ジェネラル
ファイルサーバーのクラウド化で実現する運用コスト削減と効率化
企業活動において欠かせない存在となっているファイルサーバー。日々作成される見積書や提案書、技術マニュアル、現場写真など、ビジネスの中核を担う重要なデータの保管場所として、多くの企業でその重要性は年々高まっています。
一方でデータ量の爆発的な増加に伴い、従来のオンプレミス型ファイルサーバーでは容量の予測が難しくなり、拡張性やコスト面で多くの課題が浮き彫りになりつつあるのが現状です。
この記事では、Windowsベースのファイルサーバー環境が直面している課題と限界を整理し、クラウド化というソリューションの可能性と注意点を解説していきます。
ファイルサーバーの現状と課題
企業のIT環境において、ファイルサーバーは情報共有とデータ保管の要です。特に日本企業では、部署間のデータ共有や文書管理の中核を担い、業務効率化に欠かせない存在となっています。しかし、その運用や管理には多くの課題が山積しており、IT部門の大きな負担となっているのも事実です。ここではまず、ファイルサーバーが抱える問題点について整理してみましょう。
Windows環境の普及と管理の実態
Windows環境でのファイルサーバーは、その直感的な操作性と設定の簡便さから企業に広く普及しています。
多くのユーザーが日常的に使用するWindowsは、特別なトレーニングなしでも容易に利用可能です。加えてVMwareやHyper-Vなどの仮想化技術の普及により、物理サーバーに依存していた時代と比較して環境構築の手順が簡略化され、迅速な導入が可能になったことも、Windows環境でのファイルサーバーの普及を後押ししてきました。
一方で、この導入の容易さが「野良NAS」と呼ばれる問題を生み出しています。IT部門の管理下にないファイルサーバーが社内に点在し、セキュリティポリシーが適用されていない状態で運用されているケースは少なくありません。それどころか正規の管理下にあるサーバーでさえ、適切なバックアップ体制や災害対策が施されていないことも多く、データ消失のリスクを常に抱えているのが実態です。
増大するデータ量への対応
企業活動において生成されるデータ量は年々増加の一途をたどっています。業務文書だけでなく、高解像度の画像や動画、CADデータなど、ファイルサイズの大きなデータが日常的に扱われるようになったことで、ファイルサーバーの容量枯渇は多くの企業で深刻な問題となっています。
こうした背景から、現在100TBのデータを保有している企業が新しいストレージを検討する場合、将来的なデータ増加を見越して300TB以上の容量を準備するケースも珍しくありません。しかし、こうした容量予測には明確な根拠がなく、感覚で決めているのが大半です。結果として、5年後の廃棄時に容量が余れば無駄な投資となり、逆に運用途中で容量が不足すれば、半年程度の期間をかけて増設作業を行う必要があります。
加えて、ストレージの増設には空きラックスペースの確保や、電力供給、冷却設備の見直しなど、ファイルサーバー以外の設備投資も必要になります。このようなジレンマが、多くの企業のIT部門を悩ませているのです。
オンプレミス環境の限界
ファイルサーバーとして長年企業に利用されてきたオンプレミス環境は、技術的進化を遂げながらも根本的な課題を抱えています。特にデータ量が増大する昨今では、従来のアプローチでは対応しきれない限界点に達しつつあります。ここではハードウェアに依存するオンプレミス環境特有の問題について、詳しく見ていきましょう。
スケーラビリティの問題
オンプレミス型ファイルサーバーの最大の弱点は、拡張性の低さです。しかし、ストレージの増設作業には時間がかかります。ハードウェアの納期や設置工事期間などを含め、半年近くを要することも少なくありません。この間にストレージが枯渇すれば、業務に重大な支障をきたす恐れがあります。
増設時には物理的な制約も無視できません。既存のラックスペースが足りない場合は新たなラックの設置が必要となり、それに伴い電力供給の増強や冷却設備の見直しも必要になります。「黒くて」「デカくて」「電気ばかり食う」と表現されるサーバーは、スペースとコストの両面で企業に大きな負担をかけているのです。
また、Windows 2019以降のNTFSでは理論上ペタバイト級の容量を扱えますが、データ量が30〜50TBを超えるとファイルシステムのmeta情報が肥大化し、ファイル操作のパフォーマンスや検索性能が著しく低下します。結果として、複数のパーティションに分割する運用が必要となり、管理の複雑さが増大してしまいます。
システムリプレイスの宿命
オンプレミス環境の宿命とも言えるのが、定期的なシステムリプレイスです。ファイルサーバーを構成するハードウェアの保守サポート期間は通常5年程度に限られており、この期間を超えると部品供給や修理対応が保証されなくなります。そのため企業は5年ごとに新しいシステムへの移行を余儀なくされています。
リプレイス作業の難しさは、単にハードウェアを交換するだけでなく、膨大な量の蓄積データを新環境に移行する必要がある点です。データ量によっては半年以上の移行期間を要することもあり、IT部門の負担は計り知れません。
さらに、IPアドレスやサーバー名は同一ネットワーク上で重複できないため、新旧ファイルサーバーの切り替え時にはユーザー環境への影響を最小限に抑えるための綿密な計画が必要です。共有フォルダのパス変更やドライブレター割り当ての変更は、エンドユーザーの混乱を招く原因となり、移行後のヘルプデスク対応も大きな負担となります。
ファイルサーバーのクラウド化
昨今、多くのITリソースがクラウド環境へ移行しています。ファイルサーバーもその例外ではありません。しかしオンプレミスからクラウドへ移行したからといって、上記の問題すべてが単純に解決するわけではありません。ここではファイルサーバーのクラウド化がもたらすメリットと、クラウドサービスを選択する際の注意点について詳しく見ていきましょう。
クラウド化のメリット
ファイルサーバーをクラウド化する最大のメリットは、柔軟な容量拡張が可能になる点です。データ量の増加に応じて迅速かつ簡単に容量を追加できるため、将来の容量予測に頭を悩ませる必要がなくなります。必要な分だけリソースを確保することで、過剰投資や容量不足のリスクを大幅に軽減できるでしょう。
また定期的なシステムリプレイスからも解放されます。クラウドサービスでは、バックグラウンドでのハードウェア更新やソフトウェアアップデートがサービス提供者によって行われるため、ユーザー側がリプレイス作業に労力を割く必要がありません。データ移行の手間や休日出勤の負担からIT部門を解放し、より創造的な業務へリソースを振り向けることが可能になります。
物理的なサーバーを社内に設置する必要がなくなるため、ラックスペースや電力、冷却などの物理的制約からも解放されます。近年のデータセンター不足や電力コスト上昇を考慮すると、この利点は非常に大きいと言えるでしょう。
加えて、リモートワークなど場所を問わない働き方にも柔軟に対応できるようになります。適切なセキュリティ設定を行えば社外からでも安全にファイルにアクセスできるため、多様な働き方を支援するインフラとしても機能します。
従来型クラウド化の注意点
一方で、クラウドストレージサービスには注意すべき点もあります。その筆頭とも言えるのがコスト面です。一般的なクラウドサービスは月額課金制が多く、たとえ初期費用が安価でも、長期的には割高になるケースが少なくありません。特に、データ量やユーザー数に応じた課金、さらにはダウンロード時の従量課金を採用するサービスでは、月々の費用が予測できず、予算管理が困難になることがあります。
また、クラウドサービスによっては柔軟なカスタマイズが難しいケースも少なくありません。こうしたクラウドサービスでは、これまでWindowsファイルサーバーで当たり前に行っていた細かな権限設定や特殊なフォルダ構成が実現できず、結果として業務フローの変更を余儀なくされ、ユーザーの反発や混乱を招くリスクがあります。
さらに見落としがちなのが、クラウドロックインの問題です。特定のクラウドプラットフォームに大量のデータを移行すると、後から別のサービスへ移行する際に、多額のデータ転送料が発生するケースがあります。いわば「手切れ金」とも言えるこの費用は、クラウドベンダーによっては非常に高額になる可能性があるため、長期的な視点での検討が必要です。
Wasabiが提供するハイブリッドクラウドソリューション
ファイルサーバーのクラウド化に伴う様々な課題に対して、Wasabiは最適なハイブリッドクラウドソリューションを提供しています。ここでは、Wasabiならではの5つのメリットを紹介します。
既存のWindows環境をそのまま活用
物理サーバー、仮想環境、クラウドのいずれのWindows環境にも対応しているため、従来通りの運用で快適に利用できます。ユーザーの学習コストはゼロです。
無尽蔵のクラウドストレージ領域
meta領域が肥大化しないため、数百TBを超える大規模なWindowsファイルサーバーも安定して構成できます。NTFSの技術的限界に悩まされることなく、必要に応じて容量の拡張が可能です。
一貫したパフォーマンスの維持
アクセス頻度の高いファイルは常にオンプレミス側に存在する仕組みにより、クラウド化による性能低下を防止します。データ容量が増えても、レスポンスの速さを実感できます。
データストレージのリプレイス不要
クラウドベースのストレージは永続的に利用でき、5年ごとのシステムリプレイスは不要です。データ移行の手間やリプレイスに伴うリスクから解放されることで、IT部門の負担が大幅に軽減されます。
明確なコスト体系
Wasabiは最長5年間の一括契約です。ダウンロードやAPI利用などの追加課金が一切ない透明な料金体系を採用しているため、月々の変動費に悩まされることなく、予算を計画的に管理できます。
まとめ
ファイルサーバーは企業のデータ資産を支える重要なインフラですが、従来のオンプレミス環境には様々な課題があります。一方、クラウド化にも注意すべき点があり、慎重な検討が必要です。
Wasabiのハイブリッドクラウドソリューションは、既存Windows環境の使いやすさを維持しながら、クラウドの柔軟性と拡張性を両立させることで、これらの課題を解決します。明確な料金体系と永続的な利用環境により、長期的なコスト削減と運用負荷の軽減が可能です。
物理サーバーから解放され、より効率的なIT環境を構築したいとお考えの企業担当者様は、ぜひWasabiにご相談ください。御社のファイルサーバー環境の最適化に向けた具体的な提案をさせていただきます。
サイバー攻撃、特にランサムウェアによる被害は年々深刻化しており、今やニュースで耳にしない日はありません。小中学校、高等学校、大学、さらには教育委員会までもが攻撃対象となる中、限られたIT予算と人員で運用する教育機関にとっては、堅牢なランサムウェア対策の確保が急務です。本記事では、すでにバックアップを導入している、またはこれからバックアップシステムの導入を予定している教育機関を対象に、「明日からでも実施可能な」クラウドを活用した2次バックアップの重要性と導入方法について、具体的かつ実践的に解説します。教育機関の一般的なバックアップ環境とは?多くの教育機関では、オンプレミス上のファイルサーバーや仮想マシンを対象に、バックアップソフトを通じてローカルのストレージにデータを保存しているのが一般的です。しかし、オンプレミス環境のみのバックアップでは、次のようなリスクがあります。ランサムウェアによるバックアップデータの暗号化や削除地震や火災などの災害によるデータ消失ネットワーク障害による復旧不能状態このようなリスクを最小限に抑えるためには、物理的にも論理的にも隔離された「クラウドへの2次バックアップ」が非常に効果的です。クラウドへ2次バックアップをする7つのメリット既存の多くのバックアップソフトウェアは、クラウドストレージを保存先として設定できるGUI機能を備えています。インターネット回線や学術情報ネットワーク「SINET」経由でクラウドに2次バックアップを取ることで、以下のようなデータ保護効果が期待できます。クラウドバックアップの7つのメリット:オブジェクトロックによるデータ改ざん防止保存されたデータは一切の上書きや削除ができないため、ランサムウェア攻撃による暗号化や改変を防止できます。99.999999999%(11ナイン)の高耐久性クラウドストレージでは複数拠点にデータを冗長保存しているため、障害によるデータ消失リスクが極めて低くなります。即時導入可能クラウドなら物理的な機器準備が不要なため、必要なときにすぐ利用を開始できます。長期保存と容量拡張の柔軟性潜伏型のランサムウェアに備え、数ヶ月〜年単位のバックアップ保持が必要な場合でも、容易に容量拡張が可能です。地理的冗長性による災害対策災害時にも、遠隔地のクラウドからデータを復旧できるため、事業継続性が大幅に向上します。段階的な容量増加に対応必要最小限の容量で契約を開始し、利用状況に応じて柔軟にスケールアップが可能です。メンテナンスフリーで運用負荷を削減ハードウェア管理・アップデート・脆弱性対応は全てクラウド事業者が担うため、教育機関側の運用負担を大幅に軽減します。クラウドストレージはどこを選ぶべきか?Wasabiを選ぶ5つの理由ランサムウェア対策としてクラウドストレージを選ぶ際、「Wasabi」は教育機関に最適な選択肢といえます。その理由は以下の通りです。API利用・データダウンロードが無料多くのクラウドサービスではAPIアクセスやデータの取り出しに料金がかかりますが、Wasabiは完全無料。予算制限のある教育機関にとって、予測しやすく透明なコスト構造が魅力です。高速なアップロード/ダウンロードWasabiの「Hot Cloud Storage」は高い転送速度を誇り、万が一のリストア時にも迅速な対応が可能です。SINET経由での接続が可能学術情報ネットワークSINETを活用することで、セキュアで安定した接続環境を構築できます。WasabiのSINET接続は無料で利用可能です。主要バックアップソフトとの高い互換性Veeam、Arcserve、Backup Execなど主要ソフトと公式連携済み。GUI上から簡単にWasabiを選択できます。Multi-User Authenticationによる強固なセキュリティ誤削除や不正アクセスによるバケット削除を防ぐため、複数ユーザーの承認を必要とする「多要素認証」が設定可能です。今すぐ始められるランサムウェア対策クラウドバックアップは、今あるバックアップソフトとクラウドストレージを組み合わせるだけで、明日からでも導入可能です。もちろん、実際の導入には予算承認や調達手続きが必要ですが、Wasabiなら:最小コストでのスモールスタート既存システムの大幅変更不要教育機関向けに最適化されたクラウド環境というメリットがあるため、導入ハードルを大きく下げることが可能です。ランサムウェア対策の最後の砦としての「クラウドバックアップ」教育機関にとって、バックアップはデータ保護の「最後の砦」です。万が一の事態に備え、クラウド上に安全な2次バックアップを確保することは、情報資産を守る上で欠かせない取り組みです。まずは無料トライアルから、Wasabiのクラウドバックアップを体験してみてください。...
はじめに 2024年も、サイバー攻撃が多く発生した年となりました。特にランサムウェア攻撃は、驚くべき数で重要な機関に大混乱を引き起こし続けています。Sophosによるレポート「The State of Ransomware 2024」によると、2024年は59%の組織がランサムウェア攻撃の被害を受けました。標的となった企業の98%はデータを回復できたものの、大きな混乱と多額のコスト被害が発生しました。攻撃の際、要求される身代金の平均額は200万ドルでしたが、これに復旧費用が加わり、平均273万ドルのコスト負担が組織にかかる結果となりました。昨年、ハッカーは世界最大規模の組織や政府機関などに対して、業務の麻痺、データ損失、金銭的な損害を与えました。しかし、攻撃の多くは簡単な対策で軽減または完全に回避できた可能性があります。それでは、2024年に発生した破壊的なランサムウェア攻撃をいくつか見てみましょう。医療機関 2024年初頭、米国最大手の医療機関がランサムウェア攻撃を受けました。その結果、1億3100万人もの患者の記録が漏洩するデータ侵害が発生しました。流出した情報には、個人健康情報(PHI)、支払い記録、患者の社会保障番号、個人識別情報(PII)などが含まれていました。この医療機関は、情報が流出したことで数々の規制に基づく制裁を受けることになりました。さらに、処方箋を処理する目的などで提供していた医療ソフトウェアアプリの停止も余儀なくされました。また、決済サービスや歯科および医療記録アプリが停止したことで、医療に支障をきたし、患者の健康に影響を及ぼす可能性も示唆されました。課題 攻撃者は、盗んだ認証情報を使用して医療機関のネットワークとデータ資産にアクセスしました。実際、こういった攻撃は珍しくありません。Sophosのレポートによると、ランサムウェア攻撃の29%は認証情報の侵害をきっかけとしています。この医療機関では、多要素認証(MFA)が採用されていませんでした。そのため、攻撃者は盗んだ認証情報を悪用してネットワークへ侵入することができたのです。ユーザーとそのデバイスを認証する機能がなかったことで、正規のユーザーになりすました攻撃者を識別できず、侵入を防ぐことができませんでした。ソリューション MFAを採用していれば、攻撃の大部分を阻止できたはずです。MFAは、ネットワークアクセスを許可する前に、テキストメッセージや電子メールで固有コードを受信するようユーザーに要求します。これにより、盗まれた認証情報の使用をブロックすることができます。また、モバイルアプリを使用した新しいMFAモードでは、モバイルデバイスのなりすましによるSMSメッセージの傍受リスクを回避でき、より強力な保護が提供されます。さらに強力な認証対策になりうるのが、マルチユーザー認証(MUA)です。MUAでは、データの削除や暗号化、アカウントの変更や削除などを行う際、複数のユーザーが確認する必要があります。これにより、システムが侵害された場合でも、ランサムウェア攻撃による悪影響を軽減することが可能です。政府機関 ...
デジタル化が進む現代のビジネス環境において、データは最も重要な資産の一つです。企業が日々生成・収集するデータ量は爆発的に増加しており、こうした膨大なデータを安全に長期保存し、必要なときに迅速に取り出せるデジタルアーカイブの重要性が高まっています。一方で、デジタルアーカイブに利用するストレージソリューションの選択は、企業にとって悩みの種です。この記事では、ビジネスにおけるデジタルアーカイブ向けの主要なストレージソリューションを比較しながら、最適な選択肢を選ぶヒントをお伝えしていきます。デジタルアーカイブに求められる要件ビジネスデータの長期保存を目的とするデジタルアーカイブには、いくつかの重要な要件があります。まずは、企業が貴重なデータ資産を安全に管理し、活用するために必要とされる、それらの要件についてまとめてみましょう。データの永続性と安全性ビジネスデータをアーカイブする最大の目的は、長期間にわたってデータを確実に保存することです。例えば、会計記録は法令遵守のために最低7年間、重要な知的財産や契約書類は数十年にわたって保持する必要があります。このような長期保存においてはメディアの耐久性が重要であり、物理的な劣化や障害に対する耐性が求められます。また、単一障害点(SPOF)をなくすためのバックアップと冗長性も必要です。データの複数コピーを地理的に分散して保管することで、自然災害やハードウェア故障などのリスクを軽減できます。加えて、データ形式の陳腐化に対応するためのフォーマット変換や定期的な整合性チェックなど、長期的なデータ管理戦略も欠かせません。アクセシビリティと検索効率データを安全に保存するだけでなく、必要なときに迅速にアクセスできることも重要です。例えば、監査への対応や過去の案件調査、ビジネス分析などの場面では、古いデータへの素早いアクセスが求められます。特に法的な要求に応じる場合などは、検索の遅延が企業にとって大きなリスクとなることもあります。効率的な検索機能も不可欠です。メタデータやタグ付け、全文検索などの機能により、大量のデータの中から必要な情報を素早く見つけ出せるようにする必要があります。さらに、ビジネスの成長に伴って増加するユーザー数に対応するため、複数ユーザーによる同時アクセスをサポートし、アクセス権限を適切に管理することも求められます。現在主流のアーカイブソリューション比較企業のデジタルアーカイブに使用されるストレージソリューションには様々な選択肢があり、ビジネスの規模やニーズに応じて最適な選択が異なります。ここでは、多くの企業に利用されている4つのアーカイブソリューションを比較します。テープ媒体LTOをはじめとするテープストレージは、これまで非常に多くの企業で利用されてきたアーカイブソリューションです。テープメディアは利用しないときには電力を消費せず、HDDと比較して障害率も低く、GB単価が比較的安価であることから人気があります。一方で、データへのアクセスに時間がかかることや、メディアの世代交代が早く互換性に課題があること、シングルタスクのため複数ユーザーが同時利用できない非効率さなどが課題です。メリット電力消費が少ないGB単価が比較的安価(特に大容量データの場合)物理的に分離保管できるため、サイバー攻撃に強いデメリットデータへのアクセスに時間がかかる(オフラインストレージ)世代交代が早く、古い世代のテープは読み取り困難になる(通常2世代まで保証)シングルタスクのため、複数ユーザーが同時に利用できないオプティカル媒体Blu-rayやDVD、XDCAMなどの光学媒体は、モバイルストレージとしても活用可能な汎用性の高いメディアです。理論上は100年以上の寿命があることと、比較的長い後方互換性を持つ点がメリットとされています。一方、時代の移り変わりに合わせて再生用の機材がEOL(End of Life)になりつつあり、将来的にはデータの読み取りができなくなるリスクが懸念されています。加えて媒体の容量が比較的小さいことから、大量データの保存には多数のディスクが必要となり、管理が煩雑になること、また検索性が低いことも大きな課題です。メリットメディアの汎用性が高い比較的長い後方互換性(特にBlu-ray)理論上は100年以上の寿命デメリット再生機器のEOL(End of Life)により、メディアを読み取れなくなる大量データの保存には多数のディスクが必要検索性が低く、目的のデータを見つけるのに時間がかかる小型NAS小型NASはデータ量が数百TB程度の中小企業などを中心に、手軽なオンラインストレージとして活用されています。データが常にオンラインで複数ユーザーが同時にアクセス可能なため、データ検索が容易で業務効率が高いのが特徴です。大型NASと比較して、低コストで導入できる点もメリットです。一方、大型NASと比較すると障害発生率が高く、リカバリー作業に時間がかかることが課題として挙げられます。またデータの増加に伴い複数台の導入が必要になるケースがあることと、保守期間の終了ごとに機器のリプレイスとデータの移行が必要となります。メリットデータが常にオンラインで、迅速なアクセスが可能複数ユーザーが同時にアクセス可能大型NASよりも低コストで導入可能デメリット大型NASと比べて障害発生率が高めリカバリー作業に時間がかかる数年おきにリプレイスとデータ移行が必要クラウドストレージクラウドストレージは、近年急速に普及しているアーカイブソリューションです。物理的なインフラ管理が不要で、容量を必要に応じて拡張でき、場所を問わずアクセスできる点で人気を集めています。加えて、保守やバージョンアップの心配がなく、データの共有も容易です。一方で運用に伴うコスト予測が困難で、サービスによってはアクセスやダウンロードごとに課金されるなど、想定以上に高額になるケースがあります。また運用にはインターネット接続が必要となることから、セキュリティ面のリスクを指摘する声もあります。加えて、他のベンダー(サービス提供者)に移行しにくくなるベンダーロックインが発生しがちな点も、リスクの一つです.メリット物理的なインフラ管理が不要理論上は無制限に容量拡張可能場所を問わずアクセス可能高度な冗長性とバックアップ機能デメリットコストの予測が困難インターネット接続に依存データ主権やコンプライアンスに関する懸念ベンダーロックインのリスクデジタルアーカイブをクラウド移行するポイント近年ではクラウド技術の進歩に伴い、多くの企業がデジタルアーカイブをクラウドストレージへと移行しています。しかし、クラウド移行を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。データ移行計画の策定データの規模と優先順位を明確にする段階的な移行タイムラインを設計する移行中のビジネス継続性を確保する方法を検討するコスト構造の理解アクセス料金やダウンロード料金(下り転送料金)の有無や仕組みを把握する月間の使用量予測とそれに伴うコスト見積もりを行う長期保存におけるトータルコストを試算するセキュリティとコンプライアンスの確保保存データの暗号化レベルを確認するアクセス権限の管理と監査機能を検証する業界固有の規制要件への対応状況を確認するアクセスと検索のワークフロー最適化日常業務におけるデータ検索・取得のプロセスを設計する既存システムとの連携方法を検討する大量データの検索効率と速度を評価する初期データ移行の実行計画大規模データの初期アップロードに必要な帯域とリソースを確保するデータ整合性の検証プロセスを確立する移行後のデータ検証と旧システムからの切り替え計画を立てるこれらのポイントを事前に十分検討することで、デジタルアーカイブのクラウド移行をスムーズに進め、長期的に効果的なデータ管理体制を構築することができます。まとめビジネスデータのデジタルアーカイブにおいては、データの永続性と安全性、アクセシビリティと検索効率のバランスが重要です。この点でクラウドストレージのメリットは注目に値しますが、クラウド移行を検討する際は、この記事で紹介したポイントをしっかりと吟味しましょう。WasabiのクラウドストレージはAPI利用料金も下り転送料金も不要で、コスト面の心配がありません。また、パフォーマンスの高さや強固なセキュリティも多くの企業に選ばれている理由の一つです。理想的なデジタルアーカイブソリューションとして、ぜひWasabiの利用をご検討ください。...