ジェネラル
クラウド時代のコンプライアンス遵守、その重要性と取るべき対策
企業のDX推進において、クラウド活用は不可欠な要素となりました。しかし、ビジネスのグローバル化に伴い、データが国境を越えるクラウド環境では、各国の法規制や業界基準、いわゆる「コンプライアンス」への対応がこれまで以上に重要になっています。コンプライアンス違反は、罰金やブランドイメージの失墜など、深刻な経営リスクに直結する課題です。
本記事では、クラウド利用におけるコンプライアンスの重要性や、企業が遵守すべき主要な規制、そして信頼できるクラウドサービスを選ぶためのポイントについて解説します。
なぜ今、クラウドにおけるコンプライアンスが重要なのか?
新型コロナの世界的流行を契機に、日本でもリモートワークが急速に普及し、場所を問わずデータにアクセスできるクラウドの利便性が、改めて注目されるようになりました。
しかし、この利便性の裏側には大きなリスクが潜んでいます。企業の重要なデータや個人情報が国境を越えて保管されるようになり、それぞれの国や地域で定められたデータ保護規制への対応が求められるようになったためです。
もちろん、コンプライアンスの遵守は単なる法的リスクの回避にとどまりません。適切なデータ管理とセキュリティ対策を実施することで、顧客や取引先からの信頼を獲得し、ブランド価値を向上させることができます。一方で、コンプライアンス違反による情報漏洩や不適切なデータ管理は、企業の評判を著しく損ない、ビジネスの継続性そのものを脅かす可能性があります。
今やコンプライアンス対応は、企業の持続的な成長を支える重要な経営課題となっています。
企業が知るべき世界の主要なコンプライアンス規制
クラウドサービスを利用する企業は、自社のビジネス領域や取り扱うデータの種類、顧客の所在地などに応じて、さまざまな規制への対応が求められます。ここでは、特に重要な国内外の主要な規制について、その概要と企業が注意すべきポイントを解説します。
GDPR(EU一般データ保護規則)
2018年5月に施行されたGDPRは、EU域内の個人データ保護に関する統一的な規制です。この規制は適用範囲の広さが特徴で、EU域内に拠点を持たない日本企業であっても、EU市民の個人データを取り扱う場合には適用対象となります。
GDPRでは、個人データの収集・処理に関する明確な法的根拠の確保、データ主体の権利(アクセス権、削除権、データポータビリティ権など)の保障、データ侵害発生時の72時間以内の監督機関への通知義務など、厳格な要件が定められています。違反した場合は巨額の制裁金が科される可能性があるため、EU市場でビジネスを展開する企業にとって、GDPRへの準拠は最優先で取り組むべき事項です。
HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)
1996年に制定されたHIPAAは、米国における医療情報の保護を目的とした連邦法です。保護対象健康情報(PHI)の適切な取り扱いを義務付けており、医療機関はもちろん、医療保険会社や医療情報を処理するITベンダーなど、PHIを取り扱うすべての事業者が対象となります。
HIPAAでは、物理的、技術的、管理的なセーフガードの実装が求められており、データの暗号化やアクセス制御、監査ログの保持などが必須要件となっています。罰則も厳しく、意図的な違反の場合は最大で150万ドルの罰金が科される可能性があります。医療分野でクラウドサービスを活用する際は、HIPAA準拠が確認されたサービスの選択が不可欠です。
CCPA/CPRA(カリフォルニア州消費者プライバシー法/プライバシー権法)
2020年1月に施行されたCCPAと、2023年1月に施行されたその改正法であるCPRAは、カリフォルニア州民の個人情報保護に関する権利を定めた州法です。年間総収入2,500万ドル以上の企業や、5万人以上のカリフォルニア州民の個人情報を取り扱う企業などが対象となります。
これらの法律は、消費者に自身の個人情報へのアクセス権、削除権、オプトアウト権などを保障しており、企業には透明性の高いプライバシーポリシーの策定や、消費者の権利行使への適切な対応が求められます。カリフォルニア州は世界最大級の経済規模を持つことから、米国市場でビジネスを展開する日本企業にとっても無視できない規制です。
金融・政府機関の規制(FISC、FedRAMPなど)
金融機関や政府機関向けのクラウドサービスでは、より厳格なセキュリティ基準への準拠が必要です。日本では、金融情報システムセンター(FISC)が策定した「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」(FISCガイドライン)が、金融機関のシステム構築・運用における事実上の標準となっています。
米国では、政府機関が利用するクラウドサービスに対してFedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)認証の取得が求められます。この認証は、NISTのセキュリティ基準に基づく厳格な評価プロセスを経て付与されるもので、高い信頼性の証明です。
これらの業界特有の規制への対応は、該当分野でビジネスを展開する上で欠かせない条件となっています。

コンプライアンスに対応した
クラウド選びの3つのポイント
コンプライアンス要件を満たすクラウドサービスの選定は、企業のリスク管理において極めて重要な意思決定です。数多くのクラウドサービスが存在する中で、自社の要件に合った信頼性の高いサービスを選ぶために、以下の3つのポイントに注目しましょう。
データセンターの所在地とデータ主権
クラウドサービスを選択する際、最初に確認すべきはデータセンターの物理的な所在地です。データが保管される国や地域によって、適用される法規制が異なるためです。たとえば、EU域内にデータセンターを持つサービスを利用する場合、GDPRの要件を満たす必要があります。
一部の国では、データローカライゼーション法により、特定の種類のデータを国外に持ち出すことが制限されている場合もあります。各国の規制要件に適切に対応するためには、データの保管場所を柔軟に選択できるクラウドサービスを選ぶことも重要です。
第三者認証の取得状況(ISO 27001など)
クラウドサービスプロバイダーが取得している第三者認証は、そのサービスの信頼性を客観的に評価する重要な指標です。特にISO 27001は、情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際標準規格であり、組織の情報資産が適切に保護されていることを示す包括的な管理体制の証明となります。
その他にも、SOC 2(Service Organization Control 2)レポートやCSA STAR(Cloud Security Alliance Security Trust Assurance and Risk)認証など、クラウドサービスに特化した認証も存在します。これらの認証を取得しているプロバイダーは、定期的に外部監査を受けており、セキュリティ管理体制の継続的な改善に取り組んでいることが保証されています。
セキュリティ機能と契約内容
技術的なセキュリティ機能の充実度も、クラウドサービス選定の重要な判断基準です。データの暗号化(保存時および転送時)、多要素認証、きめ細かなアクセス制御、包括的な監査ログの記録など、基本的なセキュリティ機能が適切に実装されているかを確認する必要があります。
特に注目すべきは、データの不変性を保証する機能です。たとえば、オブジェクトロック機能を持つストレージサービスは一定期間データの変更や削除を防ぐことができ、規制で求められるデータ保持要件への対応や、ランサムウェア攻撃からの保護に有効です。また、サービスレベル契約(SLA)の内容や、セキュリティインシデント発生時の責任分担についても、契約前に十分に確認しておくことが重要です。
Wasabiが実現するグローバル水準のコンプライアンス
Wasabiのクラウドストレージは、あらゆる業界の厳格な規制要件に対応できる体制を整えており、企業による安全なクラウド活用をサポートします。
多様な規制と認証に準拠
Wasabiは、グローバル市場で求められる主要なコンプライアンス基準に幅広く対応しています。
HIPAA準拠により医療機関や医療関連企業のPHI保護要件を満たし、GDPR準拠によりEU市民の個人データ保護にも対応可能です。また、教育機関向けのFERPA(家族教育権とプライバシー法)、法執行機関向けのCJIS(刑事司法情報サービス)セキュリティポリシーにも準拠しています。
さらに、ISO/IEC 27001:2022にも準拠しており、内部データの機密性、完全性、可用性のすべてを確保しています
データの完全性を守るイミュータブルストレージ
Wasabiのオブジェクトロックは、指定した期間中のデータの変更や削除を完全に防ぎ、ランサムウェア攻撃によるデータの暗号化や削除から保護する機能です。
オブジェクトロックには、ガバナンスモードとコンプライアンスモードの2つのモードがあり、組織のポリシーに応じて柔軟に設定できます。このうちコンプライアンスモードでは、root ユーザーを含むすべてのユーザーがデータの削除や保持期間の短縮を行えなくなり、厳格なデータ保護を実現します。
予測可能な料金体系とデータ管理
Wasabiの大きな特徴の一つは、データ転送料金やAPIリクエスト料金が発生しない、シンプルで予測可能な料金体系です。
このシンプルな料金体系は、コンプライアンス対応において重要な意味を持ちます。規制要件を満たすためには、定期的な監査ログの取得やデータのバックアップ、レプリケーションなど、頻繁なデータアクセスが必要ですが、Wasabiなら、これらの作業に伴う追加コストを気にすることなく、必要なコンプライアンス対応を確実に実施できます。
また、予算管理が容易になることで、長期的なコンプライアンス戦略の立案や実行もスムーズに進められます。
まとめ
クラウドサービスの活用は、現代のビジネスにおいて競争力を維持・向上させるための必須要素となっています。一方で、グローバル化するビジネス環境において、各国・各地域の多様なコンプライアンス規制への対応は、企業にとって避けて通れない重要課題です。
データ保護規制は世界的に強化される傾向にあり、今後もこの流れは続くことが予想されます。このような環境下で、信頼できるクラウドパートナーの選定が、ビジネスの成功を左右する重要な要素となります。
Wasabiは、多様な規制への準拠、高度なセキュリティ機能、そしてシンプルで低コストな料金体系を兼ね備えたクラウドストレージソリューションです。各国の認証取得やオブジェクトロック機能によって、コンプライアンスの課題を解決し、安全なデータ活用を実現します。企業にとって、Wasabiはクラウド時代における持続的な成長を支える最適なパートナーとなるでしょう。
増え続けるデータ量と長期にわたるデータ保持要件のバランスを決められた予算内でうまく保つことは、多くの組織が直面している課題の1つです。これに対して、IT予算を圧迫せずにデータアーカイブの寿命を延ばし、年間数百万ドルを節約できる優れたソリューションが、クラウドストレージの統合です。ハイブリッド環境において、オンプレミスのネットワーク接続ストレージ(NAS)からCloud NASにアーカイブデータを移動すると、長期的にコスト効率の高いデータ管理戦略を実現できると同時に、予想外の出費を抑え、コストを最適化することができます。組織独自の要件に合わせたインフラの適応化それぞれの組織ごと、さらには同じ組織内でも異なる部門ごとに、保存されたデータの用途は大きく異なります。例えば、マーケティングチームはトレンド分析のために過去の顧客データを使用する一方で、開発者はログへの拡張アクセスを必要としており、製品チームは膨大なデータセットをもとにAIワークロードを実験しています。さらに、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPPA)、一般データ保護規則(GDPRおよびEUGDPR)、SEC規則17a-4(金融サービスの電子記録管理に関する米国証券取引委員会規則)など、様々な業界を対象とする特定のデータ保持期間とアクセス要件を義務付ける規制も存在します。 オンプレミスストレージの場合、容量の制限、コストの高さ、長期にわたる複雑なアーカイブ管理などが伴うため、これらの要件をすべて満たすのは困難です。結果として、ストレージ管理者は、複数の階層管理とデータ保持ポリシーの開発に追われることになり、ストレージインフラ自体に対処する余裕がなくなります。一方、ハイブリッドストレージモデルを使用すると、オンプレミスのインフラをクラウドベースのオブジェクトストレージで拡張することができ、以下のようなメリットにつながります。保持要件への適合データ管理の簡素化コスト削減とIT予算の合理化Wasabi Cloud NASでは、非アクティブなデータはオンプレミスのデバイスからクラウドに移行されます。これにより、アクセス頻度の低いデータ用に低コストかつ可用性の高いランディングゾーンを作成することができます。高価で高性能なNASシステムからコールドデータをオフロードすることで、保持要件を遵守する状態を保ちながら、アクティブなワークロード用のローカル容量が確保されます。長期データ保存には高価すぎるオンプレミスNAS テラバイトあたりのコストが高い-NASデバイスは、コスト効率の高いコールドストレージ向けではなく、パフォーマンスと高速アクセスを目的として設計されています。そのため、オンプレミスの容量が1テラバイト増えるごとに、大規模なハードウェア、電力、冷却、物理的なスペースの要件、メンテナンスとサポートなど、多大な費用が発生します。非アクティブなデータのパフォーマンスが無駄になる-長期(コールド)データを保存した場合、ほとんどアクセスしないにもかかわらず、頻繁な入出力と重要なワークロード用に設計された高性能ストレージのスペースを占有することになります。スケーラビリティの課題-データ量の増加は予測できません。オンプレミスNASの拡張は、手間がかかるうえにコストがかさみます。多くの場合において、新しいハードウェアが必要になり、インストール時にダウンタイムが発生するほか、構成がより複雑になります。管理費-老朽化したハードウェア、バックアップ、レプリケーション、保持ポリシーなどにまたがるデータの管理には、継続的な人件費がかかります。また、信頼できるサードパーティのクラウドプロバイダーにストレージハードウェアをオフロードする作業だけでも、ストレージ管理者が時間を費やして詳細な作業を行う必要があります。冗長性と耐久性の限界-オンプレミスのNASシステムは通常、ローカルのRAID(Redundant Array of Independent Disks)またはシステム全体のバックアップに依存しています。一方、クラウドオブジェクトストレージは、本質的に高い耐久性(99.999999999%)と、地理的に異なる地域にまたがる冗長性を提供します。ベンダーロックイン-異なるNASシステム間でデータを移動させると、労力がかかり、エラーが発生しやすく、混乱を招きます。そのためこの作業は、ほとんどの組織では、一定の投資額を超えると事実上不可能と見なされます。一方、非アクティブなデータをNASシステムからクラウドにオフロードするハイブリッドアプローチの方がはるかに持続可能です。ハイブリッドストレージで要件に対応したデータ保存を簡素化ハイブリッドストレージにはオンプレミスインフラの強みが組み合わさっており、クラウドの拡張性と経済性を兼ね備えています。このアーキテクチャを使うことで、アクティブなワークロードには既存のNASまたはファイルサーバーを引き続き使用しながら、アクセス頻度の低いデータをクラウドオブジェクトストレージに階層化することができます。これにより、ホットストレージとコールドストレージの中間に位置するデータリポジトリである「アクティブアーカイブ」が作成されます。このデータはホットストレージほど頻繁にアクセスされないため、レイテンシを最低限に抑える必要はありませんが、いつでもすぐに呼び出すことができます。オンプレミスとオブジェクトストレージ間の移行は、ポリシーベースのルールを適用したソフトウェアで管理され、ファイルの保存期間、使用パターン、種類、ビジネス固有の基準に基づいて自動的に行われます。この構成によってプライマリストレージへの負担が軽減され、手動による介入がなくても長期的なデータの保持と管理が簡素化されます。AWS、Azure、GCSなどのハイパースケーラーは、テラバイトあたりのコストが非常に低い長期ストレージ用のアーカイブ層を提供しています。ただし、これらのサービスには、高額な下り転送料、APIリクエスト料、早期削除に対するペナルティなど、隠れたコストがかかることがよくあります。こういった料金は、時間の経過とともに総所有コスト(TCO)を大幅に増加させる原因にもなります。WasabiのTCO eBookでは、元は低価格設定のサービスであったとしても、これらの追加費用によって、データを長期保存する際の予算計画が複雑になることを詳しく説明しています。「手数料なし」が収益に与える影響Wasabiは、根本的に異なるアプローチでクラウドストレージの価格およびパフォーマンスを実現し、アーカイブワークロードに最適なソリューションを提供します。従来のクラウドプロバイダーとは異なり、Wasabiでは下り転送料やAPIリクエスト料が不要です。そのため、予期せぬコストに悩まされることなくデータにアクセスし、管理することが可能になります。また、Wasabiのソリューションは高可用性と強力な耐久性を兼ね備え、特にオンプレミスで増大するデータ量を管理している現代企業のニーズに応えます。さらに、Wasabiのセキュリティもユーザーから高く評価されています。Wasabiのアーカイブデータは、イミュータブルバケット、ロールベースのアクセス制御、厳格な安全認証などによって、不正な変更やランサムウェアの脅威から保護されます。さらに、Wasabi Cloud...
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現代のサイバー攻撃では、貴重なビジネスデータに悪意ある改ざんが行われることがよくあります。ランサムウェアは、データを暗号化、破損または削除し、復元と引き換えに身代金を要求します。サイバー犯罪者は、痕跡を消すためにログファイルを書き換えることもあります。データをイミュータブル(不変)な状態にすることは、データの変更、暗号化、削除を防ぎ、ランサムウェアなどのサイバー脅威に対する有効な防御策となります。データの不変性を実現するオブジェクトロックを活用することで、ストレージ層で一度書き込まれたデータは改ざんすることができなくなり、安全性が確保されます。これにより、攻撃者は侵害されたデータを変更または削除できなくなるため、サイバー攻撃の範囲と影響が大幅に制限されます。ただし、安全性と不変性が確保されたデータ保存のためにクラウドバックアップを利用する組織は、データ保護に多額の費用を支払っている可能性があります。多くのクラウドサービスプロバイダーでは、APIリクエストを介してオブジェクトロックを実装および管理し、ストレージコストに加えた追加料金を請求しています。これによって、コストの複雑さと予測不可能性が高まるだけでなく、組織がイミュータブル機能の導入を躊躇する原因となり、全体的なデータセキュリティの低下につながっています。セキュリティコスト大手のクラウドストレージプロバイダーは、オブジェクトロック自体には料金を請求しません。しかし、オブジェクトロックを介してイミュータブルストレージを有効化・維持するために膨大なAPI操作が必要になる場合があり、結果としてコストがかさみます。例えば、オブジェクトロックは、ロックされたオブジェクトのライフサイクル中に多数のAPI操作を実行する場合があります。これらの操作にはそれぞれ、保持設定の有効化、オブジェクトバージョンの識別、オブジェクトの不変性パラメータの確認などの独自の機能が伴います。AWSの場合、これらのAPI操作ごとに料金が発生するため、実際の請求を確認するまでオブジェクトロックの有効化にかかるコストを把握できない恐れがあります。以下の画像は、Wasabiが発行したクラウドコスト最適化についてのeBookから引用したもので、ある企業がAWSから請求された実際の月次コストを示しています。特に、オブジェクトロックの期間を設定する「WriteObjectLockRetentionInfo」のAPI操作コストが、ストレージ自体のコストのほぼ半分を占め、ストレージ以外の請求で最も高価であることがわかります。API料金は、ストレージ使用量と、特定の請求期間中の保存データへのアクセス頻度に応じて変動するため、月ごとに大きな変動が生じる可能性があります。このように高額なうえ、見通しのしにくい価格を考えると、たとえセキュリティ上のメリットがあったとしても多くの企業がオブジェクトロックの選択を諦めてしまうのも無理はありません。2025年のCloud Storage Index調査によると、99%の企業が不変性保護が有益なセキュリティツールであると認識しているにもかかわらず、実際にこの機能を活用している企業はわずか47%にとどまっています。Wasabiのイミュータブル機能が無料である理由Wasabiは、クラウドストレージに対して手数料無料のアプローチを採用しています。データの下り転送料やAPIリクエスト料が不要なため、ストレージコストは低く抑えられ、月ごとに予測可能になります。保存するデータの量さえわかっていれば、請求額もわかります。オブジェクトロックの場合、関連するAPI操作に対して追加料金を支払うことなく、クラウド内で不変性を実現することができます。多くの企業では、脅威者による改ざん、暗号化、削除から機密性の高いビジネスデータを保護する能力に依存しています。そのため、オブジェクトロックを選択することは企業のセキュリティやコンプライアンスプログラムを大きく左右するものと言えます。追加コストなしで不変性を実現することで、すべてのストレージ環境におけるデータのセキュリティと整合性が向上し、金銭的な負担を負うことなく広範な保護が確保されます。重要なデータが誤って削除されても誰も得をしません。安全で変更不可能なバックアップを維持する機能は、ランサムウェアとの戦いにおいて貴重なツールとなります。Wasabiのアプローチは、クラウドストレージ料金を大幅に削減し、クラウド費用に関する見通しを向上させる可能性を秘めています。私たちは、ハイパースケーラーによるデータセキュリティのコストがクラウドストレージ料金に与える影響を示す、不変性コスト計算ツールも作成しました。この直感的なツールは、さまざまなクラウドプロバイダー間での不変性コストを比較するほか、Wasabiを使用した場合のコストと比べることができます(ちなみに、Wasabiでの不変性コストは無料です)。ぜひお試しいただき、どれだけのコスト削減が可能かご確認ください。...