Wasabi
データ保護に「不変性」だけでは不十分な理由
2017年のこと、とあるハッカーが盗んだAWSのログイン認証情報を使い、以前の雇用主の顧客に関連する23のアカウントを削除しました。その結果、同社は多くの顧客との契約を失いました。警察によると、アカウント削除による損失は推定で約70万ドルに上るそうです。 同社は削除されたデータを復元することはできませんでした。
2021年には、ニューヨークを拠点とする銀行の元従業員は、解雇された2日後、同行のアカウントにログインし、ランサムウェア対策ソフトをバイパスして、アカウントとローン住宅ローン申請に関連する何万ものファイルやディレクトリを削除しました。
実際、企業がクラウド・ストレージ・ソリューションを検討する際、セキュリティは依然として大きなネックとなっています。Wasabiが2023年に行ったクラウドストレージに関するアンケート調査によると、回答者の多くがネイティブのバックアップ、ディザスタリカバリ、データ保護ツールがないこと、ネイティブのセキュリティサービスがないことがクラウドストレージの最大の懸念事項であると述べています。
イミュータビリティ(不変性): 人からデータを守る
「うちは大丈夫、イミュータブルバケットやオブジェクトロックを使ったオフサイトバックアップを使っている」とおっしゃる方もいるでしょう。実際、イミュータブルバケットとオブジェクトロックは、貴社のアカウントにアクセスした悪者が、貴社のデータを暗号化、改ざん、削除するのを防ぎます。これはランサムウェアの連鎖の中で最も重要なステップです。攻撃者は多くの場合、まずバックアップを削除し、そこから復元できないようにします。しかし、データが暗号化、改ざん、削除されなければ、復元することができます。身代金を要求されることはありません。不変性はデータにとっては素晴らしい盾ですが、セキュリティシステムの最大の弱点である「人間」から守ることはできません。もし、あなたのイミュータブルバックアップを保管しているクラウドアカウントの鍵をハッカーや退職者が持っていたらどうなるでしょうか?
上に示したように、悪意のある攻撃は外部からだけでなく、組織内部からも来る可能性があります。精通したインサイダーは、AWS サポートスタッフからユーザー名とメールアドレスをソーシャルエンジニアリングすることができます。彼らはパスワードを知っているか、AWSルートの登録メールアカウントのメールを傍受することができるか、AWSサポート経由でこのステップをソーシャルエンジニアリングすることができるのです。
多要素認証(MFA)では不十分?
多要素認証は、セキュリティにおける人的要素に対するもう一つの防御線です。しかし、ここでもやはり、内部者が優位に立つ可能性があります。アカウント保有者として、悪者はルート・アカウントに関連するMFAデバイスを所有しているかもしれませんし、内部サポート・システムへのアクセスを通じてソーシャル・エンジニアリングでこのステップを回避できるかもしれません。MFAは部外者の侵入を防ぐには優れていますが、内部からの攻撃にはまだ脆弱と言えるでしょう。
マルチユーザー認証(MUA)の重要性
データの第三の防御策は、マルチユーザー認証です。Wasabiの独創的なマルチユーザー認証は、核ミサイルの発射プロトコルに似たコンセプトを採用しています。WasabiのMUAでは、Wasabiユーザーは、アカウント削除を確認する必要がある個人を最大3人まで指定することができます。指定された個人のいずれかが削除を拒否した場合、削除プロセスは自動的にキャンセルされます。ハッカーであれ、不正な従業員であれ、不注意な管理者であれ、ひとりでアカウントが削除できる権限を持つ人はいません。
これは、クラウドアカウントのセキュリティの世界では革命的なことです。このようなセキュリティ機能を提供するクラウドストレージプロバイダーは、現時点でWasabiのみです。
たとえ誰かがルートアカウントの認証情報を保持していたとしても、アカウントを完全に削除する能力を保持していれば、ユーザーのデータは完全に消去されてしまいます。純粋にセキュアな設定では、この重大な脆弱性は、すべての主要クラウドベンダーのオブジェクトロック実装に存在します。そのため、Wasabiの新しいマルチユーザー認証は、Wasabiのお客様のアカウントセキュリティに革命をもたらす、画期的な機能なのです。つまりは、冒頭の例に登場した企業がWasabiのようなMUA機能を備えたクラウドストレージプロバイダーを利用していれば、重要なアカウントを削除されずに済んだわけです。
シナリオを振り返ってみましょう
さて、冒頭のハッカーによる攻撃の例を振り返って、もしこの企業が旧来のアカウント削除機能ではなくWasabiのマルチユーザー認証機能を使っていると考えてみてください。
ハッカーがお客様のWasabiルートユーザー認証情報にアクセスします。
ハッカーはWasabiに保存されたデータを削除を試みますが、データが不変であるため削除できないことに気づきます。
そして、Wasabiアカウントとすべてのデータを削除することに決めます。
Wasabiのマルチユーザー認証機能では、最大3人のセキュリティ担当者が削除を承認する必要があるため、セキュリティ担当者が削除要求を拒否した場合、アカウントは削除されません。
通知機能により、お客様のセキュリティ担当者は、社内およびWasabiサポートにアラートを通知することができます。
ランサムウェア攻撃は再び増加傾向
何年か減少していたランサムウェア攻撃ですが、2023年になって再び増加傾向にあります。
バックアップは、ランサムウェアに対する最も重要な防御策のひとつですが、適切に設定されていなければ、防御に穴が開いてしまうかもしれません。悪名高いランサムウェア集団、DroppelPaymerのメンバーが最近インタビュアーに以下の様にコメントしました。
「クラウドバックアップはランサム攻撃に対して非常に良いオプションですが、クラウドバックアップの設定が甘い場合もあり、オフラインバックアップが古いこともあるため、100%保護することはできていません。システムバックアップは大変良いですが、人的要因に抜け穴があります。」
貴社のデータとアカウントを保護するために、以下の手順に従ってください:
多要素認証(MFA)を有効にします。
できる限り、コンプライアンスをデフォルトとしたイミュータブル機能を使用します。
ユーザー権限を制限します。ルートアカウントの認証情報は絶対に共有しないでください。
パスワードは定期的に更新します。
追加アカウントセキュリティ設定として、Wasabiのマルチユーザー認証を有効にします。
(Wasabiは、in-flightおよびat-restのすべてのデータを暗号化します。Wasabiのデフォルトキーを使用するか、S3 APIの一部として独自のキーを提供することができます。よって、 Wasabiのお客様がご自身で暗号化を行う必要はありません)
ハイパースケールクラウドの主要ベンダーには、このような穴が存在します。Wasabiのマルチユーザー認証機能は、アカウントセキュリティの世界において革命的です。Wasabiは、このユニークなセキュリティ機能を提供する唯一のクラウドストレージプロバイダーです。もし、WasabiのMUA機能がアカウント削除の被害に遭われた方々に利用されていたなら、彼らのデータは現在も利用可能だったことでしょう。
映像制作、医療、研究開発など、大容量データを安全に長期間保存するニーズは年々高まっています。従来のテープ保存では手間やコスト、検索性に課題がありました。そこで注目されているのが「クラウドアーカイブ」です。本記事ではクラウドアーカイブの基本的な仕組みから従来のテープ保管との違い、導入メリット、そしてコストやセキュリティに関する選定ポイントまで、わかりやすく解説します。クラウドアーカイブとは?クラウドアーカイブとは、クラウド環境を活用してデータを長期間保存できるストレージサービスです。頻繁にアクセスしない「コールドデータ」や、法規制やコンプライアンスの観点から長期保管が必要な「アーカイブデータ」を対象に設計されていることから、大容量で、長期保存が求められるデータの管理などに幅広く使われています。クラウドアーカイブとテープ(LTO)アーカイブの違い長期保存といえば、従来は「LTOテープ」が主流でした。しかしクラウドアーカイブは運用面や利便性で大きく異なります。ここでは、主な4つの視点から比較します。コスト(初期費用・運用費用)テープアーカイブでは、LTOドライブやテープメディアの購入という初期投資が必要です。さらに、温湿度管理された保管庫の維持費、オフサイト保管のための輸送費、テープの入れ替えや管理を行う人件費など、目に見えにくいコストも多く発生します。加えて、テープの世代交代時には、新しいドライブへの買い替えや、データ移行作業に伴うコストがかかります。一方、クラウドアーカイブは主に従量課金制を採用しており、初期費用を大幅に抑えることができます。ハードウェアのメンテナンスや故障対応、定期的なリプレースが不要なため、運用にかかる人的リソースを削減できます。アクセス性・検索性テープアーカイブの大きな課題は、データへのアクセスに時間がかかることです。必要なテープを保管場所から取り出し、ドライブにセットしてデータを読み込むまでに、数時間から数日かかることもあります。特に外部倉庫に保管している場合は、物理的な搬送時間が加わるため、緊急時の対応は困難です。クラウドアーカイブなら、インターネットに接続できれば、いつでもどこからでもデータにアクセスできます。メタデータによる高度な検索機能も利用でき、大量のアーカイブデータから必要な情報を素早く見つけ出すことが可能です。拡張性・柔軟性テープアーカイブでは、データ量の増加に伴って新しいテープメディアを購入し、保管スペースを確保する必要があります。予想以上にデータが増えた場合、追加の保管庫やドライブの調達に時間がかかることも少なくありません。逆にデータ量が減少した場合は、購入したハードウェアは無駄になってしまいます。これに対し、クラウドアーカイブは事実上無制限の拡張性を持っています。データ量の増減に応じて自動的にストレージ容量が調整されるため、急激なデータ増加にも即座に対応可能です。季節変動があるビジネスや、プロジェクトベースでデータ量が変化する企業にとって、この柔軟性は大きなメリットとなります。セキュリティ・耐久性テープメディアは物理的な劣化が避けられません。一般的な寿命は10~30年とされていますが、保管環境によってはそれより早く劣化することも少なくありません。また、紛失や盗難のリスク、火災や水害などの災害時には、バックアップテープも同時に失われる可能性があります。一方、クラウドアーカイブは、エンタープライズグレードのデータセンターで厳重に管理されます。データは暗号化によって不正アクセスから保護されるうえ、複数のデータセンターにデータが自動的に複製されることで、極めて高い可用性と耐久性が実現されます。クラウドアーカイブ導入で得られる5つのメリットクラウドアーカイブを導入することで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、特に重要な5つのメリットについて解説します。運用コストと管理負担を大幅に削減クラウドアーカイブ最大のメリットは、TCO(総所有コスト)の削減です。ハードウェアの購入費用、保守費用、電力費、冷却費、床面積コストなどが不要で、テープの入れ替えや在庫管理、定期的な読み取りテストなどの作業も不要となるため、IT部門の負担を大幅に軽減できます。災害や障害に強いBCP対策の実現データを地理的に離れた複数のデータセンターに分散保存することで、強固なBCP対策の実現が可能です。仮に本社が地震や洪水などの災害に遭遇しても、クラウド上のデータは安全に守られます。データセンター自体も災害対策が徹底されているため、ビジネスへの影響も最小限に抑えられます。堅牢なセキュリティによるデータの保護クラウドアーカイブでは、高度な暗号化技術によってデータが保護されます。きめ細かなアクセス制御や改ざん防止機能により、権限を持たない人によるデータアクセスやデータの改ざんを防ぐことができます。また、アクセスログの自動記録により、誰がいつデータにアクセスしたかを追跡することも可能です。必要な時にすぐデータを取り出せるクラウドアーカイブでは、過去の顧客データを分析してマーケティング戦略を立案したり、過去のプロジェクトデータから知見を得たりすることが容易です。アーカイブデータをAIやビッグデータ分析ツールと連携させ、新たなビジネスチャンスを見つけるなど、自社の競争力強化にもつながります。データ量に応じた柔軟な拡張性クラウドアーカイブなら、将来のデータ増加を心配する必要がありません。必要に応じて自動的にストレージ容量が拡張されるため、ビジネスの成長に応じた柔軟な運用が可能です。また、M&Aや新規事業の立ち上げなど、急激なデータ増加にも即座に対応できます。失敗しないクラウドアーカイブサービスの選び方クラウドアーカイブサービスは多数存在しますが、選び方を間違えると、予想外のコストやトラブルが発生することがあります。ここでは、サービス選定時の重要なチェックポイントを解説します。Egress(データ転送)料金を確認する多くのクラウドサービスでは、データのアップロード(Ingress)は無料ですが、ダウンロード(Egress)時に料金が発生します。この「隠れコスト」を見落とすと、データを取り出すたびに高額な料金が発生し、思った以上にコストがかかる場合があります。また、APIリクエストごとに課金されるサービスもあり、頻繁なメタデータ検索が必要な用途では大きな負担となる場合があります。サービス選定時は、ストレージ料金だけでなく、データ転送料金やAPIリクエスト料金を含めた総コストで比較検討することが重要です。セキュリティとコンプライアンス要件を確認するデータの暗号化方式(保存時・転送時)、暗号化キーの管理方法、データセンターの物理的セキュリティレベルを確認しましょう。ISO 27001、SOC 2、HIPAAなどの第三者認証を取得しているかも重要な判断材料です。金融業界や医療業界など、厳格な規制要件がある業界では、データの不変性機能や、データの保存場所を特定の地域に限定できる機能も必要になります。監査ログの取得機能やデータ削除証明書の発行など、コンプライアンス対応に必要な機能が揃っているかどうかも確認しましょう。パフォーマンスと既存システムとの互換性を確認するアーカイブデータとはいえ、必要な際にスムーズにアクセスできることは重要です。データの取り出しにかかる時間(RTO:目標復旧時間)を確認し、自社の要件に合っているか確認しましょう。アップロード/ダウンロード速度、同時接続数の制限、現在使用しているバックアップソフトやアプリケーションとの互換性などについても確認が必要です。S3互換APIを提供するサービスを選べば、既存のツールやスクリプトをそのまま使うことができ、移行コストも最小限に抑えられます。まとめクラウドアーカイブは、増え続けるデータの長期保存という課題に対する効果的なソリューションです。従来のテープアーカイブと比較して、コストの削減やアクセス性の向上、柔軟な拡張性、強固なセキュリティなど、さまざまなメリットがあります。ただし、サービス選定時には、Egress料金などの隠れコストや、セキュリティ・コンプライアンス要件、既存システムとの互換性を慎重に確認することが重要です。Wasabiのようなクラウドアーカイブサービスなら、データを資産として活用し、ビジネスの成長を加速させることができます。自社のデータ特性や利用パターンを分析し、最適なアーカイブ戦略を構築しましょう。...
増え続けるデータ量と長期にわたるデータ保持要件のバランスを決められた予算内でうまく保つことは、多くの組織が直面している課題の1つです。これに対して、IT予算を圧迫せずにデータアーカイブの寿命を延ばし、年間数百万ドルを節約できる優れたソリューションが、クラウドストレージの統合です。ハイブリッド環境において、オンプレミスのネットワーク接続ストレージ(NAS)からCloud NASにアーカイブデータを移動すると、長期的にコスト効率の高いデータ管理戦略を実現できると同時に、予想外の出費を抑え、コストを最適化することができます。組織独自の要件に合わせたインフラの適応化それぞれの組織ごと、さらには同じ組織内でも異なる部門ごとに、保存されたデータの用途は大きく異なります。例えば、マーケティングチームはトレンド分析のために過去の顧客データを使用する一方で、開発者はログへの拡張アクセスを必要としており、製品チームは膨大なデータセットをもとにAIワークロードを実験しています。さらに、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPPA)、一般データ保護規則(GDPRおよびEUGDPR)、SEC規則17a-4(金融サービスの電子記録管理に関する米国証券取引委員会規則)など、様々な業界を対象とする特定のデータ保持期間とアクセス要件を義務付ける規制も存在します。 オンプレミスストレージの場合、容量の制限、コストの高さ、長期にわたる複雑なアーカイブ管理などが伴うため、これらの要件をすべて満たすのは困難です。結果として、ストレージ管理者は、複数の階層管理とデータ保持ポリシーの開発に追われることになり、ストレージインフラ自体に対処する余裕がなくなります。一方、ハイブリッドストレージモデルを使用すると、オンプレミスのインフラをクラウドベースのオブジェクトストレージで拡張することができ、以下のようなメリットにつながります。保持要件への適合データ管理の簡素化コスト削減とIT予算の合理化Wasabi Cloud NASでは、非アクティブなデータはオンプレミスのデバイスからクラウドに移行されます。これにより、アクセス頻度の低いデータ用に低コストかつ可用性の高いランディングゾーンを作成することができます。高価で高性能なNASシステムからコールドデータをオフロードすることで、保持要件を遵守する状態を保ちながら、アクティブなワークロード用のローカル容量が確保されます。長期データ保存には高価すぎるオンプレミスNAS テラバイトあたりのコストが高い-NASデバイスは、コスト効率の高いコールドストレージ向けではなく、パフォーマンスと高速アクセスを目的として設計されています。そのため、オンプレミスの容量が1テラバイト増えるごとに、大規模なハードウェア、電力、冷却、物理的なスペースの要件、メンテナンスとサポートなど、多大な費用が発生します。非アクティブなデータのパフォーマンスが無駄になる-長期(コールド)データを保存した場合、ほとんどアクセスしないにもかかわらず、頻繁な入出力と重要なワークロード用に設計された高性能ストレージのスペースを占有することになります。スケーラビリティの課題-データ量の増加は予測できません。オンプレミスNASの拡張は、手間がかかるうえにコストがかさみます。多くの場合において、新しいハードウェアが必要になり、インストール時にダウンタイムが発生するほか、構成がより複雑になります。管理費-老朽化したハードウェア、バックアップ、レプリケーション、保持ポリシーなどにまたがるデータの管理には、継続的な人件費がかかります。また、信頼できるサードパーティのクラウドプロバイダーにストレージハードウェアをオフロードする作業だけでも、ストレージ管理者が時間を費やして詳細な作業を行う必要があります。冗長性と耐久性の限界-オンプレミスのNASシステムは通常、ローカルのRAID(Redundant Array of Independent Disks)またはシステム全体のバックアップに依存しています。一方、クラウドオブジェクトストレージは、本質的に高い耐久性(99.999999999%)と、地理的に異なる地域にまたがる冗長性を提供します。ベンダーロックイン-異なるNASシステム間でデータを移動させると、労力がかかり、エラーが発生しやすく、混乱を招きます。そのためこの作業は、ほとんどの組織では、一定の投資額を超えると事実上不可能と見なされます。一方、非アクティブなデータをNASシステムからクラウドにオフロードするハイブリッドアプローチの方がはるかに持続可能です。ハイブリッドストレージで要件に対応したデータ保存を簡素化ハイブリッドストレージにはオンプレミスインフラの強みが組み合わさっており、クラウドの拡張性と経済性を兼ね備えています。このアーキテクチャを使うことで、アクティブなワークロードには既存のNASまたはファイルサーバーを引き続き使用しながら、アクセス頻度の低いデータをクラウドオブジェクトストレージに階層化することができます。これにより、ホットストレージとコールドストレージの中間に位置するデータリポジトリである「アクティブアーカイブ」が作成されます。このデータはホットストレージほど頻繁にアクセスされないため、レイテンシを最低限に抑える必要はありませんが、いつでもすぐに呼び出すことができます。オンプレミスとオブジェクトストレージ間の移行は、ポリシーベースのルールを適用したソフトウェアで管理され、ファイルの保存期間、使用パターン、種類、ビジネス固有の基準に基づいて自動的に行われます。この構成によってプライマリストレージへの負担が軽減され、手動による介入がなくても長期的なデータの保持と管理が簡素化されます。AWS、Azure、GCSなどのハイパースケーラーは、テラバイトあたりのコストが非常に低い長期ストレージ用のアーカイブ層を提供しています。ただし、これらのサービスには、高額な下り転送料、APIリクエスト料、早期削除に対するペナルティなど、隠れたコストがかかることがよくあります。こういった料金は、時間の経過とともに総所有コスト(TCO)を大幅に増加させる原因にもなります。WasabiのTCO eBookでは、元は低価格設定のサービスであったとしても、これらの追加費用によって、データを長期保存する際の予算計画が複雑になることを詳しく説明しています。「手数料なし」が収益に与える影響Wasabiは、根本的に異なるアプローチでクラウドストレージの価格およびパフォーマンスを実現し、アーカイブワークロードに最適なソリューションを提供します。従来のクラウドプロバイダーとは異なり、Wasabiでは下り転送料やAPIリクエスト料が不要です。そのため、予期せぬコストに悩まされることなくデータにアクセスし、管理することが可能になります。また、Wasabiのソリューションは高可用性と強力な耐久性を兼ね備え、特にオンプレミスで増大するデータ量を管理している現代企業のニーズに応えます。さらに、Wasabiのセキュリティもユーザーから高く評価されています。Wasabiのアーカイブデータは、イミュータブルバケット、ロールベースのアクセス制御、厳格な安全認証などによって、不正な変更やランサムウェアの脅威から保護されます。さらに、Wasabi Cloud...
映像制作現場では、大容量の動画素材やプロジェクトデータを安全かつ効率的に管理することが求められます。本記事では、制作ワークフローにおけるデータ管理の課題と解決策を整理するとともに、クラウドストレージ・オンプレミス・ハイブリッド環境を活用したデータ管理手法と、バックアップ戦略、最先端のAIソリューション活用事例を紹介します。映像制作におけるデータ管理の課題と重要性まずは、高解像度化に伴う大容量データの急増と、管理の不備がもたらす可能性があるリスクに注目しましょう。高解像度化による大容量データの増加4Kや8Kといった超高解像度映像の普及により、動画データのサイズは増加する一方です。例えば、4K映像の場合、1時間の撮影素材は約350GB、8Kでは1.4TBにも達します。編集プロジェクトファイル、レンダリング用の中間ファイル、完成データなど、制作過程で生成されるファイルも加わると、データ量は膨大なものとなるでしょう。このため、映像制作企業は、かつてないほどに多くのストレージ容量を確保する必要に迫られています。データ管理不備がもたらすリスクデータ管理の不備は、データの破損や紛失を招き、制作の効率を著しく低下させます。必要な素材を探すのに時間がかかれば、本来クリエイティブな作業に充てるべき時間が削られ、スタッフの生産性低下に直結しかねません。また、整理されていない管理方法は、プロジェクトの遅延や納期遅れを招き、最終的には企業の評判や売上にも悪影響を与えます。つまり、データ管理の不備は単なる技術的な問題ではなく、ビジネス全体に影響を及ぼす経営課題なのです。効率的なフォルダ管理とファイル整理術データ管理の基本となるのは、体系的なフォルダ構造と命名規則です。具体例を交えて解説します。プロジェクト単位のフォルダ構造設計効率的なデータ管理の第一歩は、体系的なフォルダ構造の設計です。第一階層に「(編集開始日)_(わかりやすい名称)」という形式でフォルダを作成すれば、時系列でデータを管理できます。例えば「20250912_A社製品PR動画」というフォルダの中に、「01_撮影素材」「02_編集プロジェクト」「03_音声データ」「04_グラフィック」「05_完成データ」といったサブフォルダを作成します。このフォルダ構造によって、プロジェクトに関連するすべてのデータを一元管理でき、必要なファイルへの迅速なアクセスが可能です。チーム共有を前提とした命名規則統一されたフォルダ管理ルールは、「作業時間の短縮」や「業務ストレスの軽減」につながります。特にリモートワークが増えた現在、誰が見ても理解できる命名規則は不可欠です。ファイル名には「日付_プロジェクト名_内容_バージョン」という形式を採用し、「20250912_A社PR_インタビュー素材_v02.mp4」のように統一します。これにより、作業の引き継ぎが円滑に行えるようになり、チーム全体の生産性も向上します。データ管理におけるストレージの種類と特長映像制作で利用可能なストレージには、クラウド、オンプレミス、そして両者を組み合わせたハイブリッド環境の3つのタイプがあります。クラウドストレージクラウドストレージの最大の利点は、インターネット環境さえあれば、場所や端末を問わずデータにアクセスできる点です。また、自動バックアップ機能により、作業中のファイルが継続的に保存され、万が一の際のデータ損失リスクを軽減できます。バージョン管理機能を使えば、過去の編集状態に戻すことも容易です。オンプレミスストレージオンプレミスストレージの利点は、ネットワーク接続なしでデータを取り出せることです。特に大容量の4K・8K素材を扱う際は、ネットワーク速度に依存せず、高速なデータ転送が可能なオンプレミスが有効です。編集作業中に即時アクセスが必要な素材や、機密性の高いプロジェクトデータには、セキュリティ面でも優れたオンプレミス環境が適しています。ハイブリッド環境映像制作においては、クラウドとオンプレミスのメリットを組み合わせたハイブリッド環境を構築することが最も効率的です。制作中のアクティブなデータはオンプレミスで高速処理し、完成データやアーカイブはクラウドに保管するという使い分けが効果的です。バックアップ戦略「3-2-1ルール」の実践作成したデータの損失を防ぐためには、適切なバックアップ戦略が不可欠です。ここでは世界標準のバックアップ手法である「3-2-1ルール」と、その実践方法を紹介します。3-2-1ルールの基本概念データ保護の世界標準である3-2-1ルールは、「データを3つ作成」して「2つの異なるメディアで保存」し、「1つは別の場所で保管」するという原則です。この方法により、ハードウェア障害、自然災害、ランサムウェア攻撃など、あらゆるリスクからデータを守ることができます。映像制作現場での具体的な実装方法実際の制作現場では、撮影データのバックアップ用として外付けHDDを1台、作業用として外付けSSDを1台、さらに作業後のバックアップ用として外付けHDDを2台用意する構成が現実的です。撮影直後に現場でHDDにバックアップを取り、編集室では高速SSDで作業を行い、プロジェクト完了後は別のHDDとクラウドストレージに二重でアーカイブします。こうしたワークフローを確立することで、データ損失のリスクを最小限に抑えることができます。コストと運用負荷のバランス現場では、バックアップを取得する人件費やバックアップ機器のコスト増加も考慮する必要があります。すべてのデータを同じレベルでバックアップするのではなく、重要度に応じてバックアップの頻度や保管期間を調整することが大切です。例えば、RAW素材は3-2-1ルールで厳格に管理し、中間ファイルは2つのコピーで運用するなど、柔軟な対応が求められます。Wasabi AiRによる映像制作の効率化事例映像制作におけるデータ管理の効率化では、AIを活用した最先端のソリューションも有効です。ここでは、Wasabiが提供するAI技術を活用したクラウドソリューションの活用事例を紹介します。リバプールFCの導入背景と課題世界的なサッカークラブであるリバプールFCは、試合映像の管理に大きな課題を抱えていました。具体的には、試合映像を見返し、重要なシーンを手動でマークダウンする作業に数日を要していたといいます。ソーシャルメディア向けのコンテンツ制作も、素材の検索に時間がかかり、タイムリーな発信が困難でした。Wasabi AiRがもたらした成果この状況を大きく変えたのが、Wasabi AiRの導入です。試合映像は自動的にクラウドにアップロードされ、AIが顔認識やロゴ検出を行い、自動的にタグ付けを行います。これにより、編集チームは必要なシーンを瞬時に検索できるようになりました。従来は日単位だった作業が分単位に短縮され、試合終了後わずか4時間以内にハイライト動画をソーシャルメディアに投稿できるようになりました。この迅速な対応により、ファンエンゲージメントが向上し、クラブのデジタルプレゼンスが大幅に強化されたといいます。詳細については、下記のWasabi AiRの導入事例「リバプールフットボールクラブ」をご覧ください。まとめ映像制作におけるデータ管理は、制作品質と効率性を左右する重要な要素です。適切なフォルダ構造の設計、クラウド・オンプレミス・ハイブリッド環境の使い分け、そして3-2-1ルールに基づくバックアップ戦略の実践により、データ損失リスクを最小化しながら制作ワークフローを最適化できるでしょう。Wasabi AiRのようなAI技術を活用したクラウドソリューションを導入することで、従来より作業時間を大幅に短縮でき、より多くの価値あるコンテンツを生み出せるようになります。データ管理の効率化は、クリエイティブな作業により多くの時間を割くための基盤となり、競争力のある映像制作を実現する鍵となるでしょう。...