデータに手を出せない仕組みになっているため、内部犯行のリスクにも対応できます。
追加コスト不要で導入できる
Covert Copyは、Wasabi Hot Cloud Storageの標準機能として利用できます。さらにWasabiは下り転送料金も無料のため、復旧テストや実際のリストア時に追加コストが発生しません。物理エアギャップではテープの搬送・読み込みのたびに時間とコストがかかりますが、Covert Copyならそのようなことはありません。
一般的なクラウドストレージでは下り転送料金が復旧テストの心理的障壁になりがちですが、費用を気にせずテストを繰り返せることは、いざという時の復旧成功率を高めるうえで重要なポイントです。
まとめ
エアギャップはランサムウェア対策における最後の砦であり、バックアップ戦略に欠かせない考え方です。しかし、テープベースの物理エアギャップは復旧速度・運用コスト・拡張性の面で、現代のビジネス要件に合わなくなりつつあります。
論理エアギャップは、イミュータビリティ・多重認証・非可視化をクラウド上で実現することで、現代の迅速な復旧要件に応える有効な手法です。WasabiのCovert Copyは、これらの要件をプラットフォームに標準搭載し、追加コスト不要で論理エアギャップ環境を構築できます。「見えないものは攻撃できない」という原則のもと、クラウド時代のバックアップ防御を強化する手段として、ぜひご検討ください。
常に変化する環境の中で、テクノロジー予算を組むのは簡単なことではありません。昨今、セキュリティコストは増加し、AIやデータ関連のプログラムは加速しています。総予算を増やさずにインフラ、運用、人員配置のすべてを拡張することが求められるうえ、取締役会、規制当局、保険会社に対して、トラブル発生時でも事業を継続できることの証明を提出する必要もあります。こうしたプレッシャーの中心にあるのが、サイバーレジリエンスです。サイバーレジリエンスとは、重大なインシデントを吸収し、統制された形で復旧させ、何が起きたかを証明するものであり、ビジネスの継続を左右する存在です。また、サイバーレジリエンスはストレージ容量のコスト、バックアップおよび災害復旧ソフトウェア、専門サービス、外部監査、保険更新など、予算の各項目にも明確に現れます。そのため、これはデータ保護の問題であると同時に、組織のコスト策定にも大きく関わっています。CIOが取締役会に予算を提示する際、単にツールへの投資を主張するだけでは不十分です。そのツールによってコストが計画通りに推移すること、組織が障害に耐え復旧できること、そしてデータが検証に耐えうることを示さなければなりません。サイバーレジリエンスが明確に組み込まれていない場合、それがビジネスの基本条件であるという認識が薄まり、単に「あれば望ましいもの」として追いやられてしまいます。こういった文脈を踏まえて、サイバーレジリエンスを運用に組み込めるよう考察してみましょう。本ブログでは、CIOが予算計画を立てる際に役立つ7つのポイントをご紹介します。各テーマは、一般的な支出分野と、それが支えるべきレジリエンスの成果を結び付けています。CIOとして方針を決定する立場にある方も、承認を得るために計画を提示するリーダーの方も、予算を策定する際にぜひご活用ください。1.サイバーレジリエンスを運用要件の中核にする今や、サイバーインシデントは絶えず発生しうるリスクとなっています。そのため、取締役会、規制当局、保険会社は、事業が障害に耐え、管理された形で復旧できることの証明を求めています。こういった状況のなか、CIOは、不変コピー、複数ユーザー承認、職務分離、テスト済みの復旧といった具体的なレジリエンス対策を提示しながら、それらが業務システムをどのように保護しているかを説明できなければなりません。こうした根拠が示されない場合、インシデントによる影響の深刻化、保険の更新ストップ、リスク管理に対する信頼の低下などに陥ります。2.予期せぬ出費を排除し、ストレージコストを安定化させるクラウドストレージ予算はかつて背景的なコストとして扱われていましたが、今やIT予算の中でも特に安定させにくい項目の一つになっています。業界のベンチマーク調査(英語)によると、クラウドストレージ費用の大部分は、容量そのものではなく、下り転送料・API利用料・データ取得料の変動に由来していることが明らかになりました。このような変動によってストレージコストが予期せず増加すると、組織は予算内に収めるためにベストプラクティスを削減せざるを得なくなり、あらゆるサイバーレジリエンス計画を損なうことになります。ストレージ料金が予測可能であれば、財務部門は予算を把握でき、CIOは意図的かつ統制された形でレジリエンスに投資することができます。3.AIによるデータ増加を見据えたストレージ計画を立てるAIや機械学習を利用すると、ストレージ容量に絶え間ない負荷がかかります。学習データ、作業用データセット、アーカイブされたモデル、ログ、推論結果は急速に増加し続け、その多くは再利用・監査・再学習のために保持する必要があります。そのため、容量計画においては、生成されるデータ量、データの保持期間、保護の方法を明確に考慮しなければなりません。AIを前提にストレージを計画すれば、期待するスピードでビジネスを進められます。そうでない場合、プロジェクトは停滞し、モデルの進化速度にAIデータのレジリエンスが追いつかなくなります。4.ストレージ効率をイノベーションと近代化の資本に変える多くのCIOは、総予算を増やすことなくAI・分析・近代化・セキュリティを改善することが求められています。これを実現するには、日々の支出を調整して余地を生み出す必要があります。これに対して、ストレージ階層の簡素化、重複システムの廃止、見えにくいコストの削減を行うことで、単なるコスト削減にとどまらず、サイバーレジリエンスを維持しながら戦略的な取り組みへ予算を割り振ることができます。このように捉えると、ストレージ効率はレジリエンス強化と将来的な変革に役立つ資本となります。これが明確でない場合、せっかく利益を捻出できても一般経費に回収され、新しい取り組みは後回しにされてしまいます。5.ハードウェアの過剰購入から、適切な規模のオンデマンド容量へ移行する数年先を見越してストレージハードウェアを購入するという手法は、変化の激しい現在の環境には適していません。ワークロードの移行、新しいサービスの立ち上げ、プラッフォーム間のデータ移動が行われると、ある場所では容量が余り、別の場所では不足する事態に陥ります。こう言った状況は、資本の無駄遣いやプロジェクト遅延につながる恐れがあります。ストレージが段階的に拡張できれば、成長に関する意思決定は緊急対応ではなく通常のガバナンスの一環として行えます。サイバーレジリエンスの観点でも、重要なワークロードの実行場所に合わせて柔軟に保護と復旧を整合させることができ、不適切な過剰保護や保護不足のリスクを低減できます。6.適切なトレーサビリティとガバナンスで監査に対応する規制当局、監査当局、顧客は今や、データを単に暗号化するだけでなく、エンドツーエンドで適切に扱われている証拠を求めています。つまり、データの来歴、保持期間、アクセス履歴、保存場所を示す必要があります。これに伴い、CIOが重視すべき点も、データの暗号化から、データの収集・処理・保存・破棄がGDPR、HIPAA、AI関連の開示要件を満たしているかどうかに移りました。このレベルの可視性が欠けている場合、セキュリティとコンプライアンスの整合性が失われ、監査の長期化やコスト増加を招くとともに、手作業で証拠を収集することになります。こういった組織は、データの完全性とともに信頼も失います。7.重要データと財務データを同等の基準で管理する昨今の取締役会や監査委員会はデータを中核的な資産と見なす傾向にあり、重要な記録、モデル、ログが改ざんや削除されないという証拠を求めるようになりました。そのためCIOは、監査に耐えうる統制を設計する必要があります。具体的な対応策としては、独立した管理で論理的にエアギャップ化されたコピー、破壊的な操作に対する複数ユーザー承認(英語)、明確な職務分離などが挙げられます。これらが欠けている場合、監査で問題が露呈し、デジタル記録への信頼が低下します。その結果、是正作業が増え、M&Aや資金調達といったプロセスも遅延し複雑化します。予算に関する議論への影響これまでに挙げたポイントは、最初から予算計画に組み込まれて初めて意味を持ちます。そのためには、ツールや容量の問題ではなく、経営陣が理解できるビジネステーマへと議論をシフトする必要があります。ストレージ、バックアップ、保護に関する予算項目を成果と明確に結び付けることで、一貫性のあるレジリエンス戦略として提示できるようになります。実際にCIOが行うのは、個々の製品の必要性を単に主張することではなく、各テーマを具体的な根拠で裏付けることです。目標は、詳細な説明がなくても財務部門や取締役会の精査に耐えうる予算案を提示することです。サイバーレジリエンスの価値を示すことができれば、大きな説得力とともに予算を獲得できるようになります。容量にかかる料金と下り転送料・API料・データ取得料を分け、クラウドストレージ支出の推移を把握することで、コスト変動の原因を明らかにする。過去1年間の支出を日常的な運用費と新規投資に分け、ストレージのコスト削減がAI、データ、システム刷新の取り組みと明確に結びついていることを可視化する。AIデータの増加に関する前提条件を整え、学習データ、モデル、ログに必要な容量や保持期間を明確にする。直近のテスト結果に基づく復旧とレジリエンスに、RTO(目標復旧時間)やRPO(目標復旧時点)、および予算投資によって改善される項目リストを含める。監査、保険会社、規制当局は、保存データの暗号化だけでなく、トレーサビリティ、完全性、管理設計を重視していることを把握する。容量と利用率の状況を見極め、明らかな過剰購入、遊休資産、新規プロジェクトの制約となる問題点を明らかにする。このように活用すれば、予算は単にストレージ容量を正当化するためのものではなく、有効なサイバーレジリエンスとガバナンスを確立し、AI対応の環境を支える存在となります。まとめ本ブログで取り上げたリストの中から、組織の課題に沿ったテーマを2~3つ選び、次回の予算協議の軸に据えてください。そして、それぞれのテーマについて対処すべきリスクと必要な投資額を把握し、それらがレジリエンスの向上とAIおよびデータイニシアチブの支援につながるという根拠を明確に示しましょう。これを継続すれば、サイバーレジリエンスは単なる背景ではなく、データの信頼性と復旧性を支える中核になります。それは、予算においては説明可能なコミットメントに、役員会においては組織が負う価値のあるリスクに、AIやデータ施策においては管理と両立してビジネスを前進させる存在になります。こうして、CIOは自信を持ってサイバーレジリエンスを重視した予算編成を支持できるようになります。...
年末は立ち止まって一年を振り返る時期です。高等教育機関のITおよびセキュリティ担当者にとって、2025年は真のセキュリティコストが浮き彫りになった年でした。この影響は予算だけでなく、チームの在り方やデータの保存場所に関するあらゆる意思決定にも及んでいます。こうした背景を踏まえ、高等教育におけるサイバーレジリエンスについて、この1年間で明らかになったことを見ていきましょう。より巧妙化し、頻繁になるサイバー攻撃2025年は大学や高等教育機関に対する攻撃が増加し、平均して、教育機関は1組織あたり毎週4,388件のサイバー攻撃を受けました。これは世界平均の2倍以上であり、前年と比べて31%増加しています(DeepStrike)。もし、大学キャンパスが常に標的にされているように感じている方がいる場合、それは気のせいではありません。ランサムウェアの主な原因は、人為的ミス(PEBKAC: Problem Exists Between Keyboard and Chair)であることは以前から変わっていません。また、主な攻撃手段としてはソーシャルエンジニアリングが挙げられます。送信者がネイティブスピーカーではないことが一目瞭然な、不自然な文章のフィッシングメールやテキストメッセージは誰もがご存じでしょう。しかし、この状態は急速に変化しています。攻撃者はAIを活用し、より洗練かつパーソナライズされた、一目で見破ることが困難なメッセージを作成するようになりました。毎日大量に届くメッセージの一つ一つを精査する時間的な余裕がない場合、これは大きな問題となります。AI以外にも、RaaS(Ransomware as a Service)といったものも存在します。これはいわばサブスクリプション型のサイバー犯罪であり、攻撃者に新たな手段を提供しながら攻撃のハードルを下げています。特に高等教育機関は標的となる要素が非常に多いため、こうした状況を深刻にとらえる必要があります。教育機関には学生の記録だけでなく、応募者の財務情報、教職員のデータ、寄付者や卒業生のリストなど、詐欺行為の温床となりうる情報が豊富に存在します。さらに、高度な研究、特に医薬品や軍事用途に関連する研究などが加われば、機密性の高い知的財産の宝庫となります。さらに、サイバー犯罪者の目的はもはや身代金だけに留まりません。政治的・社会的・学術的な理由で大学を攻撃するハクティビストも増えています。この場合、入学データ、研究プロジェクト、さらには入学選考の結果までもが標的になり得ます。高い知名度と資金力のある名門大学は特に魅力的なターゲットであり、脅威の状況は一般的なランサムウェア以上に複雑になっています。IT予算の縮小とスキル不足によるセキュリティリスクの上昇高等教育には、低コストで幅広いセキュリティを実現するというプレッシャーが存在します。EDUCAUSEによると、高等教育機関の42%が2025~2026年度にIT予算の減少を見込んでいます。同時に、大学キャンパスでは学期ごとに新しいユーザーが大量に追加され、IT職の離職率も比較的高いため、環境のパッチ適用、監視、セキュリティ維持がより難しくなっています。Dellと共同で作成したeBook「The...
ランサムウェア被害からの復旧に、1週間以上を要した組織は「約53%」。警察庁が2025年9月に公表した「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」は、復旧の長期化が多くの企業で現実に起きていることを示しています。なぜ復旧にこれほどの時間がかかるのでしょうか。本記事では、復旧が長引く原因を整理したうえで、最速で事業を再開するために見直すべきポイントを解説します。ランサムウェア被害からの復旧時間はどれくらいかかるのか国内の実態を端的に示すのが、冒頭で紹介した警察庁のレポートです。ランサムウェア被害を受けた組織のうち、復旧に1週間以上かかったケースが約53%(47件中25件)、調査・復旧費用が1,000万円以上に達したケースは約59%(39件中23件)にのぼりました。復旧期間が長引くほど費用も膨らむ傾向が示されており、企業規模によっては大きな負担となる可能性があります。参照:令和7年上半期における サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について|警察庁サイバー警察局グローバルの調査でも同様の傾向が見られます。Sophos「ランサムウェアの現状 2025年版」(17カ国・3,400名対象)によると、1週間以内に復旧できた組織は53%で、前年の35%から改善しました。しかし裏を返せば、依然として約半数の組織が1週間以上の事業停止を余儀なくされています。復旧に1カ月以上を要した組織も18%存在し、事業継続への影響は決して軽視できません。参照:ランサムウェアの現状 2025年版復旧が長期化する5つの原因復旧時間を長引かせる要因は、技術的な問題からコスト面の障壁まで多岐にわたります。自社のBCPを見直す際には、以下の5つを重点的にチェックしましょう。原因1:感染範囲の特定と封じ込めに時間を要するランサムウェアは侵入後すぐに暗号化を実行するとは限りません。ネットワーク内に数週間潜伏し、権限を拡大したうえで一斉に暗号化を仕掛けるケースも報告されています。フォレンジック調査で感染範囲を確定し、封じ込めが完了するまで本格的な復旧作業には着手できません。この初動調査のフェーズだけで数日から数週間を要することもあり、復旧の長期化に直結します。原因2:バックアップからの復元が想定どおりに進まないバックアップを取得していても、それが確実に機能するとは限りません。バックアップデータ自体がランサムウェアに暗号化されていたケースや、整合性テストを実施しておらず復元時に初めてデータ破損が判明するケースが報告されています。復旧計画の実効性テストを定期的に実施していない企業も少なくありません。このため「バックアップを取っているから安心」という思い込みが、復旧現場での混乱と時間のロスを生む原因になっています。原因3:システム再構築と安全確認に工数がかかるデータを復元できたとしても、それだけでは事業を再開できません。OSやアプリケーションのクリーンインストール、セキュリティパッチの適用、再感染防止のための安全確認など、多くの工程が必要です。これらは並行して進めにくく、システムごとに順番に実施するため、環境の規模が大きいほど復旧期間は長くなります。原因4:クラウドからの大容量データ転送がボトルネックになるクラウドストレージにバックアップを保管している企業は増えていますが、有事に数TB規模のデータをダウンロードするには相応の時間がかかります。とくに回線帯域の制約やクラウドサービス側のスループット制限がボトルネックとなり、「バックアップはあるのに手元に戻すまでに何日もかかる」という状況が生まれます。原因5:エグレス料金が迅速な復旧の判断を鈍らせる多くの大手クラウドストレージでは、データのダウンロード時にエグレス(下り転送)料金が発生します。数TBのバックアップを一括で復旧しようとすると、数十万円から数百万円規模のコストが生じるケースも珍しくありません。この追加コストが判明した段階で、社内承認の取り直しや復旧範囲の再検討が必要になり、本来なら即座に着手できるはずのデータ復旧に遅延が生じます。最速で事業を再開するためにBCP担当者が見直すべき3つのポイント上記の原因を踏まえると、復旧時間の短縮には技術面とコスト面の両方からアプローチする必要があります。BCP担当者が優先して取り組むべき3つのポイントを整理します。RTOの再設定と復旧手順の定期テストまず重要なのは、自社の業務特性に基づいた現実的なRTO(目標復旧時間)を設定し、バックアップからのリストアテストを定期的に実施することです。計画を策定しただけでは不十分で、実際にデータを復元し、システムが正常に稼働するかを検証して初めて実効性が担保されます。テストで判明した課題は手順書にフィードバックし、復旧の確実性とスピードを継続的に改善するサイクルを回しましょう。イミュータブルバックアップでデータの安全性を確保する近年のランサムウェアは、本番データだけでなくバックアップデータの在り処を探し出して暗号化する手口が増えています。この対策として有効なのが、データの変更・削除が不可能なイミュータブル(不変)ストレージへのバックアップです。オブジェクトロック機能を利用すれば、管理者アカウントが侵害されてもバックアップデータを保護できます。3-2-1ルール(3つのコピー、2種類の媒体、1つはオフサイト)と組み合わせることで、復旧の確実性を大幅に高められます。エグレス料金のないクラウドストレージで復旧コストの壁をなくす有事に数TBのバックアップを一刻も早くダウンロードしたい場面で、エグレス料金がコスト面・意思決定面の障壁になることは前述のとおりです。エグレス料金が発生しないクラウドストレージを選定すれば、コスト面での社内調整に時間を取られることなく、技術的な復旧作業に即座に着手することが可能になります。さらに、平時の復旧テストにも追加コストがかからないため、BCPの実効性を繰り返し検証しやすくなる点も見逃せません。Wasabi Hot Cloud Storageが最速の事業再開を支える理由ここまで述べてきた「復旧の速さ」と「コストの予測可能性」を両立するソリューションとして、Wasabi Hot Cloud Storageの特長を紹介します。(内部リンク)Wasabi...
