ジェネラル
「能動的サイバー防御」時代が到来!企業が備えるべき対策とは?
令和7年の「サイバー対処能力強化法」および「同整備法」の成立により、日本のサイバー安全保障は新たな局面を迎えました。政府が攻撃の兆候を検知し、未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に踏み切ったことは、民間企業のセキュリティ意識にも大きな影響を与えると考えられます。
一方で、政府が「前線の盾」となったとしても、100%の防御の防御を実現することは極めて困難です。このため、企業には突破されることを前提とした、「最後の砦」の構築が求められています。本記事では、そのための具体的な方策について説明します。
能動的サイバー防御とは?法制化の背景と概要
能動的サイバー防御とは、政府が攻撃の発生前に脅威を検知・分析し、攻撃元サーバ等の無害化まで行う取り組みのことです。これまでの日本はファイアウォールやウイルス対策ソフトで攻撃を受け止める「受動的防御」が中心でしたが、サイバー脅威の急拡大がその限界を露呈させました。
NICTの観測レポートによると、2024年のサイバー攻撃関連通信数は約6,862億パケットに達し、2015年の約632億パケットから10倍以上に増加しています。
参照:NICTER観測レポート2024の公開|2025年|NICT-情報通信研究機構
こうした情勢を受けて成立したのが、「サイバー対処能力強化法」および「同整備法」です。サイバー対処能力強化法は、以下の4本柱で構成されています。
官民連携の強化
通信情報の利用
アクセス・無害化措置
組織・体制整備
政府はこれらの対策を通じて、「サイバー空間の安全かつ安定した利用、特に国や重要インフラ等の安全等を確保し、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上」させることを目指しています。
参照:サイバー安全保障に関する取組(能動的サイバー防御の実現に向けた検討など)|内閣官房ホームページ
企業に直接影響する「官民連携の強化」の中身
4本柱のうち、民間企業への影響が最も大きいのが「官民連携の強化」です。ここではその概要と、企業やサプライチェーンへの影響について説明します。
基幹インフラ事業者への新たな義務
新法の直接的な義務対象は、経済安全保障推進法で指定された電気・ガス・金融など15業種・計257者(令和7年7月末時点)の基幹インフラ事業者です。
これらの事業者には「資産届出」(特定重要電子計算機の導入時に製品名等を事業所管大臣へ届出)と「インシデント報告」(サイバーセキュリティが害された場合等の政府への報告)が新たに義務付けられました。是正命令に従わない場合は200万円以下の罰金、資料提出の求めに応じない場合は30万円以下の罰金という罰則も設けられています。
一般企業・サプライチェーンへの波及
サイバー対処能力強化法に基づく「情報共有・対策のための協議会」には電子計算機等のベンダーも構成員として参加し、守秘義務を伴う被害防止情報の共有を受けられます。さらに、重要電子計算機に用いられる機器の脆弱性が確認された場合は、その供給者(生産者・輸入者・販売者・提供者)に対して政府から措置の要請が行われます。
加えて、基幹インフラ事業者にシステムを納入するITベンダーやSIerは、脆弱性対応について政府から直接要請を受ける可能性があり、それによってサプライチェーン全体でのセキュリティの底上げが図られます。
100%の防御は不可能:カギとなる「侵入前提」の考え方
国の制度整備と官民連携によって「前線の防御」は大幅に強化されますが、高度に組織化された攻撃を完全に防ぎきることは、現実として不可能です。今、企業に求められているのは、「侵入されても事業を止めない」回復力を確保することです。
高度化する攻撃手法の現実
インターネット上の攻撃者は、乗っ取った機器(踏み台)を何段にも重ねたボットネットを構築し、身元を隠しながら攻撃を仕掛けます。2024年に判明したVolt Typhoonの事例では、中国を背景とするサイバー攻撃集団が米国の軍施設や重要インフラに侵入を繰り返していました。
参照:サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議(資料6-6)|内閣官房
国内でも、大阪急性期・総合医療センターをはじめとする医療機関へのランサムウェア攻撃、主要港である名古屋港へのランサムウェア攻撃など、生活や経済に直結する重要施設の被害が多発しています。
参照:データで紐解く、病院へのランサムウェア攻撃(2024年最新版) | トレンドマイクロ (JP)
参照:名古屋港の活動停止につながったランサムウェア攻撃~今一度考えるその影響と対策 | トレンドマイクロ
ランサムウェアをサービスとして提供するRaaS(Ransomware as a Service)の普及により、攻撃の裾野が広がっていることもあり、境界型防御(ファイアウォール、アンチウイルス)だけでは十分な対策とは言い切れない状況にあります。
「防御+回復力」がこれからの企業戦略
能動的サイバー防御で政府が担うのは国家・重要インフラレベルの脅威排除であり、企業内部のデータ保全・復旧は企業自身の責任領域です。
企業にとってネットワーク監視やEDR等の「前線の防御」は引き続き不可欠ですが、それだけでは十分とはいえません。特にランサムウェアは本番データだけでなくバックアップまで暗号化を試みるケースがあり、「バックアップがあるから安心」とは言い切れなくなっています。
BCP(事業継続計画)の観点で、「やられても必ず復旧できる」仕組みの構築が急務です。
最後の砦としてのイミュータブルバックアップ
国の新制度やネットワーク防御ツールがサイバー攻撃に対する「盾」だとすれば、イミュータブルバックアップはデータを守る「最後の砦」です。前線が突破されても、改ざん不可能なバックアップから確実にデータを復元できる体制こそが、事業継続の成否を最終的に左右します。
イミュータブルストレージとは何か
イミュータブル(不変)ストレージとは、書き込んだデータを一定期間、管理者権限を持つユーザーであっても変更・削除できない仕組みです。ランサムウェアがバックアップまで暗号化しようとしても、イミュータブル状態のデータには手が出せません。
近年のランサムウェア脅威を受けて、バックアップ戦略としてこれまで提唱されてきた「3-2-1ルール」は、「3-2-1-1-0ルール」へと発展しています。追加された「1」はイミュータブルまたはオフラインのコピーを、「0」はリストアテストによるエラーゼロの検証を意味します。この「1」と「0」こそ、バックアップ自体が攻撃される時代に復旧の確実性を担保する要素です。
クラウドストレージで実現するイミュータブルバックアップ
イミュータブルのバックアップコピーを作成するには、クラウドストレージの活用が有効です。オンプレミスのみでDR環境を構築する場合と比べて、コストと運用負荷を大幅に抑えることができます。
ただし、多くのクラウドストレージでは復旧時に下り転送料やAPIリクエスト料が発生し、いざという場面でコストが膨らむケースが少なくありません。サービスを選定する際は、機能とコストをトータルで検討することが不可欠です。
Wasabi Hot Cloud Storageは、イミュータブル機能(オブジェクトロック)を標準搭載しつつ、下り転送料・API課金ともに不要なクラウドオブジェクトストレージです。S3 API互換でVeeam、Arcserve、Synology、QNAPなど主要なバックアップソフトやNAS製品と連携でき、既存環境に追加する形で導入できます。
(内部リンク)Wasabi Hot Cloud Storage
まとめ
能動的サイバー防御の法制化は、企業にとってもセキュリティ投資を見直す大きな契機です。官民連携の強化や通信情報の利用により前線の防御は着実に強化されますが、自社データを守る「最後の砦」は企業自身が用意しなければなりません。
イミュータブルバックアップは、ランサムウェア等の攻撃でシステムが侵害された場合でもデータの復元可能性を高める有効な手段です。Wasabi Hot Cloud Storageを活用すれば、低コストかつ導入負担の少ない形で、改ざん不可能なバックアップ環境を構築できます。国の制度整備が進む今こそ、自社の「守りの最終ライン」を点検してみてはいかがでしょうか。
最新のAI対応のデータレイクは、耐久性があり、予期せぬコストが発生しないデータ基盤を構築するという、分かりやすい問題を解決するためのものでした。しかし、生成AIの登場により、データアーキテクチャはもはや単なるバックグラウンドのインフラではないことが明らかになりました。多くの場合、それが最大のボトルネックとなっています。生成AIは通常、モデル、GPU、フレームワークといった観点から語られます。しかし実際には、最初のボトルネックはもっと早い段階、つまり「データ」で発生します。トレーニング、ファインチューニング、検索、推論、継続的学習といったライフサイクルのあらゆる段階は、大量の非構造化データへの持続的かつ反復的なアクセスに依存しています。初期のアナリティクスのワークロードとは異なり、生成AIは「一度書き込んで、たまに読み取る」というパターンには従いません。データは次のように扱われます:実験やイテレーション(反復)を通じて継続的に再読み込みされる埋め込み(エンベディング)、インデックス、プロンプト、出力などの派生アーティファクト(生成物)に変換される再現性、ガバナンス、再トレーニングのために長期保存される変化の激しいコンピュート(計算)層から切り離される問題は、多くのクラウドストレージプラットフォームがこのような「再利用」を想定して設計されていないことです。Wasabiのオブジェクトストレージは、従来のクラウドの常識に逆らい、ストレージの経済性とアーキテクチャを、生成AIのワークロードの実際の動作に合わせています。新興の生成AIワークロード:ストレージへの要件生成AIのワークロードはすべて同じというわけではありませんが、「非構造化データへの反復アクセス」という共通点があります。主要なパターンと、それがストレージに何を要求するかを以下に示します。基盤モデルのトレーニング 基盤モデルのトレーニングは、テキスト、画像、音声、動画などの膨大な非構造化データセットに依存しており、トレーニングの実行や実験のたびに繰り返し読み込まれます。 ストレージの観点から見ると、これらのワークロードは以下の特徴を持ちます:読み取り集約型でスループット重視レイテンシよりもコストの予測可能性に敏感アーカイブの効率性よりも「データの再利用」に依存問題は、従来のクラウドストレージモデルでは、読み取りやデータの移動に対して課金(マネタイズ)されることが多い点です。この価格設定は、AIトレーニングに必要な反復アクセスパターンには逆効果です。 Wasabiは、アクセスベースの課金ではなく、容量ベースの価格設定を中心に構築されています。読み取りや下りデータ転送に対するペナルティ料金を排除することで、コスト変動の恐怖やアーキテクチャ上の妥協をすることなく、データを自由に再利用して実験を繰り返すことができます。ファインチューニング、アライメント、反復的なモデル開発 種類のプレッシャーをもたらします。データセットは小さくなりますが、変更頻度は高くなり、結果が再現可能で追跡可能であるようにデータを慎重に保存する必要があります。これらのワークフローには以下が必要です:データセットの不変性(イミュータビリティ)とバージョニングデータと、それが生成するモデル間の明確なリネージチーム間での並行実験階層化や手動のライフサイクル移行に大きく依存するストレージでは、ここで足かせになり始めます。Wasabiは、データを異なるストレージクラスに移動させることなく、大規模なオブジェクトの不変性とバージョニングをサポートします。データセットは安定してアクセス可能な状態を保ち、チームはガバナンスを維持したまま迅速に開発を反復できます。検索拡張生成(RAG)RAGは、生成AIがもたらした最大のアーキテクチャ的変化の1つです。 RAGパイプラインは継続的に非構造化コンテンツを取り込み、強化し、埋め込みを生成し、推論中に関連するコンテキストを検索します。ベクトルデータベースは類似性検索には優れていますが、記録システムではありません。 アクセスにペナルティを与えたり、データ移動に高額な料金を課したりするストレージモデルは、分離されたRAGアーキテクチャを必要以上に脆弱にし、コストを押し上げます。Wasabiを使用すれば、未加工データや強化されたデータを耐久性のある「信頼できる情報源」としてオブジェクトストレージに保存し、反復アクセスにかかるコストを予測可能に保つことができます。推論、フィードバックループ、継続的学習 推論はデータの増加を遅らせるどころか、加速させます。プロンプト、出力、ユーザーのやり取りは、監査、モデル評価、将来の再トレーニングのために保持される傾向にあります。時間とともに、推論データは次世代モデルの重要な入力となります。 Wasabiの容量優先の設計は、データ移行を強制したりアクセスにペナルティを与えたりすることなく、大量のデータ取り込みと長期保存をサポートします。AI対応データレイクからAI駆動型ビジネスインテリジェンスへAI対応データレイクの構築は出発点にすぎません。真の価値は、そのデータが「使いやすくなる(照会しやすく、強化しやすく、日々の意思決定を加速する答えに変換しやすくなる)」ことで現れます。 社内的には、Wasabiのビジネスインテリジェンス(BI)チームは、WasabiオブジェクトストレージとSnowflakeを組み合わせてこのパターンを適用し、セールスチーム向けに生成AIレスポンスを提供しています。未加工の資産(PDF、プレゼン資料、ログなど)はオブジェクトストレージに保存され、長期間にわたって経済的にアクセス可能な状態を維持します。一方、Snowflakeは構造化されたインテリジェンス層として機能します。なぜ生成AIは従来のストレージの常識を打ち破るのかほとんどのクラウド・オブジェクトストレージは、生成AIの世界では通用しない次のような前提に基づいて構築されていました:データは一度書き込まれ、めったに読み込まれないストレージ階層化がコスト最適化の主な方法であるストレージの経済性は、コンピュートの革新ほど重要ではないデータは単一のエコシステムに密接に結びついている生成AIは、これらの前提の限界を露呈させます。再読み込みが高額になると、運用チームはクリーンなシステムを構築するのではなく、コストを回避するためのアーキテクチャ設計を始めてしまいます。Wasabiは、以下の点を優先することでこれらの制約に逆らいます:アクセスベースの価格設定よりも、予測可能な経済性階層化の複雑さよりも、データの再利用性特定のエコシステムへのロックインを防ぐ、柔軟でポータブルなアーキテクチャバックエンドサービスではなく、戦略的インフラとしてのオブジェクトストレージ生成AI対応のオブジェクトストレージ・アーキテクチャトレーニングからRAG、推論に至るまで、共通のアーキテクチャパターンが現れます:オブジェクトストレージが耐久性のある「記録システム」として機能するコンピュート層はモジュール式で交換可能にするメタデータ、不変性、アクセス制御はストレージ層で適用される派生した生成物は使い捨てで再生成可能にするアーキテクトとプラットフォームチームにとっての意味生成AIプラットフォームを構築する場合、以下の点が不可欠となります:ストレージを後回しにせず、最優先の依存関係として扱うデータの再利用を容易かつ手頃な価格にする未加工データは「永続的」、派生アーティファクトは「使い捨て」として扱う経済性がシステム開発の反復(イテレーション)を妨げるのではなく、可能にするようにするオブジェクトストレージは、もはや単なるデータの保存場所ではありません。システムが迅速に動き、ガバナンスを維持し、コストのサプライズなしに拡張できるかどうかを決定づける重要な要素なのです。新興のAIワークロードは、常識に逆らうストレージを求めている生成AIシステムは、反復、再利用、そして洗練を重ねることで向上していきます。アクセスにペナルティを与えたり、厳格な階層化を強制したり、データをコンピュート層に密接に結びつけたりするストレージアーキテクチャは、あらゆる段階でそうした現実と相反してしまいます。従来のクラウドストレージモデルの常識に逆らうことで、Wasabiはオブジェクトストレージを、AI対応データレイクから本番環境の生成AIシステムに至るまで、新興の生成AIワークロードの実際の動作と適合させています。これにより、チームは技術的、運用的、そして経済的に長期にわたってスケールできるプラットフォームを構築できるようになります。...
多くのCISOは、データストレージをあまり重視していません。アイデンティティ管理、アクセス制御、検知、ガバナンスを同時に管理する立場では、何かしらの問題が起きない限り、背後で働くインフラにまで目が届かないのです。そのため、サイバー脅威が発生したり、最悪のタイミングでバックアップが失敗したりして初めて、ストレージに意識が向けられることになります。実のところ、レジリエンスは単にバックアップ頻度だけの問題ではありません。重要なのは、データがどれだけ適切に保護されているか、そして問題が発生した場合にどれだけ迅速に復旧できるかという点です。そのためストレージの保存先は、ファイアウォール、エンドポイント、アクセス制御と同じく非常に重要です。ストレージが不変性、アクセス性、そして手頃なコストでテストを行える状態を考慮して構築されていない場合、想像以上のリスクを負うことになります。今こそ一歩下がって、全体的なレジリエンス計画におけるストレージの役割を見直すチャンスです。以下の質問をチームに投げかけることで、重要なタイミングで組織が効果的に回復できる状態かどうかを確認することができます。1.自社のストレージは本当にビジネスリスクを下げているか?バックアップは、ただ作成するだけで評価される傾向にあります。チェックリストを満たして監査に対応することで、安心感が生み出されるためです。しかし、その安心感がレジリエンスになるわけではありません。本質的なポイントは、バックアップがどこに保存されてどのように保護され、問題が発生した際にどれだけ確実に復旧できるかということです。つまり、ストレージをリカバリ戦略の基盤として考えてみてください。あらゆるバックアップの保存先となるストレージの復元力が不十分だった場合、データ保護計画も脆弱になります。真にサイバーレジリエントなストレージは、攻撃者、内部関係者、さらには運用コストに足を引っ張られず、クリーンな復元を可能にする安全性と耐久性を兼ね備えています。まず、バックアップデータが主要な運用システムから分離されたセカンダリストレージに保存されているかどうかを確認しましょう。次に、アーキテクチャ自体を詳しく調べます。イミュータブル機能によって、データの保存期間が終了するまで変更や削除ができない状態になっていますか?AES-256などの最新標準を使用して、転送中および保存中のデータが暗号化されるようになっていますか?多要素認証(MFA)によって、アカウントへのアクセスが安全に管理されていますか?単一の認証情報でバケットやアカウントを独自に削除されないように、マルチユーザー認証(MUA)などの機能を導入していますか?こういった制御があるかどうかで、レジリエンスが迅速で検証可能なものになるか、高額な割に不確実なものになるかが分かれます。また、依然としてゴールドスタンダードとして挙げられるのが3-2-1-1-0ルールです。これは、3つのデータコピーを2種類の媒体に保存し、そのうち1つはオフサイトに、もう1つは不変の状態に保つ手法で、復旧後のエラーをゼロにすることを目的としています。ストレージがこれらの条件を満たしていない場合、ダウンタイムのリスクがあるだけではありません。この状態では単にレジリエンス戦略を夢見ているだけで、実際には何も整っていないことを意味します。2.理論的にではなく、実際にテスト可能なレジリエンスを構築しているか? すべてのストレージがレジリエンスを前提としているわけではなく、リスクの恐れがあります。データのバックアップは多くの環境で問題なくできても、「データを復元する」のは非常に困難です。いくつかの重要な機能があるかどうかで、いつでも復旧できる状態になるか、それとも時間との戦いになるかの違いが生まれます。まず土台となるのが、クラウドオブジェクトストレージです。これは耐久性、拡張性、リージョン間の冗長性を考慮して設計されており、単一の障害で全体が停止することを防ぎます。問題が発生した際に業務を安定させるバックボーンとなる存在です。続いて、基本的な要素が揃っているかどうかを確認します。イミュータブル機能:データを書き込み後、保持期間が終了するまで不変性が維持される機能です。これにより、ランサムウェアや誤削除からクリーンなコピーを保護することができます。あらゆる場所での暗号化:AES-256などの強力な最新標準によって、転送中および保存中のデータを暗号化しましょう。また、最も簡単にデータ流出を防ぐため、キーを定期的にローテーションすることも重要です。ゼロトラストアクセス:ストレージは、自社の他環境と同じ原則に従う必要があります。つまり、暗黙の信頼は置かず、誰一人としてすべてを削除できる権限を持たせないことが重要です。マルチユーザー認証では、データ損失につながりうるアクションに対して複数の承認を要求することで、これを実現します。手頃なコストの復旧テスト:高額なAPI料金や下り転送料が課せられる場合、十分な頻度でテストが行われなくなります。定期的かつ妥協せずにテストを繰り返してこそ、データの復元が可能になります。また、テストを行うことで、復旧スピード以外に2つの基本事項を確認することができます。想定するデータが本当にバックアップされているかどうか、および、そのデータは実際のインシデント発生時に回復する必要がある内容かどうかということです。以上のポイントはそれぞれ、復旧チェーンの異なる部分を守ります。すべてが組み合わさることで、データの完全性、アクセス性、復元可能性という、レジリエントな組織に不可欠な3つの要素が保証されます。3.予算内かつSLAを守りながら復旧できるか?どんなに優れた防御策であっても、決して失敗しないということはあり得ません。ポイントは、問題が発生した際の復旧速度です。これによって、ビジネスへの影響が軽度なものでおさまるか、大規模な停止に陥るかが決まります。復旧計画がきちんと文書化されている場合でも、それが実行可能かつ、十分な頻度でテストされていなければ意味がありません。まず、ストレージとバックアップシステムがフェイルオーバーをどのように処理するかを確認します。重要なアプリケーションを迅速に復元できる状態か、もしくはデータがどのクラウド層に存在するかによって復元時間が異なるかどうかを確かめましょう。また、コストについても正直に向き合う必要があります。コールドストレージは一見、お手頃で良い選択肢に思えますが、大規模な復旧時に役に立たない場合があります。高額な下り転送料が掛かったり、インシデント発生時にデータ取得するために何時間も待たされたりすると、節約したコストもすぐに消えてしまいます。続いて、アクセスやリカバリにかかる時間について、ストレージプロバイダーのサービスレベル契約が社内のRTO(目標復旧時間)と一致しているかどうかを確認しましょう。RTOは、インシデント発生後にシステムとデータをどれだけ早くオンラインに復旧できるかを示すものです。そのスピードによって、業務停止の長さ、失われる信頼や収益、そして問題に対処できたと証明するまでの時間が左右されます。次に、RPO(目標復旧ポイント)です。ここではより具体的に、最後のバックアップからどのくらい遡ってデータを復元できるかを確かめます。これは、バックアップがどのくらいの頻度で行われるかによって完全に異なります。ストレージコストが経済的かつ予測可能であれば、頻繁にバックアップをすることでデータ損失の可能性を減らすことができます。コストが原因でバックアップの間隔を長くせざるを得なくなった場合、その分リスクが増大します。最後に、テストの頻度とコストを確認します。復旧テストは少なくとも四半期ごと、ビジネスのなかで重要もしくは更新頻度が高いシステムの場合は、より頻繁に行う必要があります。下り転送料またはAPI料金が課されるストレージプロバイダーを選んでいた場合、復旧テストの頻度は次第に減っていきます。テストが行われなくなることは、その分の信頼も低下することを意味します。費用もしくは時間がかかりすぎるテスト計画は、単なる机上の空論に終わります。定期的かつ手頃な価格でテストを実施することで、サイバーレジリエンス戦略のあらゆる側面が裏付けられます。4.自社のストレージがコンプライアンスと監査の要件を満たしているか?コンプライアンスは単なる形式的なものではなく、制御が機能していることを証明する責任を担います。ストレージはこの点において、多くの人が認識しているよりも大きな役割を果たしています。まず、組織に適用される規制と内部ポリシーを確認します。HIPAA、FERPA、GDPR、SOXなどのフレームワーク、またはPCI DSS、CJIS、FedRAMPなどの業界標準は、データ保持、プライバシー、セキュリティの領域で重なり合う部分が多くあります。これは、データの保存場所、暗号化、アクセス方法など、あらゆるストレージの決定がコンプライアンスに関わることを意味します。また、新たなEU規制により、監視がさらに強化されました。サイバーレジリエンス法とEUデータ法は、サイバーセキュリティ、データガバナンス、透明性に関する新たな義務を課しています。これらは、データの保存および保護方法を示すだけでなく、レジリエンスと信頼性の基準がより広範かつ世界的に引き上げられたことを反映しています。そのため、ストレージはコンプライアンスを実際に満たす機能を備えている必要があります。以下の要件を満たすかどうか、ストレージチームと確認してください。保持と不変性:規制の対象となるデータは、保存期間全体にわたって保持され、変更または削除できない状態になっていますか?イミュータブル機能とバージョン管理を導入することで、監査が求める保証が提供されます。暗号化とキー管理:機密データは、AES-256などの強力な最新標準を使用して、転送中・保存時に暗号化されていますか?キーは定期的にローテーションされ、ストレージ資格情報とは異なるキー専用管理サービス(KMS)で管理されていますか?ゼロトラストの原則:ストレージ環境では、管理アクションに対して最小限の権限、継続的な検証、職務の分離が課されていますか?MUAなどの機能を通して、内部リスクを減らすことができます。監査への準備と可視性:監査の際、データアクセス、保持、復旧に関するエビデンスをどれだけ迅速に提示できますか?ログとメタデータは、規制当局の基準を満たしていますか?これらのポイントの中で何かしらの不明点がある場合は、そこをさらに深掘りする必要があります。暗号化、不変性、専用キー管理、透明性のある監査ログをサポートするストレージは規制要件を満たすだけでなく、セキュリティとコンプライアンス全体にわたる信頼性を強化します。まとめレジリエンスは偶然手に入るものではありません。不可避のトラブルを想定した計画・テスト・適応を通し、意図的に積み重ねてゆくものです。ストレージはレジリエンス全体において目立つ要素ではありませんが、残りの部分がどれだけ早く復旧できるかを決定づける存在です。本稿で取り上げた不変性、アクセス、テスト、コンプライアンスに関しての質問は、今後の対応が可能かどうかを確認する指針となります。こういった問いかけに答えられない部分があったとすれば、そこが着手し始めるべきポイントということです。レジリエンスはただ考えるだけでなく、検証があってこそ構築されます。復元をテストすることで、最悪の事態が発生した場合でも組織が事業を継続できるという自信につながります。...
サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化するなか、インシデント発生時のフォレンジック調査に欠かせないのがセキュリティログの長期保存です。しかし「法的に何年保存すればいいのか分からない」「保存コストが膨らんで維持しきれない」と頭を悩ませる情シス・セキュリティ担当者の方は少なくありません。本記事では、主要な法令・ガイドラインが求めるログ保存期間の基準を整理したうえで、コストを抑えながら長期保存を実現する具体的な方法を解説します。インシデント調査におけるログ保存の重要性サイバー攻撃やマルウェア感染などのセキュリティインシデントが発生した場合、被害の全容を把握するためにはフォレンジック調査が不可欠です。この調査で中心的な役割を果たすのが、ファイアウォールやIDS/IPS、認証サーバ、エンドポイントなどから収集されるセキュリティログです。ログは攻撃者の侵入経路を追跡し、影響範囲を特定するための唯一の手がかりとなります。また、インシデント後の証拠保全としても機能し、監督官庁への報告や法的対応において客観的な根拠を提示するために欠かせません。さらに、原因を正確に特定することで実効性のある再発防止策の策定が可能です。経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」でも、被害原因の特定と解析を速やかに実施するために「速やかな各種ログの保全」を含む対応体制の構築が提唱されています。参照:サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0知っておくべきログ保存期間の基準セキュリティログの保存期間は、業界や準拠すべき規制によって異なります。ここでは、情シス担当者が押さえておくべき主要な基準を整理します。PCI DSS ― 監査証跡は最低1年間保存クレジットカード業界のグローバルセキュリティ基準であるPCI DSS(Payment Card...
