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ファイルサーバーのクラウド化で実現する運用コスト削減と効率化

Fri May 02 2025By Mayuko Yoshitome

企業活動において欠かせない存在となっているファイルサーバー。日々作成される見積書や提案書、技術マニュアル、現場写真など、ビジネスの中核を担う重要なデータの保管場所として、多くの企業でその重要性は年々高まっています。

一方でデータ量の爆発的な増加に伴い、従来のオンプレミス型ファイルサーバーでは容量の予測が難しくなり、拡張性やコスト面で多くの課題が浮き彫りになりつつあるのが現状です。

この記事では、Windowsベースのファイルサーバー環境が直面している課題と限界を整理し、クラウド化というソリューションの可能性と注意点を解説していきます。


ファイルサーバーの現状と課題

企業のIT環境において、ファイルサーバーは情報共有とデータ保管の要です。特に日本企業では、部署間のデータ共有や文書管理の中核を担い、業務効率化に欠かせない存在となっています。しかし、その運用や管理には多くの課題が山積しており、IT部門の大きな負担となっているのも事実です。ここではまず、ファイルサーバーが抱える問題点について整理してみましょう。

Windows環境の普及と管理の実態

Windows環境でのファイルサーバーは、その直感的な操作性と設定の簡便さから企業に広く普及しています。

多くのユーザーが日常的に使用するWindowsは、特別なトレーニングなしでも容易に利用可能です。加えてVMwareやHyper-Vなどの仮想化技術の普及により、物理サーバーに依存していた時代と比較して環境構築の手順が簡略化され、迅速な導入が可能になったことも、Windows環境でのファイルサーバーの普及を後押ししてきました。

一方で、この導入の容易さが「野良NAS」と呼ばれる問題を生み出しています。IT部門の管理下にないファイルサーバーが社内に点在し、セキュリティポリシーが適用されていない状態で運用されているケースは少なくありません。それどころか正規の管理下にあるサーバーでさえ、適切なバックアップ体制や災害対策が施されていないことも多く、データ消失のリスクを常に抱えているのが実態です。

増大するデータ量への対応

企業活動において生成されるデータ量は年々増加の一途をたどっています。業務文書だけでなく、高解像度の画像や動画、CADデータなど、ファイルサイズの大きなデータが日常的に扱われるようになったことで、ファイルサーバーの容量枯渇は多くの企業で深刻な問題となっています。

こうした背景から、現在100TBのデータを保有している企業が新しいストレージを検討する場合、将来的なデータ増加を見越して300TB以上の容量を準備するケースも珍しくありません。しかし、こうした容量予測には明確な根拠がなく、感覚で決めているのが大半です。結果として、5年後の廃棄時に容量が余れば無駄な投資となり、逆に運用途中で容量が不足すれば、半年程度の期間をかけて増設作業を行う必要があります。

加えて、ストレージの増設には空きラックスペースの確保や、電力供給、冷却設備の見直しなど、ファイルサーバー以外の設備投資も必要になります。このようなジレンマが、多くの企業のIT部門を悩ませているのです。

オンプレミス環境の限界

ファイルサーバーとして長年企業に利用されてきたオンプレミス環境は、技術的進化を遂げながらも根本的な課題を抱えています。特にデータ量が増大する昨今では、従来のアプローチでは対応しきれない限界点に達しつつあります。ここではハードウェアに依存するオンプレミス環境特有の問題について、詳しく見ていきましょう。

スケーラビリティの問題

オンプレミス型ファイルサーバーの最大の弱点は、拡張性の低さです。しかし、ストレージの増設作業には時間がかかります。ハードウェアの納期や設置工事期間などを含め、半年近くを要することも少なくありません。この間にストレージが枯渇すれば、業務に重大な支障をきたす恐れがあります。

増設時には物理的な制約も無視できません。既存のラックスペースが足りない場合は新たなラックの設置が必要となり、それに伴い電力供給の増強や冷却設備の見直しも必要になります。「黒くて」「デカくて」「電気ばかり食う」と表現されるサーバーは、スペースとコストの両面で企業に大きな負担をかけているのです。

また、Windows 2019以降のNTFSでは理論上ペタバイト級の容量を扱えますが、データ量が30〜50TBを超えるとファイルシステムのmeta情報が肥大化し、ファイル操作のパフォーマンスや検索性能が著しく低下します。結果として、複数のパーティションに分割する運用が必要となり、管理の複雑さが増大してしまいます。

システムリプレイスの宿命

オンプレミス環境の宿命とも言えるのが、定期的なシステムリプレイスです。ファイルサーバーを構成するハードウェアの保守サポート期間は通常5年程度に限られており、この期間を超えると部品供給や修理対応が保証されなくなります。そのため企業は5年ごとに新しいシステムへの移行を余儀なくされています。

リプレイス作業の難しさは、単にハードウェアを交換するだけでなく、膨大な量の蓄積データを新環境に移行する必要がある点です。データ量によっては半年以上の移行期間を要することもあり、IT部門の負担は計り知れません。

さらに、IPアドレスやサーバー名は同一ネットワーク上で重複できないため、新旧ファイルサーバーの切り替え時にはユーザー環境への影響を最小限に抑えるための綿密な計画が必要です。共有フォルダのパス変更やドライブレター割り当ての変更は、エンドユーザーの混乱を招く原因となり、移行後のヘルプデスク対応も大きな負担となります。

ファイルサーバーのクラウド化

昨今、多くのITリソースがクラウド環境へ移行しています。ファイルサーバーもその例外ではありません。しかしオンプレミスからクラウドへ移行したからといって、上記の問題すべてが単純に解決するわけではありません。ここではファイルサーバーのクラウド化がもたらすメリットと、クラウドサービスを選択する際の注意点について詳しく見ていきましょう。

クラウド化のメリット

ファイルサーバーをクラウド化する最大のメリットは、柔軟な容量拡張が可能になる点です。データ量の増加に応じて迅速かつ簡単に容量を追加できるため、将来の容量予測に頭を悩ませる必要がなくなります。必要な分だけリソースを確保することで、過剰投資や容量不足のリスクを大幅に軽減できるでしょう。

また定期的なシステムリプレイスからも解放されます。クラウドサービスでは、バックグラウンドでのハードウェア更新やソフトウェアアップデートがサービス提供者によって行われるため、ユーザー側がリプレイス作業に労力を割く必要がありません。データ移行の手間や休日出勤の負担からIT部門を解放し、より創造的な業務へリソースを振り向けることが可能になります。

物理的なサーバーを社内に設置する必要がなくなるため、ラックスペースや電力、冷却などの物理的制約からも解放されます。近年のデータセンター不足や電力コスト上昇を考慮すると、この利点は非常に大きいと言えるでしょう。

加えて、リモートワークなど場所を問わない働き方にも柔軟に対応できるようになります。適切なセキュリティ設定を行えば社外からでも安全にファイルにアクセスできるため、多様な働き方を支援するインフラとしても機能します。

従来型クラウド化の注意点

一方で、クラウドストレージサービスには注意すべき点もあります。その筆頭とも言えるのがコスト面です。一般的なクラウドサービスは月額課金制が多く、たとえ初期費用が安価でも、長期的には割高になるケースが少なくありません。特に、データ量やユーザー数に応じた課金、さらにはダウンロード時の従量課金を採用するサービスでは、月々の費用が予測できず、予算管理が困難になることがあります。

また、クラウドサービスによっては柔軟なカスタマイズが難しいケースも少なくありません。こうしたクラウドサービスでは、これまでWindowsファイルサーバーで当たり前に行っていた細かな権限設定や特殊なフォルダ構成が実現できず、結果として業務フローの変更を余儀なくされ、ユーザーの反発や混乱を招くリスクがあります。

さらに見落としがちなのが、クラウドロックインの問題です。特定のクラウドプラットフォームに大量のデータを移行すると、後から別のサービスへ移行する際に、多額のデータ転送料が発生するケースがあります。いわば「手切れ金」とも言えるこの費用は、クラウドベンダーによっては非常に高額になる可能性があるため、長期的な視点での検討が必要です。

Wasabiが提供するハイブリッドクラウドソリューション

ファイルサーバーのクラウド化に伴う様々な課題に対して、Wasabiは最適なハイブリッドクラウドソリューションを提供しています。ここでは、Wasabiならではの5つのメリットを紹介します。

  • 既存のWindows環境をそのまま活用

物理サーバー、仮想環境、クラウドのいずれのWindows環境にも対応しているため、従来通りの運用で快適に利用できます。ユーザーの学習コストはゼロです。

  • 無尽蔵のクラウドストレージ領域

meta領域が肥大化しないため、数百TBを超える大規模なWindowsファイルサーバーも安定して構成できます。NTFSの技術的限界に悩まされることなく、必要に応じて容量の拡張が可能です。

  • 一貫したパフォーマンスの維持

アクセス頻度の高いファイルは常にオンプレミス側に存在する仕組みにより、クラウド化による性能低下を防止します。データ容量が増えても、レスポンスの速さを実感できます。

  • データストレージのリプレイス不要

クラウドベースのストレージは永続的に利用でき、5年ごとのシステムリプレイスは不要です。データ移行の手間やリプレイスに伴うリスクから解放されることで、IT部門の負担が大幅に軽減されます。

  • 明確なコスト体系

Wasabiは最長5年間の一括契約です。ダウンロードやAPI利用などの追加課金が一切ない透明な料金体系を採用しているため、月々の変動費に悩まされることなく、予算を計画的に管理できます。

まとめ

ファイルサーバーは企業のデータ資産を支える重要なインフラですが、従来のオンプレミス環境には様々な課題があります。一方、クラウド化にも注意すべき点があり、慎重な検討が必要です。

Wasabiのハイブリッドクラウドソリューションは、既存Windows環境の使いやすさを維持しながら、クラウドの柔軟性と拡張性を両立させることで、これらの課題を解決します。明確な料金体系と永続的な利用環境により、長期的なコスト削減と運用負荷の軽減が可能です。

物理サーバーから解放され、より効率的なIT環境を構築したいとお考えの企業担当者様は、ぜひWasabiにご相談ください。御社のファイルサーバー環境の最適化に向けた具体的な提案をさせていただきます。

バックアップとリカバリー

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クラウドの成功事例:あらゆる業界でWasabiがストレージの総コストを削減

すべての組織には何らかの使命がありますが、次世代を見据えた教育、質の高い医療の提供、画期的なメディアの制作、重要な公的記録の保護など、その内容は多岐にわたります。そして、どの業界においても大きな課題となっているのが、増加し続けるデータを効率的に管理・保護することです。Wasabiは、シンプルでコスト効率の高いクラウドストレージソリューションによって複雑さや価格の高騰を回避し、あらゆる組織がデータを保存、アクセス、保護できるようにサポートします。最新のeBook「Success Stories: How Wasabi Lowers Data Storage Costs Across Industries(クラウドの成功事例:あらゆる業界でWasabiがストレージの総コストを削減)」では、お客様が実際にWasabi...

新たな1年のデータ増加に向けて有利なスタートを切る方法

新年に向けた予測が行われる中、データ管理において確実に言えるのは、非構造化データが増加し続けているということです。IDC StorageSphereの予測によると、保存されているデータ全体の78%は非構造化データです。また、非構造化データは、2024年の5.5ゼタバイトから2028年までに10.5ゼタバイトに増加すると予測されており、年平均成長率は16%となる見込みです。この急増を後押ししているのがデジタルトランスフォーメーションです。非構造化データには、ビデオ監視、医療用画像、モノのインターネット(IoT)のセンサーデータ、そして現在ではAIおよびMLモデルとその学習に用いられる膨大なデータセットなどが含まれます。この計り知れない成長のプラス面は、すべてのデータに潜在的な価値が秘められており、ビジネス上の洞察、運用効率、革新的な新しいソリューションや発見につながりうるということです。しかし、すべての洞察を引き出し、データ主導の世界で競争力を維持するためには、高度なインフラとAI分析ツールに投資する必要があります。また、指数関数的に増加するデータ量を効果的に保持、管理、保護する方法を見つけることも忘れてはいけません。ご安心ください。Wasabiには、すべてのデータを手頃な価格で保存しながら、将来に投資するための資金を確保できるアイデアがあります。今期の予算で、今後何年にもわたって必要となるストレージ容量を確保多くの組織における予算モデルは、「使わなければ無駄になる」という方針に基づいています。1年間に割り当てられた資金が使用されなかった場合、それが翌年に繰り越されることはありません。期末になっても予算が使い切れないという方は、Wasabiの容量予約制ストレージをぜひご検討ください。1年・3年・5年単位で事前に容量を購入することで、さらにコストを節約することが可能です。クラウド容量を今後5年後まで安全に確保しておけば、将来のストレージ予算を、AIを含む他の戦略に適用することができます。クラウドストレージの容量をどう活用すればよいか分からない方に向けて、代表的なクラウドオブジェクトストレージであるWasabi Hot Cloud Storageの使用例をいくつか見てみましょう。サイバーレジリエンスのためのバックアップとリカバリ今では、IT業界のほぼすべての人が、クラウドオブジェクトストレージがバックアップや災害復旧に有効であることを認識しています。クラウドストレージは、安全で耐久性があり、コスト効率が高く、事実上無制限のストレージ容量を提供します。また、冗長性と自動レプリケーションが複数のデータセンターで共有されており、高い可用性と高レベルの保護が保証されます。最も重要なのは、オフサイトで使用することができ、データ保護やビジネス回復の絶対的な基準ともいえる3-2-1バックアップ戦略に準拠しやすいことです。Wasabi Hot Cloud Storageが、貴重で機密性の高いデータ保護に最適であるポイントはまだあります。Wasabiは非常にサイバー耐性の高いストレージであり、データとストレージアカウントを、悪意のある行為者、自然災害、人為的ミスから保護する多層セキュリティを備えています。また、Wasabiは下り転送料やAPIリクエストが無料です。そのため、予期せぬ追加料金を請求されることなく、バックアップを何度でもテストしたり、インシデント発生時にデータを復元したりすることが可能です。災害復旧や低レイテンシのワークロードに向けたデータレプリケーションバケットまたはオブジェクトのレプリケーション機能を使用すると、同一または異なるストレージ領域にデータのコピーを複数作成することができます。データをさまざまな場所に複製することで、停電や天災などの地域災害が発生した場合でも、データを確実に復旧させ、アクセスすることが可能になります。また、リージョン間でデータを複製することで、低レイテンシの環境でもアクセスが高速化されます。Wasabiのオブジェクトレプリケーション機能によって、データがシンプルかつコスト効率よく複製され、よりパフォーマンスが高く回復力のあるインフラが実現します。クラウド階層化とアクティブアーカイブでストレージのROIを向上使用頻度の低いデータは、オンプレミスのサーバーから安価なクラウドオブジェクトストレージに階層化することで、ストレージの総コスト削減につながります。クラウドを階層化することで、オンプレミスの容量を重要なプライマリデータ用に確保し、コストのかかるアップグレードをしなくてもいい状態を保ちます。大抵の大手企業は、複数のサービス層に加えて、データを適切なサービス層へ自動的に移動する階層化サービスを提供しています。この場合、アクセス頻度の低いデータはウォームストレージ層に移動し、コールドデータは安価でパフォーマンスの低いアーカイブサービス層に移動します。しかし、コールドデータが急に必要になる場合があります。たとえば、医師が2年前の患者の記録を確認する、監視システムの古い映像を取り出す、クライアントのメディアプロジェクトが突然必要になるなどの場合などです。コールドストレージに保管されたコンテンツやデータが急に必要になることが実際にあるとして、IT部門は、どのデータがいつ必要になるかをどのように把握すればよいのでしょうか。 アクティブアーカイブで問題を解決アクティブアーカイブは、ビジネス上またはコンプライアンス上の理由で保管しておく必要があるが、時々アクセスする可能性もあるデータの保存に適しています。高性能なクラウドストレージ層にはアクセス性も備わっていますが、大手企業では少々割高になる傾向があります。一方、Wasabi Hot Cloud...

LTOからデータを復旧できない?企業が今すぐ見直すべきバックアップ戦略とは

データは現代企業の生命線です。過去10年を振り返るだけでも、企業が扱うデータ量は指数関数的に増加し続け、その勢いは今後も衰える気配がありません。こうした状況の中、多くの企業がバックアップやアーカイブのためにLTO(Linear Tape-Open)テープを利用してきました。この記事ではLTOテープによるバックアップ・復旧の実態について紹介するとともに、多くの企業が直面しているデータ保護の課題と、クラウドストレージなどの代替ソリューションがもたらす可能性について説明します。LTOは本当に安全なバックアップ先か?LTOテープは長らく「コスト効率が良く、長期保存に適している」と言われてきました。しかし、デジタルトランスフォーメーションが加速する現代のビジネス環境において、テープベースのバックアップ戦略には見過ごせない課題が浮き彫りになっています。その最も重大な問題の一つが「データ復旧の不確実性」です。バックアップの本質的な目的は、必要なときに確実にデータを取り戻せることにあります。しかし現実には、LTOテープからのデータ復旧は想像以上に複雑で、時に不可能なケースすら存在するのです。たとえばIT部門の担当者であれば、こんな経験はないでしょうか?緊急時にテープを取り出したものの、読み取りエラーで復旧できない古いバージョンのLTOテープを読み込むため、中古の旧型ドライブを探し回った定期的なテープのチェックや管理のために、貴重な人的リソースを割いている実際、テープベースのバックアップからの復旧時に問題が発生するケースは珍しくありませんが、こうした失敗は単なる不便さにとどまらず、ビジネス継続性を脅かす重大なリスク要因となっています。よくあるLTOの復旧トラブルとその原因LTOテープによるバックアップは多くの企業で採用されていますが、いざデータを復旧しようとした際に様々なトラブルに見舞われることがあります。これらの問題は単なる一時的な不具合ではなく、多くが構造的な課題に起因するものです。保管環境に起因するトラブルLTOテープは本質的に物理メディアであり、適切な環境で保管されないと経年劣化が避けられません。具体的には、以下のような問題が起こりがちです。温湿度による劣化テープメディアを使用・保存する際は温度や湿度に注意が必要です。たとえばLTO-9の場合、温度は15〜25℃、相対湿度は20〜50%が推奨環境で、この条件を外れるとテープの伸縮や素材の劣化が促進され、カビが発生することもあります。物理的損傷保管中の衝撃や圧力による変形、落下によるケースの破損など、物理的な損傷もデータ喪失の原因となります。特に、段ボール箱に雑然と詰め込まれたテープは物理的ストレスにさらされやすく、破損のリスクが高くなってしまいます。磁気干渉強い磁場の近くに保管された場合、テープに記録されたデータが破損する恐れがあります。オフィス環境では気づかないうちに磁気を発する機器の近くにテープが置かれていることもあり、長期保存における潜在的なリスク要因となっています。現実のオフィス環境や倉庫で、常に理想的な保管状態を維持することは容易ではありません。多くの企業にとって、こうした問題は長期保存時のリスク要因となるでしょう。LTOの世代に起因するトラブルテクノロジーの急速な進化はIT業界の宿命ですが、LTOテープにおいては特にこの問題が顕著です。世代間の互換性制限LTOは約3年ごとに新世代が登場しますが、互換性があるのは基本的に1世代前(LTO-7以前は2世代前)までです。たとえばLTO-9ドライブはLTO-8テープを読み込めますが、LTO-7以前の世代は読み込めません。多くの企業が10年以上のデータ保持を必要とする現状では、この限定的な互換性は重大な問題です。旧型ドライブの入手困難古い世代のテープを読み込むには対応するドライブが必要ですが、製造中止となった世代のドライブの入手は非常に困難です。たとえ中古市場で見つかったとしても、保証なしの状態であったり、高額な費用が発生したりします。ドライバーやソフトウェアの互換性古いドライブは新しいOSやサーバーとの互換性が保証されないため、接続しても認識されなかったり、バックアップソフトウェアが対応していなかったりする問題が発生します。LTOの仕様上、世代を超えたデータアクセスには制限があります。これは長期アーカイブを目的とする企業にとって重大な検討事項となるでしょう。LTOの運用・データ復旧にかかるコストLTOテープを使用したバックアップシステムは、初期費用や媒体コストが比較的安価であることから多くの企業に採用されてきました。しかし、システム全体の運用や実際のデータ復旧までを考慮すると想定以上のコストが発生することがあります。ハードウェアの定期的更新LTO技術は約3年ごとに新世代が登場します。長期的な運用を続けるためには、テープドライブやライブラリ装置の定期的な更新が必要となり、その度に大きな設備投資が発生します。保守・サポート契約テープライブラリやドライブには年間保守契約が必要です。特にミッションクリティカルな環境では、24時間365日のサポート契約が必要となり、初期投資に加えて毎年の継続的なコストが発生します。メディア管理の物理的コストテープカートリッジの適切な保管には、温度・湿度を管理した専用の保管環境が望ましいとされています。これらの環境維持コスト、保管棚や保管庫の費用も運用コストの一部です。管理ソフトウェアのライセンスとアップデートテープライブラリを効率的に管理するためのソフトウェアライセンス費用やアップデート費用も継続的に発生します。世代交代時のデータ移行コスト新しい世代のテープシステムへの移行時には、古いテープからデータを移行する作業が発生します。特に大量のデータを扱う企業では、この移行作業に数ヶ月から1年以上の期間と相応の人的リソースが必要となることもあります。互換性問題の解決コスト古いバージョンのバックアップソフトウェアで作成されたテープは、新しいシステムでの読み取りに互換性の問題が生じることがあります。これを解決するための専門的なサポートやツールには追加コストがかかります。メディア障害時の専門復旧サービステープメディアに物理的な損傷や劣化が生じている場合、専門のデータ復旧サービスに依頼する必要があります。これらのサービスは高額な費用が発生し、テープの状態や復旧の難易度によっては数十万円から数百万円のコストとなる場合もあります。このように、表面上は初期費用やメディア単価が安価に見えるLTOも、長期的な運用や実際のデータ復旧までを含めたTCOでは膨大なコストがかかることが少なくありません。効果的なデータ保護戦略を立てる際には、これらの隠れたコスト要素も含めて比較検討することが重要です。クラウドストレージという選択肢LTOテープに代わる選択肢として、いま注目を集めているのがクラウドストレージです。クラウドストレージは単なる保存場所の変更ではなく、データ管理の考え方自体を根本から変える可能性を持っています。可用性の高さクラウドストレージの最大の特徴の一つは、データ復旧の概念そのものを変革する可用性の高さです。冗長性の自動化主要なクラウドストレージサービスは、データを複数のサーバーや地理的に分散したデータセンターに自動的に複製して保存します。これにより特定の場所でハードウェア障害が発生しても、即座に別のコピーにアクセスが可能です。自己修復機能クラウドストレージシステムは継続的にデータの整合性をチェックし、問題が検出されると自動的に修復プロセスを実行します。このプロセスはバックグラウンドで行われるため、ユーザーが意識する必要はありません。オンラインアクセスクラウドに保存されたデータは、オンライン経由で常時アクセス可能です。テープのように物理的なメディアを取り出して装置に装填する必要がなく、必要なデータに即座にアクセスできます。これにより、実質的な「復旧時間」は大幅に短縮されます。ダウンタイムの最小化高可用性を前提に設計されたクラウドストレージは、計画的なメンテナンスでも中断なくサービスを提供できるよう設計されています。これにより、データへのアクセス可能性が大幅に向上します。災害・人為的ミスへの強さクラウドストレージは、物理的な脅威や人為的ミスに対しても高い安全性を持っています。分散保存主要なクラウドストレージサービスには、データを複数の地理的に離れたリージョンやアベイラビリティーゾーンに保存する機能があります。これにより、自然災害や地域的な障害が発生しても、データ喪失のリスクを最小限に抑えることができます。バージョン管理とデータ保護多くのクラウドストレージサービスには、ファイルの変更履歴を保持するバージョン管理機能や、誤削除からデータを保護する機能が標準で実装されています。これにより、人為的ミスによるデータ損失リスクが軽減されます。アクセス制御クラウドストレージでは、ユーザーごと、データごとに詳細なアクセス権限を設定できます。また、アクセスログも自動的に記録されるため、セキュリティ監査や不正アクセスの検出が容易になります。暗号化クラウドストレージのほとんどには、転送中および保存中のデータを暗号化する機能が標準で提供されており、データの機密性を確保できます。継続利用の手軽さクラウドストレージを利用することで、テクノロジーの世代交代にともなう複雑な作業からも解放されます。インフラの自動更新クラウドプロバイダーは定期的にストレージハードウェアを更新していますが、この作業はユーザーに意識させることなく行われます。ユーザーはストレージの世代やハードウェアの詳細を気にする必要がありません。契約更新のみで継続利用クラウドストレージは、ハードウェアやソフトウェアの大規模アップグレードではなく、単純な契約更新のみでサービスを継続できます。従来のテープライブラリのリプレイス時に発生していた複雑な検討や導入作業が不要です。データ形式の互換性維持クラウドストレージでは、保存データの形式やアクセス方法の互換性が長期にわたって維持されます。これにより、古いデータへのアクセスが将来的に困難になるという問題が軽減されます。まとめ企業のデータ保護戦略において、LTOテープは長年重要な役割を果たしてきましたが、物理的劣化、世代互換性の問題、復旧の複雑さなど多くの課題があります。これらの課題を解決するのがクラウドストレージへの移行です。Wasabiクラウドストレージは、高可用性アーキテクチャによる迅速なアクセス、自動化された管理、地理的分散によるデータ保護を実現し、従来のテープ運用における多くの課題を解消します。既存のテープ環境の見直しを検討される際は、ぜひWasabiにご相談ください。...