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バックアップの世代管理とは?3-2-1ルールについても解説
現代のビジネスにおいて、データは企業の生命線そのものです。顧客情報、財務データ、業務システムなど、あらゆる企業活動がデジタル化された今、データの損失は事業の存続に直結する深刻な問題となっています。特に近年は、ランサムウェア攻撃の巧妙化・大規模化に加え、人為的ミスによるデータ消失リスクも多様化・深刻化しています。
とはいえ、単純にデータのバックアップを取るだけでは十分ではありません。確実な復旧を実現するためには「世代管理」という考え方が不可欠です。この記事では、バックアップの世代管理の基本概念から、具体的なバックアップ方式、さらに鉄壁のデータ保護戦略「3-2-1ルール」までを分かりやすく解説します。
バックアップに「世代管理」が必要な理由
企業がなぜバックアップの世代管理を行うべきなのか、その根本的な理由を詳しく見ていきましょう。
世代管理の基本的な考え方
世代管理とは、特定の時点のデータを複数世代にわたって保存し、いつでも希望する時点に復元できるようにする仕組みです。これは、単一のバックアップファイルを上書き保存していく従来の方法とは根本的に異なります。
たとえば、日次バックアップを過去14日分、週次バックアップを過去4週分保持する、といった運用が一般的です。これにより「3日前の状態」「先週の金曜日の状態」「2週間前の状態」など、複数の復旧ポイントから選択できるようになります。
世代管理が不可欠な3つの理由
世代管理が必要とされる理由は、大きく分けて以下の3点です。
ランサムウェア・ウイルス対策
ランサムウェア攻撃を受けた場合、感染前の健全な状態に戻す必要があります。特に厄介なのは、気づかないうちにバックアップしたデータまですでに感染している可能性があることです。世代管理により、感染が発生する前の確実に安全な時点までさかのぼって復旧できます。
人為的ミスのカバー
ファイルの誤削除や重要なデータの上書きミスに気づくのが数日後になっても、過去のデータにさかのぼって復旧できるメリットがあります。単一世代のバックアップでは、すでにミスが反映されてしまっている可能性があり、復旧が困難になります。
柔軟なデータ復旧の実現
「昨日」ではなく「先週の火曜日」の状態に戻したい、といった特定の時点への復旧ニーズに応えられる点が、世代管理の大きな強みです。この柔軟性により、さまざまな障害や要求に対応できる強固なデータ保護体制を構築できます。
世代管理を実現する、バックアップの3つの種類
世代管理を実践するための具体的なバックアップ手法について、それぞれのメリット・デメリットとあわせて詳しく解説します。
フルバックアップ
全てのデータを丸ごとバックアップする方式です。原本データの完全なコピーを作成するため、最も信頼性の高い手法と言えます。
【メリット】
復元がシンプルで速い
単一のバックアップファイルから完全復旧が可能
他のバックアップデータに依存しない独立性
【デメリット】
時間とストレージ容量を最も消費する
大容量データの場合、実行時間が長くなる
頻繁に実行するとコストが高くなる
差分バックアップ
前回のフルバックアップからの変更・追加分のみをバックアップする方式です。基準となるフルバックアップと組み合わせて使用します。
【メリット】
フルバックアップより高速で、容量も節約できる
復元はフル+差分の2つのデータで済む
比較的シンプルな復旧手順
【デメリット】
世代を重ねるごとに差分データのサイズが肥大化する
フルバックアップの破損時に復旧不可能になる
増分バックアップ
フルバックアップか差分バックアップかを問わず、前回のバックアップからの変更・追加分のみをバックアップする方式です。ストレージを最も効率的に利用できます。
【メリット】
バックアップ時間が最も短く、日々のストレージ消費量が最も少ない
頻繁なバックアップが可能
運用コストを大幅に削減できる
【デメリット】
復元時にはフルバックアップとすべての増分データが必要になり、手順が複雑で時間がかかる
チェーン中の一つでも破損すると復元できないリスクがある
管理が複雑で運用ミスが発生しやすい

【比較表】3つのバックアップ方式のメリット・デメリット
鉄壁のデータ保護戦略「3-2-1ルール」とは?
バックアップ運用の世界的な標準となっている「3-2-1ルール」を、要素ごとに分解して分かりやすく解説します。
「3」:データのコピーを合計3つ保持する
原本(プライマリデータ)1つに加え、バックアップデータを2つ確保しておきます。これにより、一つのバックアップが破損しても、もう一つのバックアップで復旧できる冗長性を確保します。単一のバックアップに依存することのリスクを大幅に軽減できます。
「2」:2種類の異なるメディア(媒体)に保存する
バックアップデータは、内蔵ディスクと外付けHDD、NASとテープなど、異なる種類の複数の記録媒体に保存します。これにより、特定の媒体に障害が発生しても、他の媒体からデータ復旧が可能になります。
「1」:そのうち1つはオフサイト(遠隔地)に保管する
本社で火災や水害、盗難が発生してもデータを守るため、バックアップデータの1つは物理的に離れた場所に保管します。これは災害対策(DR)の観点からも非常に重要な要素です。オフサイト保管先としてはクラウドストレージが一般的です。
クラウドストレージを活用したバックアップ戦略
企業のバックアップ戦略において、クラウドストレージが優れている理由と、Wasabiクラウドストレージの特徴を解説します。
クラウドストレージの利点
クラウドストレージの最大の利点は、3-2-1ルールの「1(オフサイト保管)」を容易に実現できる点です。物理的な遠隔地への移送や保管場所の確保が不要となり、初期投資を大幅に抑えられます。
さらに、データ量の増加に応じて容量を柔軟に拡張できるスケーラビリティや、テープやHDDなどの物理媒体の管理・保守が不要になる点など、運用面でも大きなメリットがあります。
Wasabiが選ばれる理由
Wasabiのクラウドストレージが持つ特徴の1つは、バックアップデータのリストア(取り出し)時に追加料金が発生しないことです。一般的なクラウドサービスでは、データの取り出し時に高額な料金が発生することが多く、緊急時の復旧コストが予想以上に高くなる場合がありました。Wasabiではこの心配がなく、トータルコストを抑えながら安心してデータを保護できます。
また、高いパフォーマンスと信頼性により、大容量データの高速バックアップと迅速な復旧も実現します。これらは企業の業務継続性を維持するために不可欠な要素です。
さらに、Wasabiのオブジェクトロックは設定した期間、データの変更・削除を一切できなくすることでランサムウェアによるバックアップデータの暗号化や削除を完全に防ぎます。従来のバックアップ手法では、攻撃者がバックアップシステムに侵入してデータを破壊する可能性がありました。しかしWasabiのオブジェクトロックは、この脅威を根本的に排除します。
まとめ
今回は、データ保護の要となるバックアップの「世代管理」について詳しく解説しました。現代の企業にとって、データ保護には世代管理が必須であり、フル、差分、増分バックアップを理解し適切に組み合わせることが重要です。さらに、データ保護の黄金律である「3-2-1ルール」を実践することで、あらゆるリスクに対応できる強固な保護体制を構築できます。
高性能かつ低コストなWasabiのクラウドストレージを活用すれば、これらの高度なバックアップ戦略を誰でも実現できます。企業のデータを将来にわたって守り抜くためにも、今すぐバックアップ戦略の見直しを検討し、世代管理と3-2-1ルールに基づく包括的なデータ保護体制の構築に取り組みましょう。
クラウドレプリケーションとは、同一または異なるストレージ領域にデータセットのコピーを複数作成して、維持することです。このプロセスを通して、多くのIT担当者がアプリケーションのパフォーマンスおよび稼働率の向上、災害復旧に役立てています。しかし、クラウドレプリケーションサービスには予期せぬ様々な料金が発生します。ストレージ容量の追加コストよりもはるかに高額なレプリケーションコストがかかることで、ビジネス開発の妨げや総所有コスト(TCO)の大幅な増加につながる恐れもあります。レプリケーションの種類かつてのレプリケーションは、フロッピーディスクをPCに挿入し、そこにファイルをドラッグするだけのシンプルなものでした。現在では、専用のソフトウェアを使用して、あるデバイスから別のデバイスにデータをコピーすることでレプリケーションが行われます。多くの場合、セキュリティと冗長性対策として、これら2つのデバイスは異なる場所に配置されます。また、異なる地域にあるクラウドデータセンター間でデータをコピーする、クラウド間レプリケーションも増化しています。なぜレプリケーションを行うのか? データレプリケーションは、なぜ必要なのでしょうか?クラウドデータレプリケーション戦略の背景には、以下のような要因が考えられます。事業継続性、セキュリティ、災害復旧(DR)-あるリージョンから別のリージョンにデータをレプリケーションすることで、自然災害やランサムウェアなどのサイバー攻撃が発生した場合のデータ損失リスクを軽減します。コスト削減、階層間の移行-レプリケーションにより、高コストのストレージから「コールド」ストレージなどをより低コストのストレージ層にデータを移行できるようになります。(ただし、このオプションは、必ずしも経済的メリットがあるとは限りません。)パフォーマンスに関する考慮-エンタープライズリソースプランニング(ERP)などのソリューションでは、特定のデータセットに関して、高いパフォーマンスを実現するための近接性を考慮する必要があります。例えば、クラウドベースの編集などのワークロードでは、クラウドでホストされているデータへの即時アクセスが不可欠であり、ユーザーとデータ間の距離が大きな違いを生みます。データ分析とAIワークロード-分析と人工知能は、運用データベースとは切り離し、分析・AIワークロード専用に設定されたデータリポジトリ(Snowflakeレプリケーションなど)にデータを複製するのが最適です。クラウドレプリケーションのコストを理解するレプリケーションにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。ヒントとして言えるのは、複製したデータのインスタンスを保存するためのコスト以外にも料金が発生するということです。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などのハイパースケーラーでは、2つめのコピーをネットワーク経由で転送する際に、1ギガバイトあたり約2セント(または1テラバイトあたり20ドル)の料金が請求されます。また、コピーするデータの量やコピー先のリージョンによっては、転送料金が複製データ自体のストレージ料金を上回る可能性があります。それだけではありません。レプリカを作成し、そのコピーを別のリージョンの別バケットに配置するたび、1,000オブジェクトごとにAPI PUTリクエスト料金が発生します。さらに、オブジェクトとファイルサイズは同じではないことも把握する必要があります。1ギガバイトのファイルを複製したとしても、クラウドプラットフォームがそれを2メガバイトのチャンク500個に分割し、それぞれに個別のPUT料金が必要になる場合もあり、あっという間に料金がかさんでしまいます。それに加えて、ハイパースケーラーの場合、別のリージョンへのレプリケーションを有効にするためにバージョン管理をオンにする必要があります。そのため、他の費用に加えて、たとえビジネスケースや保存要件がなくてもデータの古いバージョンをすべて保存し、料金を支払うことになります。Wasabiのシンプルかつコスト効率の高いレプリケーションWasabiのレプリケーションサービスは、ハイパースケーラーよりもシンプルなうえ、コスト効率に優れています。Wasabiを使用すると、レプリケーションを簡単に行うことができます。また、料金はストレージに対してのみ発生するため、データ転送料やAPIリクエスト料が不要で、レプリケーションのためにバージョン管理をオンにする必要もありません。Wasabiのストレージリージョンを活用することで、追加費用なしで世界中にデータを保存することができます。結論クラウドレプリケーションは、ビジネスの継続性、セキュリティ、パフォーマンス、可用性に欠かせない要素です。ただし、ハイパースケーラーの場合、データ転送、APIリクエスト、バージョン管理の料金が発生するため、レプリケーションのコストが予想よりも高くなる可能性があります。Wasabiはこれに対して、データ転送料やAPIリクエスト料、バージョン管理が不要で、費用対効果が高く、一貫した価格のソリューションを提供します。...
Wasabiを活用してデジタル病理学を変革し、臨床医がアーカイブ画像に迅速にアクセスできると同時に、ストレージの複雑さとコスト削減に成功しました。英国最大級の急性期医療トラストの1つであるNHS Trust社は、Wasabiと信頼できるITパートナーであるInfratech社の協力を得て、Philips IMSデジタル病理学プラットフォームのストレージを最新化しました。Infratech社の支援により、NHS Trust社はコストのかかるオンプレミスの更新サイクルを排除し、インフラの煩わしさやデータ下り転送料金なしに、臨床医が高解像度の病理画像に容易にアクセスできる、高速なクラウドベースのアーカイブを構築しました。 Imperial College Healthcare NHS Trust社の事例の続きはこちら>>30日の無償トライアルはこちら>>...
単一のクラウドプロバイダーに統合するのは魅力的です。グローバル展開、統合されたサービス、拡張性、これらは企業に安心感を与えます。一方で、単一障害点(シングルポイントフェイラー)によって一度セキュリティが破綻してしまうと、ビジネスは大きなリスクを晒されることとなります。アプリケーション、データストレージ、バックアップを単一のクラウドプロバイダーに依存することは、企業が負う必要のないリスクを生み出す可能性があります。単一クラウドプロバイダーへの依存リスクアプリケーション、バックアップ、バックアップ ストレージについて 単一のクラウドプロバイダーだけに依存すると、次のようないくつかの危険に直面します。システム全体の脆弱性: サービス停止やクラウドプロバイダーのインフラストラクチャを標的としたサイバー攻撃が発生すると、アプリケーション、業務データ、バックアップへのアクセスが同時に失われます。これにより業務が停止し、復旧に時間がかかり、コストも発生します。選択肢の制限: 単一のクラウドプロバイダーに依存すると、柔軟性が制限されます。価格を交渉やコストを伴わず中断なしにクラウドプロバイダーを変更したりすることが困難になる可能性があります。セキュリティの弱体化: 今日のサイバー脅威は急速に進化しています。攻撃者がクラウドプロバイダーのシステムの脆弱性を発見すると、デジタルインフラ全体に侵入する可能性があります。規制上の課題: 法律上、複数の地域にまたがるデータ保存が求められることがよくあります。単一のクラウドプロバイダーだけでは、コンプライアンス要件を満たす適切な地理的範囲をカバーできない場合があります。複数のクラウドプロバイダーで戦略を強化解決策は単純です。クラウドデータを一箇所にまとめないようにすることです。複数のクラウド環境でリスクを分散させることで、データのセーフティネットを構築できます。Wasabiはまさにこのセーフティネットに適しており、既存のクラウド環境とスムーズに連携するストレージソリューションを提供しています。Wasabiが多くの企業に選ばれる理由は何でしょうか?それは、メインのバックアップストレージとしても、既存のバックアップのバックアップとしても完璧に機能するからです。S3互換のため、既にお使いの主要なバックアップアプリケーションと簡単に連携できます。また既存のアプリケーションを丸ごと置き換える必要はありません。既存のアプリケーションに追加するだけです。Wasabiの魅力は、データを移動に課金されないことです。データを取り出すための転送料も、データにアクセスするための API リクエストに対しても一切料金はかかりません。データは、いつでもどこでも好きなときに移動できます。データはあなたのものだからです。WasabiのAPIポリシーは、APIリクエストの主要な要因であるサードパーティアプリケーションとの通信にも適用されます。APIリクエストは無料で、Wasabiはお気に入りのアプリケーションと接続したストレージに進化します。当社の大規模なパートナーネットワークは、 AIを活用した分析アプリ、データ管理プラットフォームなど、あらゆるもので構成されています。そのため、データをどのように活用したいとしても、料金は一切発生しません。毎月の請求額に戸惑い、心配する必要はありません。Wasabiでは、保存したデータに対してのみ料金が発生します。隠れた料金や最低利用期間、予期せぬ追加料金は一切ありません。だからこそ、コストを抑えながらバックアップの冗長性を構築したい企業にとって、Wasabiは最適な選択肢です。もちろん、確かなセキュリティ対策がなければ、Wasabiをバックアップストレージプロバイダーと呼ぶことはできません。サイバーセキュリティは、データ活用への私たちのコミットメントに不可欠な要素です。強固なセキュリティ基盤がなければ、データを自由に活用することはできません。多層防御による保護Wasabiは、階層化されたセキュリティアプローチを採用し、サイバーレジリエンスの高いストレージを可能にします。データ暗号化、シングルサインオン(SSO)、ロールベースアクセス制御(RBAC)、多要素認証(MFA)といった業界標準のセキュリティ機能に加え、Wasabiは以下の機能を提供します。マルチユーザー認証:...