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ビジネスデータの保存に適したデジタルアーカイブとは?
デジタル化が進む現代のビジネス環境において、データは最も重要な資産の一つです。企業が日々生成・収集するデータ量は爆発的に増加しており、こうした膨大なデータを安全に長期保存し、必要なときに迅速に取り出せるデジタルアーカイブの重要性が高まっています。
一方で、デジタルアーカイブに利用するストレージソリューションの選択は、企業にとって悩みの種です。この記事では、ビジネスにおけるデジタルアーカイブ向けの主要なストレージソリューションを比較しながら、最適な選択肢を選ぶヒントをお伝えしていきます。
デジタルアーカイブに求められる要件
ビジネスデータの長期保存を目的とするデジタルアーカイブには、いくつかの重要な要件があります。まずは、企業が貴重なデータ資産を安全に管理し、活用するために必要とされる、それらの要件についてまとめてみましょう。
データの永続性と安全性
ビジネスデータをアーカイブする最大の目的は、長期間にわたってデータを確実に保存することです。例えば、会計記録は法令遵守のために最低7年間、重要な知的財産や契約書類は数十年にわたって保持する必要があります。このような長期保存においてはメディアの耐久性が重要であり、物理的な劣化や障害に対する耐性が求められます。
また、単一障害点(SPOF)をなくすためのバックアップと冗長性も必要です。データの複数コピーを地理的に分散して保管することで、自然災害やハードウェア故障などのリスクを軽減できます。加えて、データ形式の陳腐化に対応するためのフォーマット変換や定期的な整合性チェックなど、長期的なデータ管理戦略も欠かせません。
アクセシビリティと検索効率
データを安全に保存するだけでなく、必要なときに迅速にアクセスできることも重要です。例えば、監査への対応や過去の案件調査、ビジネス分析などの場面では、古いデータへの素早いアクセスが求められます。特に法的な要求に応じる場合などは、検索の遅延が企業にとって大きなリスクとなることもあります。
効率的な検索機能も不可欠です。メタデータやタグ付け、全文検索などの機能により、大量のデータの中から必要な情報を素早く見つけ出せるようにする必要があります。さらに、ビジネスの成長に伴って増加するユーザー数に対応するため、複数ユーザーによる同時アクセスをサポートし、アクセス権限を適切に管理することも求められます。
現在主流のアーカイブソリューション比較
企業のデジタルアーカイブに使用されるストレージソリューションには様々な選択肢があり、ビジネスの規模やニーズに応じて最適な選択が異なります。ここでは、多くの企業に利用されている4つのアーカイブソリューションを比較します。
テープ媒体
LTOをはじめとするテープストレージは、これまで非常に多くの企業で利用されてきたアーカイブソリューションです。テープメディアは利用しないときには電力を消費せず、HDDと比較して障害率も低く、GB単価が比較的安価であることから人気があります。
一方で、データへのアクセスに時間がかかることや、メディアの世代交代が早く互換性に課題があること、シングルタスクのため複数ユーザーが同時利用できない非効率さなどが課題です。
メリット
電力消費が少ない
GB単価が比較的安価(特に大容量データの場合)
物理的に分離保管できるため、サイバー攻撃に強い
デメリット
データへのアクセスに時間がかかる(オフラインストレージ)
世代交代が早く、古い世代のテープは読み取り困難になる(通常2世代まで保証)
シングルタスクのため、複数ユーザーが同時に利用できない
オプティカル媒体
Blu-rayやDVD、XDCAMなどの光学媒体は、モバイルストレージとしても活用可能な汎用性の高いメディアです。理論上は100年以上の寿命があることと、比較的長い後方互換性を持つ点がメリットとされています。
一方、時代の移り変わりに合わせて再生用の機材がEOL(End of Life)になりつつあり、将来的にはデータの読み取りができなくなるリスクが懸念されています。加えて媒体の容量が比較的小さいことから、大量データの保存には多数のディスクが必要となり、管理が煩雑になること、また検索性が低いことも大きな課題です。
メリット
メディアの汎用性が高い
比較的長い後方互換性(特にBlu-ray)
理論上は100年以上の寿命
デメリット
再生機器のEOL(End of Life)により、メディアを読み取れなくなる
大量データの保存には多数のディスクが必要
検索性が低く、目的のデータを見つけるのに時間がかかる
小型NAS
小型NASはデータ量が数百TB程度の中小企業などを中心に、手軽なオンラインストレージとして活用されています。データが常にオンラインで複数ユーザーが同時にアクセス可能なため、データ検索が容易で業務効率が高いのが特徴です。大型NASと比較して、低コストで導入できる点もメリットです。
一方、大型NASと比較すると障害発生率が高く、リカバリー作業に時間がかかることが課題として挙げられます。またデータの増加に伴い複数台の導入が必要になるケースがあることと、保守期間の終了ごとに機器のリプレイスとデータの移行が必要となります。
メリット
データが常にオンラインで、迅速なアクセスが可能
複数ユーザーが同時にアクセス可能
大型NASよりも低コストで導入可能
デメリット
大型NASと比べて障害発生率が高め
リカバリー作業に時間がかかる
数年おきにリプレイスとデータ移行が必要
クラウドストレージ
クラウドストレージは、近年急速に普及しているアーカイブソリューションです。物理的なインフラ管理が不要で、容量を必要に応じて拡張でき、場所を問わずアクセスできる点で人気を集めています。加えて、保守やバージョンアップの心配がなく、データの共有も容易です。
一方で運用に伴うコスト予測が困難で、サービスによってはアクセスやダウンロードごとに課金されるなど、想定以上に高額になるケースがあります。また運用にはインターネット接続が必要となることから、セキュリティ面のリスクを指摘する声もあります。加えて、他のベンダー(サービス提供者)に移行しにくくなるベンダーロックインが発生しがちな点も、リスクの一つです.
メリット
物理的なインフラ管理が不要
理論上は無制限に容量拡張可能
場所を問わずアクセス可能
高度な冗長性とバックアップ機能
デメリット
コストの予測が困難
インターネット接続に依存
データ主権やコンプライアンスに関する懸念
ベンダーロックインのリスク
デジタルアーカイブをクラウド移行するポイント
近年ではクラウド技術の進歩に伴い、多くの企業がデジタルアーカイブをクラウドストレージへと移行しています。しかし、クラウド移行を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。
データ移行計画の策定
データの規模と優先順位を明確にする
段階的な移行タイムラインを設計する
移行中のビジネス継続性を確保する方法を検討する
コスト構造の理解
アクセス料金やダウンロード料金(下り転送料金)の有無や仕組みを把握する
月間の使用量予測とそれに伴うコスト見積もりを行う
長期保存におけるトータルコストを試算する
セキュリティとコンプライアンスの確保
保存データの暗号化レベルを確認する
アクセス権限の管理と監査機能を検証する
業界固有の規制要件への対応状況を確認する
アクセスと検索のワークフロー最適化
日常業務におけるデータ検索・取得のプロセスを設計する
既存システムとの連携方法を検討する
大量データの検索効率と速度を評価する
初期データ移行の実行計画
大規模データの初期アップロードに必要な帯域とリソースを確保する
データ整合性の検証プロセスを確立する
移行後のデータ検証と旧システムからの切り替え計画を立てる
これらのポイントを事前に十分検討することで、デジタルアーカイブのクラウド移行をスムーズに進め、長期的に効果的なデータ管理体制を構築することができます。
まとめ
ビジネスデータのデジタルアーカイブにおいては、データの永続性と安全性、アクセシビリティと検索効率のバランスが重要です。この点でクラウドストレージのメリットは注目に値しますが、クラウド移行を検討する際は、この記事で紹介したポイントをしっかりと吟味しましょう。
WasabiのクラウドストレージはAPI利用料金も下り転送料金も不要で、コスト面の心配がありません。また、パフォーマンスの高さや強固なセキュリティも多くの企業に選ばれている理由の一つです。理想的なデジタルアーカイブソリューションとして、ぜひWasabiの利用をご検討ください。
新年に向けた予測が行われる中、データ管理において確実に言えるのは、非構造化データが増加し続けているということです。IDC StorageSphereの予測によると、保存されているデータ全体の78%は非構造化データです。また、非構造化データは、2024年の5.5ゼタバイトから2028年までに10.5ゼタバイトに増加すると予測されており、年平均成長率は16%となる見込みです。この急増を後押ししているのがデジタルトランスフォーメーションです。非構造化データには、ビデオ監視、医療用画像、モノのインターネット(IoT)のセンサーデータ、そして現在ではAIおよびMLモデルとその学習に用いられる膨大なデータセットなどが含まれます。この計り知れない成長のプラス面は、すべてのデータに潜在的な価値が秘められており、ビジネス上の洞察、運用効率、革新的な新しいソリューションや発見につながりうるということです。しかし、すべての洞察を引き出し、データ主導の世界で競争力を維持するためには、高度なインフラとAI分析ツールに投資する必要があります。また、指数関数的に増加するデータ量を効果的に保持、管理、保護する方法を見つけることも忘れてはいけません。ご安心ください。Wasabiには、すべてのデータを手頃な価格で保存しながら、将来に投資するための資金を確保できるアイデアがあります。今期の予算で、今後何年にもわたって必要となるストレージ容量を確保多くの組織における予算モデルは、「使わなければ無駄になる」という方針に基づいています。1年間に割り当てられた資金が使用されなかった場合、それが翌年に繰り越されることはありません。期末になっても予算が使い切れないという方は、Wasabiの容量予約制ストレージをぜひご検討ください。1年・3年・5年単位で事前に容量を購入することで、さらにコストを節約することが可能です。クラウド容量を今後5年後まで安全に確保しておけば、将来のストレージ予算を、AIを含む他の戦略に適用することができます。クラウドストレージの容量をどう活用すればよいか分からない方に向けて、代表的なクラウドオブジェクトストレージであるWasabi Hot Cloud Storageの使用例をいくつか見てみましょう。サイバーレジリエンスのためのバックアップとリカバリ今では、IT業界のほぼすべての人が、クラウドオブジェクトストレージがバックアップや災害復旧に有効であることを認識しています。クラウドストレージは、安全で耐久性があり、コスト効率が高く、事実上無制限のストレージ容量を提供します。また、冗長性と自動レプリケーションが複数のデータセンターで共有されており、高い可用性と高レベルの保護が保証されます。最も重要なのは、オフサイトで使用することができ、データ保護やビジネス回復の絶対的な基準ともいえる3-2-1バックアップ戦略に準拠しやすいことです。Wasabi Hot Cloud Storageが、貴重で機密性の高いデータ保護に最適であるポイントはまだあります。Wasabiは非常にサイバー耐性の高いストレージであり、データとストレージアカウントを、悪意のある行為者、自然災害、人為的ミスから保護する多層セキュリティを備えています。また、Wasabiは下り転送料やAPIリクエストが無料です。そのため、予期せぬ追加料金を請求されることなく、バックアップを何度でもテストしたり、インシデント発生時にデータを復元したりすることが可能です。災害復旧や低レイテンシのワークロードに向けたデータレプリケーションバケットまたはオブジェクトのレプリケーション機能を使用すると、同一または異なるストレージ領域にデータのコピーを複数作成することができます。データをさまざまな場所に複製することで、停電や天災などの地域災害が発生した場合でも、データを確実に復旧させ、アクセスすることが可能になります。また、リージョン間でデータを複製することで、低レイテンシの環境でもアクセスが高速化されます。Wasabiのオブジェクトレプリケーション機能によって、データがシンプルかつコスト効率よく複製され、よりパフォーマンスが高く回復力のあるインフラが実現します。クラウド階層化とアクティブアーカイブでストレージのROIを向上使用頻度の低いデータは、オンプレミスのサーバーから安価なクラウドオブジェクトストレージに階層化することで、ストレージの総コスト削減につながります。クラウドを階層化することで、オンプレミスの容量を重要なプライマリデータ用に確保し、コストのかかるアップグレードをしなくてもいい状態を保ちます。大抵の大手企業は、複数のサービス層に加えて、データを適切なサービス層へ自動的に移動する階層化サービスを提供しています。この場合、アクセス頻度の低いデータはウォームストレージ層に移動し、コールドデータは安価でパフォーマンスの低いアーカイブサービス層に移動します。しかし、コールドデータが急に必要になる場合があります。たとえば、医師が2年前の患者の記録を確認する、監視システムの古い映像を取り出す、クライアントのメディアプロジェクトが突然必要になるなどの場合などです。コールドストレージに保管されたコンテンツやデータが急に必要になることが実際にあるとして、IT部門は、どのデータがいつ必要になるかをどのように把握すればよいのでしょうか。 アクティブアーカイブで問題を解決アクティブアーカイブは、ビジネス上またはコンプライアンス上の理由で保管しておく必要があるが、時々アクセスする可能性もあるデータの保存に適しています。高性能なクラウドストレージ層にはアクセス性も備わっていますが、大手企業では少々割高になる傾向があります。一方、Wasabi Hot Cloud...
データは現代企業の生命線です。過去10年を振り返るだけでも、企業が扱うデータ量は指数関数的に増加し続け、その勢いは今後も衰える気配がありません。こうした状況の中、多くの企業がバックアップやアーカイブのためにLTO(Linear Tape-Open)テープを利用してきました。この記事ではLTOテープによるバックアップ・復旧の実態について紹介するとともに、多くの企業が直面しているデータ保護の課題と、クラウドストレージなどの代替ソリューションがもたらす可能性について説明します。LTOは本当に安全なバックアップ先か?LTOテープは長らく「コスト効率が良く、長期保存に適している」と言われてきました。しかし、デジタルトランスフォーメーションが加速する現代のビジネス環境において、テープベースのバックアップ戦略には見過ごせない課題が浮き彫りになっています。その最も重大な問題の一つが「データ復旧の不確実性」です。バックアップの本質的な目的は、必要なときに確実にデータを取り戻せることにあります。しかし現実には、LTOテープからのデータ復旧は想像以上に複雑で、時に不可能なケースすら存在するのです。たとえばIT部門の担当者であれば、こんな経験はないでしょうか?緊急時にテープを取り出したものの、読み取りエラーで復旧できない古いバージョンのLTOテープを読み込むため、中古の旧型ドライブを探し回った定期的なテープのチェックや管理のために、貴重な人的リソースを割いている実際、テープベースのバックアップからの復旧時に問題が発生するケースは珍しくありませんが、こうした失敗は単なる不便さにとどまらず、ビジネス継続性を脅かす重大なリスク要因となっています。よくあるLTOの復旧トラブルとその原因LTOテープによるバックアップは多くの企業で採用されていますが、いざデータを復旧しようとした際に様々なトラブルに見舞われることがあります。これらの問題は単なる一時的な不具合ではなく、多くが構造的な課題に起因するものです。保管環境に起因するトラブルLTOテープは本質的に物理メディアであり、適切な環境で保管されないと経年劣化が避けられません。具体的には、以下のような問題が起こりがちです。温湿度による劣化テープメディアを使用・保存する際は温度や湿度に注意が必要です。たとえばLTO-9の場合、温度は15〜25℃、相対湿度は20〜50%が推奨環境で、この条件を外れるとテープの伸縮や素材の劣化が促進され、カビが発生することもあります。物理的損傷保管中の衝撃や圧力による変形、落下によるケースの破損など、物理的な損傷もデータ喪失の原因となります。特に、段ボール箱に雑然と詰め込まれたテープは物理的ストレスにさらされやすく、破損のリスクが高くなってしまいます。磁気干渉強い磁場の近くに保管された場合、テープに記録されたデータが破損する恐れがあります。オフィス環境では気づかないうちに磁気を発する機器の近くにテープが置かれていることもあり、長期保存における潜在的なリスク要因となっています。現実のオフィス環境や倉庫で、常に理想的な保管状態を維持することは容易ではありません。多くの企業にとって、こうした問題は長期保存時のリスク要因となるでしょう。LTOの世代に起因するトラブルテクノロジーの急速な進化はIT業界の宿命ですが、LTOテープにおいては特にこの問題が顕著です。世代間の互換性制限LTOは約3年ごとに新世代が登場しますが、互換性があるのは基本的に1世代前(LTO-7以前は2世代前)までです。たとえばLTO-9ドライブはLTO-8テープを読み込めますが、LTO-7以前の世代は読み込めません。多くの企業が10年以上のデータ保持を必要とする現状では、この限定的な互換性は重大な問題です。旧型ドライブの入手困難古い世代のテープを読み込むには対応するドライブが必要ですが、製造中止となった世代のドライブの入手は非常に困難です。たとえ中古市場で見つかったとしても、保証なしの状態であったり、高額な費用が発生したりします。ドライバーやソフトウェアの互換性古いドライブは新しいOSやサーバーとの互換性が保証されないため、接続しても認識されなかったり、バックアップソフトウェアが対応していなかったりする問題が発生します。LTOの仕様上、世代を超えたデータアクセスには制限があります。これは長期アーカイブを目的とする企業にとって重大な検討事項となるでしょう。LTOの運用・データ復旧にかかるコストLTOテープを使用したバックアップシステムは、初期費用や媒体コストが比較的安価であることから多くの企業に採用されてきました。しかし、システム全体の運用や実際のデータ復旧までを考慮すると想定以上のコストが発生することがあります。ハードウェアの定期的更新LTO技術は約3年ごとに新世代が登場します。長期的な運用を続けるためには、テープドライブやライブラリ装置の定期的な更新が必要となり、その度に大きな設備投資が発生します。保守・サポート契約テープライブラリやドライブには年間保守契約が必要です。特にミッションクリティカルな環境では、24時間365日のサポート契約が必要となり、初期投資に加えて毎年の継続的なコストが発生します。メディア管理の物理的コストテープカートリッジの適切な保管には、温度・湿度を管理した専用の保管環境が望ましいとされています。これらの環境維持コスト、保管棚や保管庫の費用も運用コストの一部です。管理ソフトウェアのライセンスとアップデートテープライブラリを効率的に管理するためのソフトウェアライセンス費用やアップデート費用も継続的に発生します。世代交代時のデータ移行コスト新しい世代のテープシステムへの移行時には、古いテープからデータを移行する作業が発生します。特に大量のデータを扱う企業では、この移行作業に数ヶ月から1年以上の期間と相応の人的リソースが必要となることもあります。互換性問題の解決コスト古いバージョンのバックアップソフトウェアで作成されたテープは、新しいシステムでの読み取りに互換性の問題が生じることがあります。これを解決するための専門的なサポートやツールには追加コストがかかります。メディア障害時の専門復旧サービステープメディアに物理的な損傷や劣化が生じている場合、専門のデータ復旧サービスに依頼する必要があります。これらのサービスは高額な費用が発生し、テープの状態や復旧の難易度によっては数十万円から数百万円のコストとなる場合もあります。このように、表面上は初期費用やメディア単価が安価に見えるLTOも、長期的な運用や実際のデータ復旧までを含めたTCOでは膨大なコストがかかることが少なくありません。効果的なデータ保護戦略を立てる際には、これらの隠れたコスト要素も含めて比較検討することが重要です。クラウドストレージという選択肢LTOテープに代わる選択肢として、いま注目を集めているのがクラウドストレージです。クラウドストレージは単なる保存場所の変更ではなく、データ管理の考え方自体を根本から変える可能性を持っています。可用性の高さクラウドストレージの最大の特徴の一つは、データ復旧の概念そのものを変革する可用性の高さです。冗長性の自動化主要なクラウドストレージサービスは、データを複数のサーバーや地理的に分散したデータセンターに自動的に複製して保存します。これにより特定の場所でハードウェア障害が発生しても、即座に別のコピーにアクセスが可能です。自己修復機能クラウドストレージシステムは継続的にデータの整合性をチェックし、問題が検出されると自動的に修復プロセスを実行します。このプロセスはバックグラウンドで行われるため、ユーザーが意識する必要はありません。オンラインアクセスクラウドに保存されたデータは、オンライン経由で常時アクセス可能です。テープのように物理的なメディアを取り出して装置に装填する必要がなく、必要なデータに即座にアクセスできます。これにより、実質的な「復旧時間」は大幅に短縮されます。ダウンタイムの最小化高可用性を前提に設計されたクラウドストレージは、計画的なメンテナンスでも中断なくサービスを提供できるよう設計されています。これにより、データへのアクセス可能性が大幅に向上します。災害・人為的ミスへの強さクラウドストレージは、物理的な脅威や人為的ミスに対しても高い安全性を持っています。分散保存主要なクラウドストレージサービスには、データを複数の地理的に離れたリージョンやアベイラビリティーゾーンに保存する機能があります。これにより、自然災害や地域的な障害が発生しても、データ喪失のリスクを最小限に抑えることができます。バージョン管理とデータ保護多くのクラウドストレージサービスには、ファイルの変更履歴を保持するバージョン管理機能や、誤削除からデータを保護する機能が標準で実装されています。これにより、人為的ミスによるデータ損失リスクが軽減されます。アクセス制御クラウドストレージでは、ユーザーごと、データごとに詳細なアクセス権限を設定できます。また、アクセスログも自動的に記録されるため、セキュリティ監査や不正アクセスの検出が容易になります。暗号化クラウドストレージのほとんどには、転送中および保存中のデータを暗号化する機能が標準で提供されており、データの機密性を確保できます。継続利用の手軽さクラウドストレージを利用することで、テクノロジーの世代交代にともなう複雑な作業からも解放されます。インフラの自動更新クラウドプロバイダーは定期的にストレージハードウェアを更新していますが、この作業はユーザーに意識させることなく行われます。ユーザーはストレージの世代やハードウェアの詳細を気にする必要がありません。契約更新のみで継続利用クラウドストレージは、ハードウェアやソフトウェアの大規模アップグレードではなく、単純な契約更新のみでサービスを継続できます。従来のテープライブラリのリプレイス時に発生していた複雑な検討や導入作業が不要です。データ形式の互換性維持クラウドストレージでは、保存データの形式やアクセス方法の互換性が長期にわたって維持されます。これにより、古いデータへのアクセスが将来的に困難になるという問題が軽減されます。まとめ企業のデータ保護戦略において、LTOテープは長年重要な役割を果たしてきましたが、物理的劣化、世代互換性の問題、復旧の複雑さなど多くの課題があります。これらの課題を解決するのがクラウドストレージへの移行です。Wasabiクラウドストレージは、高可用性アーキテクチャによる迅速なアクセス、自動化された管理、地理的分散によるデータ保護を実現し、従来のテープ運用における多くの課題を解消します。既存のテープ環境の見直しを検討される際は、ぜひWasabiにご相談ください。...
私は毎年、年末の時期に、新しい年がテクノロジー分野にとってどのような年になるかを考えます。トレンドの要素を考察すると、データストレージがすべてにおいて重要であるという当然の結論にたどり着きます。しかし、今年は異なるアプローチを採用しました。私たちは、さまざまな業界のパートナーやお客様に連絡を取り、2025年に何が起こるかについて彼らの視点に基づく意見を求めました。彼らには、持続可能性、AI、メディアに関するさまざまな専門知識があります。そのため、2025年に各分野で起こりうる変化やデータ需要について、ユニークな洞察を得ることができました。データセンターにおける再生可能エネルギーIT購入の意思決定において、持続可能性は引き続き大きなポイントとなっています。2023年の調査では、44%の回答者がクラウドストレージサービスを選択する際、パフォーマンスや拡張性よりも持続可能性を最も重要視すると答えました。データセンター業界において、問題となるのは土地や建物ではなく、電力です。持続可能性グループZerocircleの創設者Hemanth Setty氏は、この問題に真っ向から取り組んでいます。Setty氏は、AIの進歩(詳細は後述)は、データセンターのリソース消費を悪化させると考えています。電力と冷却を利用した再生可能ソリューションも存在しますが、これには地理的な制約が伴います。Setty氏は、データセンターの電力問題を解決する効率性は2つのアプローチによって生まれると述べています。それが、持続可能なデータセンターとエネルギー効率の高い計算です。計算負荷の高いワークロードの消費電力を減らすことができれば、再生可能エネルギーや冷却を利用した作業がより容易になります。現在、ストレージはコンピューティングほど大きなエネルギーを必要としません。CPU、特にGPUは大量の電力を消費しますが、HDDはそれほどではありません。実際、ディスクドライブの容量が増加すると、モーターは同じ量の電力を消費するため、ビットあたりの消費電力は改善されます。次世代のソリッドステートストレージが登場すれば(すでに存在するものの、回転ディスクに比べればまだ高価です)、同量のデータ保存に必要な電力量は、ほぼ10分の1に削減されると思われます。AIの進歩市場におけるAIの役割は、インターネットが初めて登場したときと少し似ています。インターネットが進化するにつれて、創造性と新しいアイデアが爆発的に増加し、これまで誰も見たことも、可能だとも思っていなかったことが実行できるようになりました。うまくいくもの、いかないものがあり、やがてすべてが落ち着きましたが、最終的には明らかに世界が変化しました。私は、AIも同じ道を進むことになると予測しています。IBM Cloud PlatformのゼネラルマネージャーであるUtpal Mangla氏は、AIはまだ始まったばかりだとしたうえで、AI普及とともに、以下の3つが大きく求められるようになると予測しています。1)オープン性多くの企業は、オープンなアーキテクチャやフレームワークを求めています。また、それらを深く理解し、ソースが何であるか、どこから来ているか、モデルはどのように構築されているかを把握する機能も必要です。2)ガバナンス顧客は、AIプラットフォームが信頼できるものであることを知る必要があります。その信頼を築くために、チェックとバランスの整備が求められます。3)データデータはAIの成功の基礎となります。データの品質と出所は、あらゆるAIモデルの構成要素となります。データセットのソースと信頼性は、テクノロジーとしてAIを普及させるうえで不可欠な要素です。Wasabiにとっては、3番目のポイントを特に重視しています。AIで行うことはすべて大量のデータを伴うため、この点における私たちの立場は非常にシンプルです。どの鉄道にもシャベルが必要なのと同じで、トレーニング用のデータが増えるほど、より良いモデルが作られます。メディアの需要メディアは長い間、ストレージの技術と実務を支えてきました。フォーマットの容量要件を考慮すると、ビデオストレージの需要は高くなる可能性があります。TDガーデンおよびボストン・ブルーインズの技術担当副社長、Josh Carley氏には、100年に渡るフランチャイズの歴史を守る責任があります。しかし、データが埃をかぶったゴミ箱の中に眠っていることは想像に難くありません。チームが閲覧、アクセス、維持することができなければ、データは無用の長物です。Carley氏は、大規模なアーカイブを維持する唯一の手段として、クラウドストレージを選択しました。拡張性の高いクラウドストレージがあることで、復帰した選手がアリーナを訪れる際や、ブルーインズのOBに敬意を表する際、必要なときに必要なデータを見つけることができます。実際、LTOテープからクラウドストレージへのメディア移行に対する関心が高まっています。映画、テレビ番組、スポーツイベント、ポッドキャスト、ニュース番組、インタビュー、ホームビデオなど、膨大なビデオアーカイブがテープの形で保管されています。これらのアーカイブを無視するのではなく、即座にアクセスして活用できるクラウドに保存したいと考える組織は少なくありません。放送局ITVのインフラおよびネットワークチームリーダーであるJordyde Muijnk氏も、メディアの将来におけるクラウドの役割について、Carley氏と同様の見解を示しています。確実に言えるのは、2025年には2024年よりも多くのデータが生成され、ストレージがあらゆる業界の企業や新興テクノロジーにとって不可欠な商品であり続けるということです。Wasabiは引き続き、データを手頃な価格で効率的に保存することを使命として掲げています。...