Wasabi
Wasabiが提供するMUA (Multi-User Authentication)マルチユーザー認証について解説
2017年のこと、とあるハッカーが盗んだAWSのログイン認証情報を使い、以前の雇用主の顧客に関連する23のアカウントを削除しました。その結果、同社は多くの顧客との契約を失いました。警察によると、アカウント削除による損失は推定で約70万ドルに上るそうです。 同社は削除されたデータを復元することはできませんでした。
2021年には、ニューヨークを拠点とする銀行の元従業員は、解雇された2日後、同行のアカウントにログインし、ランサムウェア対策ソフトをバイパスして、アカウントとローン住宅ローン申請に関連する何万ものファイルやディレクトリを削除しました。
実際、企業がクラウド・ストレージ・ソリューションを検討する際、セキュリティは依然として大きなネックとなっています。Wasabiが2023年に行ったクラウドストレージに関するアンケート調査によると、回答者の多くがネイティブのバックアップ、ディザスタリカバリ、データ保護ツールがないこと、ネイティブのセキュリティサービスがないことがクラウドストレージの最大の懸念事項であると述べています。
イミュータビリティ(不変性): 人からデータを守る
「うちは大丈夫、イミュータブルバケットやオブジェクトロックを使ったオフサイトバックアップを使っている」とおっしゃる方もいるでしょう。実際、イミュータブルバケットとオブジェクトロックは、貴社のアカウントにアクセスした悪者が、貴社のデータを暗号化、改ざん、削除するのを防ぎます。これはランサムウェアの連鎖の中で最も重要なステップです。攻撃者は多くの場合、まずバックアップを削除し、そこから復元できないようにします。しかし、データが暗号化、改ざん、削除されなければ、復元することができます。身代金を要求されることはありません。不変性はデータにとっては素晴らしい盾ですが、セキュリティシステムの最大の弱点である「人間」から守ることはできません。もし、あなたのイミュータブルバックアップを保管しているクラウドアカウントの鍵をハッカーや退職者が持っていたらどうなるでしょうか?
上に示したように、悪意のある攻撃は外部からだけでなく、組織内部からも来る可能性があります。精通したインサイダーは、AWS サポートスタッフからユーザー名とメールアドレスをソーシャルエンジニアリングすることができます。彼らはパスワードを知っているか、AWSルートの登録メールアカウントのメールを傍受することができるか、AWSサポート経由でこのステップをソーシャルエンジニアリングすることができるのです。
多要素認証(MFA)では不十分?
多要素認証は、セキュリティにおける人的要素に対するもう一つの防御線です。しかし、ここでもやはり、内部者が優位に立つ可能性があります。アカウント保有者として、悪者はルート・アカウントに関連するMFAデバイスを所有しているかもしれませんし、内部サポート・システムへのアクセスを通じてソーシャル・エンジニアリングでこのステップを回避できるかもしれません。MFAは部外者の侵入を防ぐには優れていますが、内部からの攻撃にはまだ脆弱と言えるでしょう。
マルチユーザー認証(MUA)の重要性
データの第三の防御策は、マルチユーザー認証です。Wasabiの独創的なマルチユーザー認証は、核ミサイルの発射プロトコルに似たコンセプトを採用しています。WasabiのMUAでは、Wasabiユーザーは、アカウント削除を確認する必要がある個人を最大3人まで指定することができます。指定された個人のいずれかが削除を拒否した場合、削除プロセスは自動的にキャンセルされます。ハッカーであれ、不正な従業員であれ、不注意な管理者であれ、ひとりでアカウントが削除できる権限を持つ人はいません。
これは、クラウドアカウントのセキュリティの世界では革命的なことです。このようなセキュリティ機能を提供するクラウドストレージプロバイダーは、現時点でWasabiのみです。
たとえ誰かがルートアカウントの認証情報を保持していたとしても、アカウントを完全に削除する能力を保持していれば、ユーザーのデータは完全に消去されてしまいます。純粋にセキュアな設定では、この重大な脆弱性は、すべての主要クラウドベンダーのオブジェクトロック実装に存在します。そのため、Wasabiの新しいマルチユーザー認証は、Wasabiのお客様のアカウントセキュリティに革命をもたらす、画期的な機能なのです。つまりは、冒頭の例に登場した企業がWasabiのようなMUA機能を備えたクラウドストレージプロバイダーを利用していれば、重要なアカウントを削除されずに済んだわけです。
シナリオを振り返ってみましょう
さて、冒頭のハッカーによる攻撃の例を振り返って、もしこの企業が旧来のアカウント削除機能ではなくWasabiのマルチユーザー認証機能を使っていると考えてみてください。
ハッカーがお客様のWasabiルートユーザー認証情報にアクセスします。
ハッカーはWasabiに保存されたデータを削除を試みますが、データが不変であるため削除できないことに気づきます。
そして、Wasabiアカウントとすべてのデータを削除することに決めます。
Wasabiのマルチユーザー認証機能では、最大3人のセキュリティ担当者が削除を承認する必要があるため、セキュリティ担当者が削除要求を拒否した場合、アカウントは削除されません。
通知機能により、お客様のセキュリティ担当者は、社内およびWasabiサポートにアラートを通知することができます。
ランサムウェア攻撃は再び増加傾向
何年か減少していたランサムウェア攻撃ですが、2023年になって再び増加傾向にあります。
バックアップは、ランサムウェアに対する最も重要な防御策のひとつですが、適切に設定されていなければ、防御に穴が開いてしまうかもしれません。悪名高いランサムウェア集団、DroppelPaymerのメンバーが最近インタビュアーに以下の様にコメントしました。
「クラウドバックアップはランサム攻撃に対して非常に良いオプションですが、クラウドバックアップの設定が甘い場合もあり、オフラインバックアップが古いこともあるため、100%保護することはできていません。システムバックアップは大変良いですが、人的要因に抜け穴があります。」
貴社のデータとアカウントを保護するために、以下の手順に従ってください:
多要素認証(MFA)を有効にします。
できる限り、コンプライアンスをデフォルトとしたイミュータブル機能を使用します。
ユーザー権限を制限します。ルートアカウントの認証情報は絶対に共有しないでください。
パスワードは定期的に更新します。
追加アカウントセキュリティ設定として、Wasabiのマルチユーザー認証を有効にします。
(Wasabiは、in-flightおよびat-restのすべてのデータを暗号化します。Wasabiのデフォルトキーを使用するか、S3 APIの一部として独自のキーを提供することができます。よって、 Wasabiのお客様がご自身で暗号化を行う必要はありません)
Wasabiのマルチユーザー認証機能は、アカウントセキュリティの世界において革命的です。また、Wasabiはユニークなセキュリティー機能を提供した最初のクラウド ストレージ プロバイダーです。もし、WasabiのMUA機能がアカウント削除の被害に遭われた方々に利用されていたなら、彼らのデータは現在も利用可能だったことでしょう。
重要なデータをクラウドで長期保存するには、セキュリティ、コスト、可用性を考慮した運用が必要です。本記事では、長期保存に適したクラウドストレージの種類や選定ポイント、バックアップ・アーカイブや階層化といったクラウド運用戦略など、安全かつ効率的にデータを長期間保管するための方法を解説します。データの長期保存にクラウドが選ばれる理由ビジネスにおけるデータ価値の向上と、それに伴うデータ量の増加は、企業の保管体制やコストに大きく影響しています。従来、データ保存は自社内でサーバーを管理するオンプレミスが主流でしたが、ハードウェアの老朽化や拡張性の限界、運用コストの高さといった課題がありました。これに対してクラウドには、初期投資を抑えられることや、データ量に応じて柔軟に容量を拡張できるスケーラビリティ、運用負荷の軽減など、大きなメリットがあります。こうした背景から、データの長期保存先としてクラウドが選ばれるようになっています。長期保存に利用されるクラウドストレージの種類クラウドストレージは、データのアクセス頻度や用途に応じて複数の種類が用意されています。それぞれの特徴に応じて、適切に使い分けることが重要です。ホットストレージ日常的に使用される、アクセス頻度の高いデータを保存するためのストレージです。高速なデータアクセスが可能ですが、その分ストレージ単価は他の階層に比べて高めに設定されています。ウォームストレージアクセス頻度はそれほど高くないものの、必要になった際には即時アクセスしたいデータの保存に適しています。ホットストレージよりは低コストで、後述するコールドストレージよりは高速にアクセスできる、コストと即時性のバランスが取れたストレージです。コールドストレージコンプライアンス対応や記録保持のために、ほとんどアクセスしないデータを非常に低コストで保管できるストレージです。ただし、サービスによりデータの取り出し(復元)時間は大きく異なり、数時間〜数日程度と幅があります。このため即時性が求められるデータにはあまり向きません。また、取り出し時に追加コストが発生するサービスも多く存在します。長期のデータ保存に適したクラウドストレージの選定ポイントクラウドストレージを選定する際は、価格の安さだけでなく、ビジネス要件を満たすサービスかどうかを多角的な視点で評価することが不可欠です。堅牢なセキュリティとコンプライアンス対応長期保存においては、保存時と転送時の暗号化、アクセス権限管理、多要素認証といった堅牢なセキュリティ機能が不可欠です。さらにISO/IEC 27001等の第三者認証を取得しているか、国内では個人情報保護法や電子帳簿保存法、海外取引ならGDPRなどの法規制に準拠しているかも重要な確認事項です。これらが整備されていることで、情報漏えいや不正アクセスのリスクを最小限に抑え、法的要件を満たした運用が可能となります。料金体系の分かりやすさ(追加料金の有無)クラウドは単純な容量料金だけでなく、データ転送料金やAPIリクエスト料が発生する場合があります。特にデータ取り出し(エグレス)時に想定以上の費用が発生する場合も少なくありません。そのため、総合的なコストを試算し、料金体系が明確で予測可能なサービスを選ぶことが大切です。「エグレス料金が無料」といったシンプルなモデルを採用するサービスは、長期的にコスト管理しやすい点でメリットがあります。ビジネスを止めないパフォーマンスと可用性データの可用性は、長期保存においても非常に重要です。SLA(Service Level Agreement)で高可用性を保証するサービスを選ぶことで、障害時にも迅速にアクセスできる環境を確保できます。また、アーカイブデータであっても必要に応じて短時間で取り出せるかどうかは、業務継続性に直結します。保存コストが安くてもアクセス性が低ければ実用性を損なうため、パフォーマンスと可用性を両立するサービスを選びましょう。安全・効率的なデータ長期保存を実現する運用戦略長期保存の安全性とコスト効率を高めるためには、適切なクラウドサービスを選定したうえで、データの特性に応じた運用戦略を策定することが重要です。バックアップとアーカイブの違いを正しく理解するバックアップとアーカイブは混同されがちですが、目的が異なります。バックアップの目的はシステムの障害に備えた「復旧」であり、アーカイブの目的は利用頻度の低いデータを「長期保管・参照」することです。データを安全かつ効率的に長期保存するためには、まず目的を明確にしたうえで、それぞれに適した運用方法を設計する必要があります。クラウド階層化によるコストとパフォーマンスの最適化すべてのデータを単一の高価なストレージに置く必要はありません。データの価値やアクセス頻度に応じて、ホット、ウォーム、コールドといった適切なストレージ階層へ自動的にデータを配置する「階層化」を検討してみましょう。階層化を適切に行うことで、コストを最適化しながら、必要なデータへのアクセス性も確保するという、理想的なデータ管理を実現できます。まとめDXの進展により増え続けるデータを安全かつ効率的に管理するために、クラウドはデータの長期保存に最適な選択肢と言えます。しかし、そのメリットを最大限に引き出すためには、目先の保存料金だけでなく、セキュリティやコスト(特にデータ取り出し料金)、さらに可用性の3つの観点からサービスを慎重に評価することが非常に重要です。これらの課題を解決し、コストを抑えつつ高いパフォーマンスと信頼性を実現するのが、Wasabiのクラウド階層化ソリューションです。詳細については、以下のページからご確認ください。...
クラウドストレージは、あらゆる組織、特にマネージドサービスプロバイダー(MSP)がサポートするビジネスにとって基盤となる要素です。MSPとは、テクノロジー導入の最前線に立ち、常時接続のオンデマンド環境でクライアントと顧客のやり取りをサポートする役割を指します。最新のCloud Storage Indexによると、過去5年間で72%の組織がクラウドオブジェクトストレージを使用しています。今ではクラウドを単に導入するだけでなく、それに伴う説明責任も求められるようになり、より難解な課題に対応しなければなりません。また、昨今のデータ利用に合わせて構築されていないプラットフォームではクラウドストレージの請求額が予想を上回る傾向にあり、投資利益率(ROI)を検証する必要が生じています。私たちはこの状況に対応するトップクラスのMSPの現状を知るべく、Vanson Bourne社との提携により、大規模かつ複雑な環境を管理するMSPのシニアリーダーたちにインタビューを行いました。そこで得られた情報は驚くほど率直で、一貫性があり、時に困難な課題も伴うものでした。信頼性が高く、コスト効率に優れたクラウドストレージをサービスに組み込む際、MSPが直面する5つの厳しい現実を分析してみましょう。1. データ量は急増しており、その勢いは未だ衰えずデータの増加は減速していません。2024年、クラウドに保存されているデータ量は3.6ゼタバイトにのぼります。IDCは、2028年までにその量は3倍になると予測しています。AIの導入、コンプライアンス、ハイブリッドワークなど、データ増加の原因は多岐にわたります。それが何であれ、大量のデータ生成への早急な対応が求められていることに変わりはありません。インタビューを受けたMSPは、前年比15~20%のストレージ増加を行っていることがわかりました。リモートでの連携、セキュリティログ、AIモデルのトレーニングなどにビッグデータを使用する目的で、ストレージの需要が高まっています。2. 多くのMSPが依然として単一のエコシステムに留まっている多くのMSPは、単一のベンダーに依存しないアプローチを採用し、業界・インフラ・デジタル成熟度が異なるクライアントに幅広く対応しながら増大するデータ需要に対処しています。一方、各ベンダーのプラットフォームはそれぞれ目的が異なります。たとえば、AzureはMicrosoftベースのスタックを多用する企業に適しています。GCPはAI対応のワークロードと分析に秀でています。AWSは多くの場合、汎用ワークロードを強化します。ワークロードのパフォーマンス、コンプライアンス、コスト効率を両立させるには、こういったサービスを適切に組み合わせる必要があります。しかし現実には、MSPのストレージワークロードの70~75%はまだAWS上で実行されています。その理由は、AWSからの移行に高額なコストがかかるためです。データの移動、ワークロードの再調整、ベンダーの完全な切り替えを行う場合は「退出税」として下り転送料を支払う必要があります。もし、ビジネスにより適した別のプラットフォームを見つけたとしても、コストが高額になるため、クラウド移行が困難になる可能性があります。3. データアクセスおよびデータ利用の増加による予算オーバー2024年、MSPの80%がクラウドストレージ料金が予算オーバーになったと回答しています。また、この予算の半分は容量ではなく手数料に充てられたことが判明しました。データは日常的な操作で頻繁にアクセスされるため、コストが急速に増加します。85%の回答者が少なくとも月に1回バックアップデータを復元83%の回答者が少なくとも月に1回アーカイブデータにアクセスバックアップを復元、災害復旧計画のテスト実行、クライアントのアーカイブデータ取得などを行う場合、そのたびにAPI料金、下り転送料、階層移行コストが発生します。そのため、アーキテクチャを変更しない限り、クライアントのニーズに応じるためにより多くの料金を支払うことになります。4. コストを優先することでデータが無防備な状態にCloud Storage Indexでは毎年、セキュリティの重要性を強調していますが、組織の現状は異なるようです。実際に、ランサムウェア、誤削除、内部脅威に対する最も重要な安全対策の一つである不変性(オブジェクトロック)を実際に取り入れているMSPは半数以下でした。この理由は、オブジェクトロックなどのコア保護を有効にするとストレージコストが高くなるためと思われます。オブジェクトロック関連のコストオブジェクトロックを設定するためのPUTリクエスト保持設定を確認するためのGET/HEADリクエストライフサイクルポリシーが変更または拡張された場合のPOST/DELETEリクエストプレミアム機能を追加しないと最低限のセキュリティを得られない状態では、ベストプラクティスやコンプライアンスに対応できず、データの脆弱性が増すことになります。5....
クラウド保存は利便性が高い一方で、依然としてセキュリティに不安を感じている人も少なくありません。本記事では、クラウド保存における安全性の基本から、暗号化、アクセス制御、バックアップ、災害対策といった最新の対策までを整理し、企業や個人がクラウドでデータを安全に管理するための具体的な方法を解説します。クラウドは本当に安全?基本の仕組みと潜むリスク一般的に、クラウドストレージは物理的なオンプレミス環境より安全性が高いとされています。その理由は、堅牢なデータセンター、データの冗長化構成、専門家による24時間365日の監視体制など、サービス提供者が高度なセキュリティ基盤を備えているためです。しかし、クラウド特有のリスクも存在します。例えば、サイバー攻撃やユーザー側の設定ミス、そしてサービス提供者側のシステム障害などです。クラウドのメリットを最大限に活かすには、これらのリスクについて理解し、適切な対策を講じる必要があります。クラウドの安全性を脅かす5つの脅威クラウド上のデータは、さまざまな脅威にさらされています。ここでは、代表的な5つの脅威について解説します。脅威1:外部からのサイバー攻撃悪意のある第三者によるサイバー攻撃は、最も警戒すべき脅威の一つです。データを暗号化して身代金を要求するランサムウェア、システムに侵入して情報を盗むマルウェア、大量のデータを送りつけてサービスを停止させるDDoS攻撃、特定の企業を狙う標的型攻撃など、その手法は多様化・巧妙化しています。これらはいずれも、データの破壊や機密情報の流出などの深刻な被害につながる可能性があるため、攻撃を想定した事前の対策が必要です。脅威2:ヒューマンエラーによる設定ミス高度な技術的対策を講じていても、人為的なミスが原因で情報漏洩が発生するケースは少なくありません。例えば、アクセス権限の設定ミスによって、本来アクセスできないはずの従業員が機密データにアクセスしたり、公開範囲の設定を誤ってインターネット上の誰でもファイルを見られる状態にしてしまうなどのリスクが挙げられます。特にIT部門には、十分な注意が必要です。脅威3:内部不正による情報漏洩悪意を持った従業員や元従業員など、正規のアクセス権限を持つ人物による内部不正も深刻な脅威です。権限を悪用して顧客情報や技術情報などの重要なデータを不正に持ち出したり、システムからデータを削除・破壊したりする行為がこれに該当します。内部不正は外部攻撃に比べて検知が遅れやすく、重大な被害につながりやすいため、権限管理とログ監視が欠かせません。脅威4:サービス提供者のシステム障害クラウドサービス自体にシステム障害が発生するリスクも考慮しなければなりません。例えば、ハードウェアの故障やソフトウェアのバグにより、一時的にデータへアクセスできなくなるケースです。障害の復旧には時間がかかる場合もあり、業務に支障をきたす恐れがあります。事業者の障害対応力やSLA(サービス品質保証)の内容を把握しておくことが大切です。脅威5:大規模な自然災害データセンターが所在する地域で、地震や水害、火災などの大規模な自然災害が発生した場合、データが物理的に消失するリスクがあります。多くのクラウドサービス事業者は複数の地域にデータセンターを分散させるなどの対策を講じていますが、自社のデータがどの地域に保管されているかを把握し、万一の事態に備えておくことが重要です。クラウド保存の安全性を高める基本対策クラウドを安全に利用するためには、ユーザー自身が基本的なセキュリティ対策を実践することが不可欠です。強力なパスワードと多要素認証(MFA)の設定セキュリティの第一歩は、アカウントの保護です。推測されにくい複雑なパスワードを設定するのはもちろんのこと、IDとパスワードに加えて、SMS認証コードや認証アプリなど、複数の要素を組み合わせて本人確認を行う「多要素認証(MFA)」を設定することが極めて重要です。これにより、万が一パスワードが漏洩しても、不正アクセスを大幅に防ぐことができます。アクセス権限の最小化従業員やシステムアカウントには、業務上必要な最小限の権限のみを付与する「最小権限の原則」を徹底しましょう。全員に管理者権限を与えるような運用は、内部不正やアカウント乗っ取り時の被害拡大につながります。部署や役職ごとにアクセスできるデータの範囲をきめ細かく設定し、不要な権限は速やかに削除する運用ルールを明確にすることが重要です。アクセスログの定期的な監視誰が、いつ、どのデータにアクセスしたかを記録する「アクセスログ」を定期的に監視することで、セキュリティインシデントの兆候を早期に発見できます。例えば、深夜や休日の不審なアクセス、特定のユーザーによる大量のデータダウンロードなどを検知することが可能です。ログを監視・分析する仕組みを導入し、異常が発生した際に即座に対応できる体制を整えましょう。企業のデータを守るための高度なセキュリティ技術基本的な対策に加え、より高度な技術を導入することで、データ保護のレベルを飛躍的に高めることができます。データの暗号化暗号化は、データを第三者に読み取られないように保護する基本的な技術です。データがインターネットなどのネットワークを通過する際の「転送中の暗号化(SSL/TLS)」と、ストレージに保存されている状態での「保管中の暗号化(at-rest encryption)」の両方を実施することが不可欠です。これにより、通信の盗聴やストレージメディアの盗難といったリスクからデータを保護できます。バックアップとバージョニングランサムウェア攻撃によるデータ暗号化や、従業員による誤削除といった事態に備え、データのバックアップは必須です。さらに、ファイルの変更履歴を複数世代にわたって保存する「バージョニング機能」を活用することで、問題が発生する前の特定の時点の状態にデータを復元できます。これにより、迅速な事業復旧が可能になります。オブジェクトロック「オブジェクトロック」は、一度書き込まれたデータを、設定した期間中は変更・削除できないようにする機能です。これを利用することで、ランサムウェアによるデータの暗号化(上書き)や、悪意ある第三者によるデータ削除を完全に防ぐことができます。Wasabiの強みでもあるこの機能は、ランサムウェア対策や、法的・規制上の要件(コンプライアンス)を遵守するために極めて有効です。DR(災害復旧)対策DRは、メインのデータセンターが大規模災害などで被災した場合に備えるための対策です。主要拠点とは地理的に離れた別の拠点にデータをリアルタイムで複製しておくことで、メインシステムがダウンしても、速やかに予備システムに切り替えて事業を継続することが可能になります。BCP(事業継続計画)の観点からも非常に重要です。安全性でクラウドサービスを選ぶポイント自社に最適なクラウドサービスを選ぶためには、セキュリティに関する以下のポイントをチェックすることが重要です。第三者認証の取得状況:情報セキュリティに関する国際規格「ISO/IEC 27001」や、米国公認会計士協会(AICPA)が定める「SOC 2」など、客観的な第三者認証を取得しているかを確認します。業界特有のコンプライアンスへの対応:医療分野の「HIPAA」や金融業界の「FINRA」など、自社の業界で求められる規制やコンプライアンス要件に対応しているかを確認します。データセンターの物理的セキュリティと所在地:データセンターの入退室管理や監視体制といった物理的なセキュリティ対策が厳重であるか、またデータの保管場所が自社のポリシーに適合するかを確認します。障害発生時のサポート体制とSLA:障害発生時に迅速なサポートを受けられるか、またサービスの稼働率を保証するSLA(サービス品質保証)が明確に定められているかを確認します。セキュリティ機能の透明性と料金体系:提供されるセキュリティ機能の詳細や、それらが標準機能かオプション料金かなど、料金体系が明確で透明性が高いかを確認します。まとめクラウド保存を安全に行うには、利便性と安全性の両立が不可欠です。MFAの設定やアクセス権限の管理といった基本的な対策はもちろん、暗号化やオブジェクトロックといった最新の技術動向を理解し、自社に取り入れることが安心につながります。そして最も確実な手段は、セキュリティを重視して設計された信頼性の高いクラウドサービスを選択することです。Wasabiは、低コストでありながら企業のデータを最高レベルで保護するセキュリティ機能を提供しています。ランサムウェア対策に有効なオブジェクトロック機能や、堅牢なデータセンターについての詳細は、以下のページをご覧ください。...
