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クラウドアーカイブとは?仕組みと導入のメリット、選び方を解説
映像制作、医療、研究開発など、大容量データを安全に長期間保存するニーズは年々高まっています。従来のテープ保存では手間やコスト、検索性に課題がありました。そこで注目されているのが「クラウドアーカイブ」です。本記事ではクラウドアーカイブの基本的な仕組みから従来のテープ保管との違い、導入メリット、そしてコストやセキュリティに関する選定ポイントまで、わかりやすく解説します。
クラウドアーカイブとは?
クラウドアーカイブとは、クラウド環境を活用してデータを長期間保存できるストレージサービスです。
頻繁にアクセスしない「コールドデータ」や、法規制やコンプライアンスの観点から長期保管が必要な「アーカイブデータ」を対象に設計されていることから、大容量で、長期保存が求められるデータの管理などに幅広く使われています。
クラウドアーカイブとテープ(LTO)アーカイブの違い
長期保存といえば、従来は「LTOテープ」が主流でした。しかしクラウドアーカイブは運用面や利便性で大きく異なります。ここでは、主な4つの視点から比較します。
コスト(初期費用・運用費用)
テープアーカイブでは、LTOドライブやテープメディアの購入という初期投資が必要です。さらに、温湿度管理された保管庫の維持費、オフサイト保管のための輸送費、テープの入れ替えや管理を行う人件費など、目に見えにくいコストも多く発生します。加えて、テープの世代交代時には、新しいドライブへの買い替えや、データ移行作業に伴うコストがかかります。
一方、クラウドアーカイブは主に従量課金制を採用しており、初期費用を大幅に抑えることができます。ハードウェアのメンテナンスや故障対応、定期的なリプレースが不要なため、運用にかかる人的リソースを削減できます。
アクセス性・検索性
テープアーカイブの大きな課題は、データへのアクセスに時間がかかることです。必要なテープを保管場所から取り出し、ドライブにセットしてデータを読み込むまでに、数時間から数日かかることもあります。特に外部倉庫に保管している場合は、物理的な搬送時間が加わるため、緊急時の対応は困難です。
クラウドアーカイブなら、インターネットに接続できれば、いつでもどこからでもデータにアクセスできます。メタデータによる高度な検索機能も利用でき、大量のアーカイブデータから必要な情報を素早く見つけ出すことが可能です。
拡張性・柔軟性
テープアーカイブでは、データ量の増加に伴って新しいテープメディアを購入し、保管スペースを確保する必要があります。予想以上にデータが増えた場合、追加の保管庫やドライブの調達に時間がかかることも少なくありません。逆にデータ量が減少した場合は、購入したハードウェアは無駄になってしまいます。
これに対し、クラウドアーカイブは事実上無制限の拡張性を持っています。データ量の増減に応じて自動的にストレージ容量が調整されるため、急激なデータ増加にも即座に対応可能です。季節変動があるビジネスや、プロジェクトベースでデータ量が変化する企業にとって、この柔軟性は大きなメリットとなります。
セキュリティ・耐久性
テープメディアは物理的な劣化が避けられません。一般的な寿命は10~30年とされていますが、保管環境によってはそれより早く劣化することも少なくありません。また、紛失や盗難のリスク、火災や水害などの災害時には、バックアップテープも同時に失われる可能性があります。
一方、クラウドアーカイブは、エンタープライズグレードのデータセンターで厳重に管理されます。データは暗号化によって不正アクセスから保護されるうえ、複数のデータセンターにデータが自動的に複製されることで、極めて高い可用性と耐久性が実現されます。
クラウドアーカイブ導入で得られる5つのメリット
クラウドアーカイブを導入することで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、特に重要な5つのメリットについて解説します。
運用コストと管理負担を大幅に削減
クラウドアーカイブ最大のメリットは、TCO(総所有コスト)の削減です。ハードウェアの購入費用、保守費用、電力費、冷却費、床面積コストなどが不要で、テープの入れ替えや在庫管理、定期的な読み取りテストなどの作業も不要となるため、IT部門の負担を大幅に軽減できます。
災害や障害に強いBCP対策の実現
データを地理的に離れた複数のデータセンターに分散保存することで、強固なBCP対策の実現が可能です。仮に本社が地震や洪水などの災害に遭遇しても、クラウド上のデータは安全に守られます。データセンター自体も災害対策が徹底されているため、ビジネスへの影響も最小限に抑えられます。
堅牢なセキュリティによるデータの保護
クラウドアーカイブでは、高度な暗号化技術によってデータが保護されます。きめ細かなアクセス制御や改ざん防止機能により、権限を持たない人によるデータアクセスやデータの改ざんを防ぐことができます。また、アクセスログの自動記録により、誰がいつデータにアクセスしたかを追跡することも可能です。
必要な時にすぐデータを取り出せる
クラウドアーカイブでは、過去の顧客データを分析してマーケティング戦略を立案したり、過去のプロジェクトデータから知見を得たりすることが容易です。アーカイブデータをAIやビッグデータ分析ツールと連携させ、新たなビジネスチャンスを見つけるなど、自社の競争力強化にもつながります。
データ量に応じた柔軟な拡張性
クラウドアーカイブなら、将来のデータ増加を心配する必要がありません。必要に応じて自動的にストレージ容量が拡張されるため、ビジネスの成長に応じた柔軟な運用が可能です。また、M&Aや新規事業の立ち上げなど、急激なデータ増加にも即座に対応できます。

失敗しないクラウドアーカイブサービスの選び方
クラウドアーカイブサービスは多数存在しますが、選び方を間違えると、予想外のコストやトラブルが発生することがあります。ここでは、サービス選定時の重要なチェックポイントを解説します。
Egress(データ転送)料金を確認する
多くのクラウドサービスでは、データのアップロード(Ingress)は無料ですが、ダウンロード(Egress)時に料金が発生します。この「隠れコスト」を見落とすと、データを取り出すたびに高額な料金が発生し、思った以上にコストがかかる場合があります。
また、APIリクエストごとに課金されるサービスもあり、頻繁なメタデータ検索が必要な用途では大きな負担となる場合があります。サービス選定時は、ストレージ料金だけでなく、データ転送料金やAPIリクエスト料金を含めた総コストで比較検討することが重要です。
セキュリティとコンプライアンス要件を確認する
データの暗号化方式(保存時・転送時)、暗号化キーの管理方法、データセンターの物理的セキュリティレベルを確認しましょう。
ISO 27001、SOC 2、HIPAAなどの第三者認証を取得しているかも重要な判断材料です。金融業界や医療業界など、厳格な規制要件がある業界では、データの不変性機能や、データの保存場所を特定の地域に限定できる機能も必要になります。監査ログの取得機能やデータ削除証明書の発行など、コンプライアンス対応に必要な機能が揃っているかどうかも確認しましょう。
パフォーマンスと既存システムとの互換性を確認する
アーカイブデータとはいえ、必要な際にスムーズにアクセスできることは重要です。データの取り出しにかかる時間(RTO:目標復旧時間)を確認し、自社の要件に合っているか確認しましょう。
アップロード/ダウンロード速度、同時接続数の制限、現在使用しているバックアップソフトやアプリケーションとの互換性などについても確認が必要です。S3互換APIを提供するサービスを選べば、既存のツールやスクリプトをそのまま使うことができ、移行コストも最小限に抑えられます。
まとめ
クラウドアーカイブは、増え続けるデータの長期保存という課題に対する効果的なソリューションです。従来のテープアーカイブと比較して、コストの削減やアクセス性の向上、柔軟な拡張性、強固なセキュリティなど、さまざまなメリットがあります。ただし、サービス選定時には、Egress料金などの隠れコストや、セキュリティ・コンプライアンス要件、既存システムとの互換性を慎重に確認することが重要です。
Wasabiのようなクラウドアーカイブサービスなら、データを資産として活用し、ビジネスの成長を加速させることができます。自社のデータ特性や利用パターンを分析し、最適なアーカイブ戦略を構築しましょう。
クラウドアーカイブストレージ
アーカイブの解放
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映像制作現場では、大容量の動画素材やプロジェクトデータを安全かつ効率的に管理することが求められます。本記事では、制作ワークフローにおけるデータ管理の課題と解決策を整理するとともに、クラウドストレージ・オンプレミス・ハイブリッド環境を活用したデータ管理手法と、バックアップ戦略、最先端のAIソリューション活用事例を紹介します。映像制作におけるデータ管理の課題と重要性まずは、高解像度化に伴う大容量データの急増と、管理の不備がもたらす可能性があるリスクに注目しましょう。高解像度化による大容量データの増加4Kや8Kといった超高解像度映像の普及により、動画データのサイズは増加する一方です。例えば、4K映像の場合、1時間の撮影素材は約350GB、8Kでは1.4TBにも達します。編集プロジェクトファイル、レンダリング用の中間ファイル、完成データなど、制作過程で生成されるファイルも加わると、データ量は膨大なものとなるでしょう。このため、映像制作企業は、かつてないほどに多くのストレージ容量を確保する必要に迫られています。データ管理不備がもたらすリスクデータ管理の不備は、データの破損や紛失を招き、制作の効率を著しく低下させます。必要な素材を探すのに時間がかかれば、本来クリエイティブな作業に充てるべき時間が削られ、スタッフの生産性低下に直結しかねません。また、整理されていない管理方法は、プロジェクトの遅延や納期遅れを招き、最終的には企業の評判や売上にも悪影響を与えます。つまり、データ管理の不備は単なる技術的な問題ではなく、ビジネス全体に影響を及ぼす経営課題なのです。効率的なフォルダ管理とファイル整理術データ管理の基本となるのは、体系的なフォルダ構造と命名規則です。具体例を交えて解説します。プロジェクト単位のフォルダ構造設計効率的なデータ管理の第一歩は、体系的なフォルダ構造の設計です。第一階層に「(編集開始日)_(わかりやすい名称)」という形式でフォルダを作成すれば、時系列でデータを管理できます。例えば「20250912_A社製品PR動画」というフォルダの中に、「01_撮影素材」「02_編集プロジェクト」「03_音声データ」「04_グラフィック」「05_完成データ」といったサブフォルダを作成します。このフォルダ構造によって、プロジェクトに関連するすべてのデータを一元管理でき、必要なファイルへの迅速なアクセスが可能です。チーム共有を前提とした命名規則統一されたフォルダ管理ルールは、「作業時間の短縮」や「業務ストレスの軽減」につながります。特にリモートワークが増えた現在、誰が見ても理解できる命名規則は不可欠です。ファイル名には「日付_プロジェクト名_内容_バージョン」という形式を採用し、「20250912_A社PR_インタビュー素材_v02.mp4」のように統一します。これにより、作業の引き継ぎが円滑に行えるようになり、チーム全体の生産性も向上します。データ管理におけるストレージの種類と特長映像制作で利用可能なストレージには、クラウド、オンプレミス、そして両者を組み合わせたハイブリッド環境の3つのタイプがあります。クラウドストレージクラウドストレージの最大の利点は、インターネット環境さえあれば、場所や端末を問わずデータにアクセスできる点です。また、自動バックアップ機能により、作業中のファイルが継続的に保存され、万が一の際のデータ損失リスクを軽減できます。バージョン管理機能を使えば、過去の編集状態に戻すことも容易です。オンプレミスストレージオンプレミスストレージの利点は、ネットワーク接続なしでデータを取り出せることです。特に大容量の4K・8K素材を扱う際は、ネットワーク速度に依存せず、高速なデータ転送が可能なオンプレミスが有効です。編集作業中に即時アクセスが必要な素材や、機密性の高いプロジェクトデータには、セキュリティ面でも優れたオンプレミス環境が適しています。ハイブリッド環境映像制作においては、クラウドとオンプレミスのメリットを組み合わせたハイブリッド環境を構築することが最も効率的です。制作中のアクティブなデータはオンプレミスで高速処理し、完成データやアーカイブはクラウドに保管するという使い分けが効果的です。バックアップ戦略「3-2-1ルール」の実践作成したデータの損失を防ぐためには、適切なバックアップ戦略が不可欠です。ここでは世界標準のバックアップ手法である「3-2-1ルール」と、その実践方法を紹介します。3-2-1ルールの基本概念データ保護の世界標準である3-2-1ルールは、「データを3つ作成」して「2つの異なるメディアで保存」し、「1つは別の場所で保管」するという原則です。この方法により、ハードウェア障害、自然災害、ランサムウェア攻撃など、あらゆるリスクからデータを守ることができます。映像制作現場での具体的な実装方法実際の制作現場では、撮影データのバックアップ用として外付けHDDを1台、作業用として外付けSSDを1台、さらに作業後のバックアップ用として外付けHDDを2台用意する構成が現実的です。撮影直後に現場でHDDにバックアップを取り、編集室では高速SSDで作業を行い、プロジェクト完了後は別のHDDとクラウドストレージに二重でアーカイブします。こうしたワークフローを確立することで、データ損失のリスクを最小限に抑えることができます。コストと運用負荷のバランス現場では、バックアップを取得する人件費やバックアップ機器のコスト増加も考慮する必要があります。すべてのデータを同じレベルでバックアップするのではなく、重要度に応じてバックアップの頻度や保管期間を調整することが大切です。例えば、RAW素材は3-2-1ルールで厳格に管理し、中間ファイルは2つのコピーで運用するなど、柔軟な対応が求められます。Wasabi AiRによる映像制作の効率化事例映像制作におけるデータ管理の効率化では、AIを活用した最先端のソリューションも有効です。ここでは、Wasabiが提供するAI技術を活用したクラウドソリューションの活用事例を紹介します。リバプールFCの導入背景と課題世界的なサッカークラブであるリバプールFCは、試合映像の管理に大きな課題を抱えていました。具体的には、試合映像を見返し、重要なシーンを手動でマークダウンする作業に数日を要していたといいます。ソーシャルメディア向けのコンテンツ制作も、素材の検索に時間がかかり、タイムリーな発信が困難でした。Wasabi AiRがもたらした成果この状況を大きく変えたのが、Wasabi AiRの導入です。試合映像は自動的にクラウドにアップロードされ、AIが顔認識やロゴ検出を行い、自動的にタグ付けを行います。これにより、編集チームは必要なシーンを瞬時に検索できるようになりました。従来は日単位だった作業が分単位に短縮され、試合終了後わずか4時間以内にハイライト動画をソーシャルメディアに投稿できるようになりました。この迅速な対応により、ファンエンゲージメントが向上し、クラブのデジタルプレゼンスが大幅に強化されたといいます。詳細については、下記のWasabi AiRの導入事例「リバプールフットボールクラブ」をご覧ください。まとめ映像制作におけるデータ管理は、制作品質と効率性を左右する重要な要素です。適切なフォルダ構造の設計、クラウド・オンプレミス・ハイブリッド環境の使い分け、そして3-2-1ルールに基づくバックアップ戦略の実践により、データ損失リスクを最小化しながら制作ワークフローを最適化できるでしょう。Wasabi AiRのようなAI技術を活用したクラウドソリューションを導入することで、従来より作業時間を大幅に短縮でき、より多くの価値あるコンテンツを生み出せるようになります。データ管理の効率化は、クリエイティブな作業により多くの時間を割くための基盤となり、競争力のある映像制作を実現する鍵となるでしょう。...
現代のサイバー攻撃では、貴重なビジネスデータに悪意ある改ざんが行われることがよくあります。ランサムウェアは、データを暗号化、破損または削除し、復元と引き換えに身代金を要求します。サイバー犯罪者は、痕跡を消すためにログファイルを書き換えることもあります。データをイミュータブル(不変)な状態にすることは、データの変更、暗号化、削除を防ぎ、ランサムウェアなどのサイバー脅威に対する有効な防御策となります。データの不変性を実現するオブジェクトロックを活用することで、ストレージ層で一度書き込まれたデータは改ざんすることができなくなり、安全性が確保されます。これにより、攻撃者は侵害されたデータを変更または削除できなくなるため、サイバー攻撃の範囲と影響が大幅に制限されます。ただし、安全性と不変性が確保されたデータ保存のためにクラウドバックアップを利用する組織は、データ保護に多額の費用を支払っている可能性があります。多くのクラウドサービスプロバイダーでは、APIリクエストを介してオブジェクトロックを実装および管理し、ストレージコストに加えた追加料金を請求しています。これによって、コストの複雑さと予測不可能性が高まるだけでなく、組織がイミュータブル機能の導入を躊躇する原因となり、全体的なデータセキュリティの低下につながっています。セキュリティコスト大手のクラウドストレージプロバイダーは、オブジェクトロック自体には料金を請求しません。しかし、オブジェクトロックを介してイミュータブルストレージを有効化・維持するために膨大なAPI操作が必要になる場合があり、結果としてコストがかさみます。例えば、オブジェクトロックは、ロックされたオブジェクトのライフサイクル中に多数のAPI操作を実行する場合があります。これらの操作にはそれぞれ、保持設定の有効化、オブジェクトバージョンの識別、オブジェクトの不変性パラメータの確認などの独自の機能が伴います。AWSの場合、これらのAPI操作ごとに料金が発生するため、実際の請求を確認するまでオブジェクトロックの有効化にかかるコストを把握できない恐れがあります。以下の画像は、Wasabiが発行したクラウドコスト最適化についてのeBookから引用したもので、ある企業がAWSから請求された実際の月次コストを示しています。特に、オブジェクトロックの期間を設定する「WriteObjectLockRetentionInfo」のAPI操作コストが、ストレージ自体のコストのほぼ半分を占め、ストレージ以外の請求で最も高価であることがわかります。API料金は、ストレージ使用量と、特定の請求期間中の保存データへのアクセス頻度に応じて変動するため、月ごとに大きな変動が生じる可能性があります。このように高額なうえ、見通しのしにくい価格を考えると、たとえセキュリティ上のメリットがあったとしても多くの企業がオブジェクトロックの選択を諦めてしまうのも無理はありません。2025年のCloud Storage Index調査によると、99%の企業が不変性保護が有益なセキュリティツールであると認識しているにもかかわらず、実際にこの機能を活用している企業はわずか47%にとどまっています。Wasabiのイミュータブル機能が無料である理由Wasabiは、クラウドストレージに対して手数料無料のアプローチを採用しています。データの下り転送料やAPIリクエスト料が不要なため、ストレージコストは低く抑えられ、月ごとに予測可能になります。保存するデータの量さえわかっていれば、請求額もわかります。オブジェクトロックの場合、関連するAPI操作に対して追加料金を支払うことなく、クラウド内で不変性を実現することができます。多くの企業では、脅威者による改ざん、暗号化、削除から機密性の高いビジネスデータを保護する能力に依存しています。そのため、オブジェクトロックを選択することは企業のセキュリティやコンプライアンスプログラムを大きく左右するものと言えます。追加コストなしで不変性を実現することで、すべてのストレージ環境におけるデータのセキュリティと整合性が向上し、金銭的な負担を負うことなく広範な保護が確保されます。重要なデータが誤って削除されても誰も得をしません。安全で変更不可能なバックアップを維持する機能は、ランサムウェアとの戦いにおいて貴重なツールとなります。Wasabiのアプローチは、クラウドストレージ料金を大幅に削減し、クラウド費用に関する見通しを向上させる可能性を秘めています。私たちは、ハイパースケーラーによるデータセキュリティのコストがクラウドストレージ料金に与える影響を示す、不変性コスト計算ツールも作成しました。この直感的なツールは、さまざまなクラウドプロバイダー間での不変性コストを比較するほか、Wasabiを使用した場合のコストと比べることができます(ちなみに、Wasabiでの不変性コストは無料です)。ぜひお試しいただき、どれだけのコスト削減が可能かご確認ください。...
企業のDX推進において、クラウド活用は不可欠な要素となりました。しかし、ビジネスのグローバル化に伴い、データが国境を越えるクラウド環境では、各国の法規制や業界基準、いわゆる「コンプライアンス」への対応がこれまで以上に重要になっています。コンプライアンス違反は、罰金やブランドイメージの失墜など、深刻な経営リスクに直結する課題です。本記事では、クラウド利用におけるコンプライアンスの重要性や、企業が遵守すべき主要な規制、そして信頼できるクラウドサービスを選ぶためのポイントについて解説します。なぜ今、クラウドにおけるコンプライアンスが重要なのか?新型コロナの世界的流行を契機に、日本でもリモートワークが急速に普及し、場所を問わずデータにアクセスできるクラウドの利便性が、改めて注目されるようになりました。しかし、この利便性の裏側には大きなリスクが潜んでいます。企業の重要なデータや個人情報が国境を越えて保管されるようになり、それぞれの国や地域で定められたデータ保護規制への対応が求められるようになったためです。もちろん、コンプライアンスの遵守は単なる法的リスクの回避にとどまりません。適切なデータ管理とセキュリティ対策を実施することで、顧客や取引先からの信頼を獲得し、ブランド価値を向上させることができます。一方で、コンプライアンス違反による情報漏洩や不適切なデータ管理は、企業の評判を著しく損ない、ビジネスの継続性そのものを脅かす可能性があります。今やコンプライアンス対応は、企業の持続的な成長を支える重要な経営課題となっています。企業が知るべき世界の主要なコンプライアンス規制クラウドサービスを利用する企業は、自社のビジネス領域や取り扱うデータの種類、顧客の所在地などに応じて、さまざまな規制への対応が求められます。ここでは、特に重要な国内外の主要な規制について、その概要と企業が注意すべきポイントを解説します。GDPR(EU一般データ保護規則)2018年5月に施行されたGDPRは、EU域内の個人データ保護に関する統一的な規制です。この規制は適用範囲の広さが特徴で、EU域内に拠点を持たない日本企業であっても、EU市民の個人データを取り扱う場合には適用対象となります。GDPRでは、個人データの収集・処理に関する明確な法的根拠の確保、データ主体の権利(アクセス権、削除権、データポータビリティ権など)の保障、データ侵害発生時の72時間以内の監督機関への通知義務など、厳格な要件が定められています。違反した場合は巨額の制裁金が科される可能性があるため、EU市場でビジネスを展開する企業にとって、GDPRへの準拠は最優先で取り組むべき事項です。HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)1996年に制定されたHIPAAは、米国における医療情報の保護を目的とした連邦法です。保護対象健康情報(PHI)の適切な取り扱いを義務付けており、医療機関はもちろん、医療保険会社や医療情報を処理するITベンダーなど、PHIを取り扱うすべての事業者が対象となります。HIPAAでは、物理的、技術的、管理的なセーフガードの実装が求められており、データの暗号化やアクセス制御、監査ログの保持などが必須要件となっています。罰則も厳しく、意図的な違反の場合は最大で150万ドルの罰金が科される可能性があります。医療分野でクラウドサービスを活用する際は、HIPAA準拠が確認されたサービスの選択が不可欠です。CCPA/CPRA(カリフォルニア州消費者プライバシー法/プライバシー権法)2020年1月に施行されたCCPAと、2023年1月に施行されたその改正法であるCPRAは、カリフォルニア州民の個人情報保護に関する権利を定めた州法です。年間総収入2,500万ドル以上の企業や、5万人以上のカリフォルニア州民の個人情報を取り扱う企業などが対象となります。これらの法律は、消費者に自身の個人情報へのアクセス権、削除権、オプトアウト権などを保障しており、企業には透明性の高いプライバシーポリシーの策定や、消費者の権利行使への適切な対応が求められます。カリフォルニア州は世界最大級の経済規模を持つことから、米国市場でビジネスを展開する日本企業にとっても無視できない規制です。金融・政府機関の規制(FISC、FedRAMPなど)金融機関や政府機関向けのクラウドサービスでは、より厳格なセキュリティ基準への準拠が必要です。日本では、金融情報システムセンター(FISC)が策定した「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」(FISCガイドライン)が、金融機関のシステム構築・運用における事実上の標準となっています。米国では、政府機関が利用するクラウドサービスに対してFedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)認証の取得が求められます。この認証は、NISTのセキュリティ基準に基づく厳格な評価プロセスを経て付与されるもので、高い信頼性の証明です。これらの業界特有の規制への対応は、該当分野でビジネスを展開する上で欠かせない条件となっています。コンプライアンスに対応したクラウド選びの3つのポイントコンプライアンス要件を満たすクラウドサービスの選定は、企業のリスク管理において極めて重要な意思決定です。数多くのクラウドサービスが存在する中で、自社の要件に合った信頼性の高いサービスを選ぶために、以下の3つのポイントに注目しましょう。データセンターの所在地とデータ主権クラウドサービスを選択する際、最初に確認すべきはデータセンターの物理的な所在地です。データが保管される国や地域によって、適用される法規制が異なるためです。たとえば、EU域内にデータセンターを持つサービスを利用する場合、GDPRの要件を満たす必要があります。一部の国では、データローカライゼーション法により、特定の種類のデータを国外に持ち出すことが制限されている場合もあります。各国の規制要件に適切に対応するためには、データの保管場所を柔軟に選択できるクラウドサービスを選ぶことも重要です。第三者認証の取得状況(ISO 27001など)クラウドサービスプロバイダーが取得している第三者認証は、そのサービスの信頼性を客観的に評価する重要な指標です。特にISO 27001は、情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際標準規格であり、組織の情報資産が適切に保護されていることを示す包括的な管理体制の証明となります。その他にも、SOC 2(Service Organization...