データ保護

ランサムウェアの究極の防衛線、「Covert Copy」の登場

Fri Dec 12 2025By e2f54453-97fa-4879-8ac9-37c96ab86bd0

データは今やビジネスにおける主要な通貨となっており、それゆえに攻撃者の主要な標的となっています。ランサムウェアの増加、内部脅威の深刻化、そしてコンプライアンス要件の厳格化に伴い、企業は攻撃者に決して侵害されることのない安全策を必要としています。

12月2日(火)、Wasabiは「Covert Copy(コバート コピー)」を発表しました。これはWasabi Hot Cloud Storageの特許出願中の新機能であり、ユーザーが選択したストレージバケットに対して、ロックされた不可視(隠し)コピーを作成できるようにするものです。この保護されたコピーにより、万が一ランサムウェア攻撃を受けたとしても、重要なデータは手つかずのまま確実に守られます。

エンタープライズクラスの保護を、シンプルかつ手頃な価格で

ランサムウェア攻撃の主な手口は、ビジネスに不可欠な機密データの持ち出しと、それに続くデータの暗号化や破壊です。被害を最大化し、可能な限り高額な身代金を搾取するために、バックアップデータまでもが攻撃対象となっています。

これまで、他のクラウドプロバイダーで「仮想エアギャップ」を実装するには、高度なセキュリティ知識やシステム知識に加え、複雑なツール、ポリシー、ルールの管理が必要でした。その結果、多くの顧客はリソースや時間を費やすよりも、リスクを受け入れることを選んでしまっていました。

Covert Copyは、導入の合理化、つまりシンプルにすることでその複雑さを無くします。これはWasabi Hot Cloud Storageに含まれる機能であるため、ユーザーは保護したいデータを選択し、数回クリックするだけで保護プロセスを開始できます。ストレージレベルでの高度なデータ保護のセットアップと運用がシームレスに行えるため、ユーザーは何を保護すべきかを驚くほど簡単に選択できます。

Covert Copyは新たなセキュリティレイヤーを導入し、システムやデータのバックアップ、AIデータセット、個人情報(PII)、あるいは競争優位性の源泉となる知的財産など、企業の最も重要なデータに対する完全なコントロールを提供します。

Covert Copyの5つの主要な柱

Covert Copyは、いくつかの重要な機能を念頭に置いて構築されました。各機能は、相互に連携してデータを安全に隠し、保護する多層的な防御策として機能します。

  • 不可視性(Invisible): 攻撃者は見えないものを標的にすることはできません。Covert Copyは視界から隠されており、完全なセキュリティ承認があった場合にのみ表示されます。

  • 完全なレプリカ(Perfect replica): データの「手出しできない」コピーを作成し、常に利用可能かつ復旧可能な状態を保ちます。

  • イミュータブル(Immutable): 厳重にロックされ、変更、削除、暗号化が不可能なため、コンプライアンスに対応したデータ保護を実現します。

  • アクセス不能(Inaccessible): たとえ攻撃者がネットワークに侵入したとしても、Covert Copyには手が届きません。アクセスにはマルチユーザー認証(MUA)による承認が必要です。

  • 次世代のアカウント保護: MUAによりデータとストレージアカウントの両方を保護し、単一障害点(SPOF)を排除します。

Covert Copy:真に重要なメリット

ランサムウェアの被害はより深刻化しており、復旧も困難になっています。『Cybercrime Magazine』の予測によると、ランサムウェアによる損失は2025年には570億ドルに達し、2031年には月間200億ドル以上の被害が出るとされています。

この急増の大きな要因は、攻撃者の行動の変化にあります。組織が復旧のために頼りにしているシステムそのものが標的になっているのです。Veeam社の『2025 Ransomware Trends』レポートによると、ほとんどの組織(89%)がバックアップリポジトリへの攻撃を経験しており、平均してその約3分の1が改ざんまたは削除されました。復旧の成功率も同様に影響を受けており、計画通りにサーバーの90%以上を復元できた回答者は10人に1人未満で、システムの大部分をオンラインに戻せたのは約半数に過ぎませんでした。

防御の要が標的となると、攻撃によるコストと複雑さは倍増します。規制当局は不変性(イミュータブル)の要件を厳格化しており、サイバー保険会社は契約更新の条件として「最後の砦」となるデータ保護の証明を求めるようになっています。

Covert Copyは、まさにこのギャップを埋めるために設計されました。独自のアルゴリズムやAIモデルが莫大な価値を持つ現代経済において、Covert Copyは、攻撃者が変更や削除を行うことのできない、保護された隠しバージョンの最重要データを組織に提供します。

Covert Copyを作成することで、以下のメリットが得られます。

  • セキュリティ: 顧客記録、財務データ、あるいは長年の開発投資を伴うAIモデルのような独自技術など、重要なデータを論理的にエアギャップされたイミュータブルなストレージで保護します。

  • コンプライアンス: SEC、FINRA、HIPAA、GDPRなどのデータ保護基準、および業界固有のデータ保持・保護基準を満たします。

  • 災害復旧(DR): 攻撃を受けた後でも、データが無傷であり、迅速に復元可能であることを保証します。

  • コントロール: 最も機密性の高い知的財産に対しても、きめ細かなセキュリティ、選択的なエアギャップ、およびマルチユーザーによるガバナンスを提供します。

実際の活用例

財務記録からAI企業の機械学習モデルに至るまで、Covert Copyは組織の最も価値あるデジタル資産に対して「見えない要塞」を提供します。競合他社がIP(知的財産)の盗難を懸念している間、貴社のチームはイノベーションに集中することができます。

Covert Copyの理想的な活用例には以下のようなものがあります。

バックアップデータ: rootユーザー以外のユーザーには発見できない、安全かつ不可視でイミュータブルなバックアップデータのコピーを作成します。単なるランサムウェア対策にとどまらず、Covert Copyバケット内のデータを「検索不能」かつ「アクセス不能」にすることで、ランサムウェア攻撃そのものを防ぎます。

アーカイブとコンプライアンス: 特に機密性の高いアーカイブコンテンツ(特許情報などの知的財産、PII、医療記録など)や、コンプライアンス義務の対象となるその他のデータのCovert Copyを作成します。

リカバリボールト(復旧用保管庫): アプリケーションやソフトウェアのライセンス、災害復旧計画書や連絡先リスト、環境トポロジー、および重要な機密リカバリデータを保存します。

Covert Copyは、Wasabi Hot Cloud Storage内に、最も重要なデータのクリーンで隠されたバージョンを保持するための簡単な方法を組織に提供します。ランサムウェアがより破壊的かつ高コストになる中、このような予測可能なストレージレベルの保護は、ダウンタイムを抑え、自信を持ってランサムウェアに対応する助けとなります。

次世代のデータ保護とランサムウェア対策

Covert Copyの詳細ページにアクセスして、その仕組みや実際の活用事例をご覧ください。コストや複雑さを増すことなく、防御の「最後の砦」を強化する方法をご確認いただけます。

Covert Copyの詳細
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データ保護Wasabiのイミュータブル機能はなぜ無料なのか?

クラウドのROIに関してMSPが直面する5つの厳しい現実

クラウドストレージは、あらゆる組織、特にマネージドサービスプロバイダー(MSP)がサポートするビジネスにとって基盤となる要素です。MSPとは、テクノロジー導入の最前線に立ち、常時接続のオンデマンド環境でクライアントと顧客のやり取りをサポートする役割を指します。最新のCloud Storage Indexによると、過去5年間で72%の組織がクラウドオブジェクトストレージを使用しています。今ではクラウドを単に導入するだけでなく、それに伴う説明責任も求められるようになり、より難解な課題に対応しなければなりません。また、昨今のデータ利用に合わせて構築されていないプラットフォームではクラウドストレージの請求額が予想を上回る傾向にあり、投資利益率(ROI)を検証する必要が生じています。私たちはこの状況に対応するトップクラスのMSPの現状を知るべく、Vanson Bourne社との提携により、大規模かつ複雑な環境を管理するMSPのシニアリーダーたちにインタビューを行いました。そこで得られた情報は驚くほど率直で、一貫性があり、時に困難な課題も伴うものでした。信頼性が高く、コスト効率に優れたクラウドストレージをサービスに組み込む際、MSPが直面する5つの厳しい現実を分析してみましょう。1. データ量は急増しており、その勢いは未だ衰えずデータの増加は減速していません。2024年、クラウドに保存されているデータ量は3.6ゼタバイトにのぼります。IDCは、2028年までにその量は3倍になると予測しています。AIの導入、コンプライアンス、ハイブリッドワークなど、データ増加の原因は多岐にわたります。それが何であれ、大量のデータ生成への早急な対応が求められていることに変わりはありません。インタビューを受けたMSPは、前年比15~20%のストレージ増加を行っていることがわかりました。リモートでの連携、セキュリティログ、AIモデルのトレーニングなどにビッグデータを使用する目的で、ストレージの需要が高まっています。2. 多くのMSPが依然として単一のエコシステムに留まっている多くのMSPは、単一のベンダーに依存しないアプローチを採用し、業界・インフラ・デジタル成熟度が異なるクライアントに幅広く対応しながら増大するデータ需要に対処しています。一方、各ベンダーのプラットフォームはそれぞれ目的が異なります。たとえば、AzureはMicrosoftベースのスタックを多用する企業に適しています。GCPはAI対応のワークロードと分析に秀でています。AWSは多くの場合、汎用ワークロードを強化します。ワークロードのパフォーマンス、コンプライアンス、コスト効率を両立させるには、こういったサービスを適切に組み合わせる必要があります。しかし現実には、MSPのストレージワークロードの70~75%はまだAWS上で実行されています。その理由は、AWSからの移行に高額なコストがかかるためです。データの移動、ワークロードの再調整、ベンダーの完全な切り替えを行う場合は「退出税」として下り転送料を支払う必要があります。もし、ビジネスにより適した別のプラットフォームを見つけたとしても、コストが高額になるため、クラウド移行が困難になる可能性があります。3. データアクセスおよびデータ利用の増加による予算オーバー2024年、MSPの80%がクラウドストレージ料金が予算オーバーになったと回答しています。また、この予算の半分は容量ではなく手数料に充てられたことが判明しました。データは日常的な操作で頻繁にアクセスされるため、コストが急速に増加します。85%の回答者が少なくとも月に1回バックアップデータを復元83%の回答者が少なくとも月に1回アーカイブデータにアクセスバックアップを復元、災害復旧計画のテスト実行、クライアントのアーカイブデータ取得などを行う場合、そのたびにAPI料金、下り転送料、階層移行コストが発生します。そのため、アーキテクチャを変更しない限り、クライアントのニーズに応じるためにより多くの料金を支払うことになります。4. コストを優先することでデータが無防備な状態にCloud Storage Indexでは毎年、セキュリティの重要性を強調していますが、組織の現状は異なるようです。実際に、ランサムウェア、誤削除、内部脅威に対する最も重要な安全対策の一つである不変性(オブジェクトロック)を実際に取り入れているMSPは半数以下でした。この理由は、オブジェクトロックなどのコア保護を有効にするとストレージコストが高くなるためと思われます。オブジェクトロック関連のコストオブジェクトロックを設定するためのPUTリクエスト保持設定を確認するためのGET/HEADリクエストライフサイクルポリシーが変更または拡張された場合のPOST/DELETEリクエストプレミアム機能を追加しないと最低限のセキュリティを得られない状態では、ベストプラクティスやコンプライアンスに対応できず、データの脆弱性が増すことになります。5....

本格化するハイブリッドクラウドストレージ:ITリーダーが知っておくべきポイント

企業インフラの近代化が進む中で、明確になったことが一つあります。それは、ハイブリッドクラウドストレージが単なる移行モデルではなく、戦略的に不可欠なものであるということです。Gartner®が発行したレポート“Hype Cycle™ for Storage Technologies” (2025年7月)では、ハイブリッドクラウドストレージはオンプレミス、エッジ、クラウドストレージを統合し、組織がさまざまな場所にまたがってデータを管理できるようにするものとされています。この環境を実現することで、複数の環境にわたって柔軟性、拡張性、コスト効率が向上し、シームレスなデータ移動、管理の改善、連携が促進されます。さらに、ファイル、ブロック、オブジェクトストレージのサポートや、ライフサイクル管理、同期、災害復旧のためのツールを得ることで、データのアクセス性、安全性、レジリエンスが保証されます。組織内のオンプレミス環境およびクラウド環境でストレージとインフラを最適化する方法を探している組織は、このレポートからタイムリーな洞察を得ることができます。組織のストレージ戦略を見直すのに、遅すぎることはありません。本ブログでは、その理由がわかる3つの重要なポイントをご紹介します。私たちは、クラウドストレージの近代化の取り組みにおいて、Wasabiが唯一無二かつ不可欠な要素であると考えています。1. ハイブリッド基盤として台頭するオブジェクトストレージ レポートで推奨されているオブジェクトストレージベンダーの条件は、柔軟性があり、総所有コストを削減できること、幅広い導入オプション(ソフトウェア版、パッケージ版、マネージドホスティング)とライセンスモデル(永久ライセンス、サブスクリプション)があることです。全体的に、企業は多様な環境にわたって非構造化データをより多く管理しています。オブジェクトストレージには拡張性、アクセス性、耐久性が備わっているため、大量のデータを保存し、クラウドでもオンプレミスでも標準化されたプロトコルを介してデータにアクセスすることができます。ポイント:Wasabiのクラウドは完全なオブジェクトベースでS3と互換性があり、ハイブリッド環境に最適です。昨今、ほとんどのアプリやプラットフォームはS3 APIをサポートしています。Wasabiでは、アプリおよびストレージ管理者がこれまで使っている形式を変えずにデータへ容易かつ迅速にアクセスし、長期保存するサポートを提供します。これは、データのバックアップ、メディアのアーカイブ、監視ビデオの保存などに役立ちます。2.コストの透明性を戦略的に優先ITリーダーが最も考慮すべき事項の一つとして、(特に環境間でデータを移動する場合の)予測不可能なクラウドコストが挙げられます。Gartner®は、「コスト効率も重要な推進力の一つです。DHIソリューションでは、実際の使用量に基づいて課金する消費ベースの価格設定モデルを採用することが多く、IT支出を最適化し、不要な支出を削減しています。」と述べています。ポイント:Wasabiでは、データアクセス料、下り転送料、その他のAPI料金が無料で、隠れたコストを排除します。コストの透明性が高いことは、データが頻繁に取得およびダウンロードされたり、複数の場所に複製されたりするハイブリッドアーキテクチャにとって特に重要です。Wasabiで必要な料金は使用したストレージ容量に対してのみであり、それ以上の課金は発生しません。3. 企業に必要なのは柔軟性を重視したストレージ“Hype...

OCX経由でWasabiをご利用いただけるようになりました!

2025/9/16にBBIX株式会社様・BBSakura Networks株式会社様連名にてプレスリリースが発表されましたが、クラウド型ネットワークサービスOpen Connectivity eXchange (以下、OCX)でWasabiへの閉域接続が可能となりました。通常閉域専用線サービスを利用してのWasabi接続の際には、通信キャリア提供の専用線サービスに加え、Wasabi Direct Connect (WDX)を別途ご購入いただく必要がありましたが、OCXの     XaaS Connection経由での接続の場合はWDX料金がOCXの利用料金に含まれていますので、OCXのご契約とWasabi容量のご契約のみでWasabiに閉域接続を実施いただくことが可能です。接続イメージOCX...