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データ活用を加速させる「構造化データ」と「非構造化データ」とは?

Thu Dec 05 2024By Mayuko Yoshitome

企業にとって、データは宝の山と言えます。競争優位性を築き、顧客体験を向上させるためには、データに基づいた意思決定が不可欠です。

一方で、データ活用を成功させるためには、まず「どのような種類のデータが存在するのか」を理解しなければなりません。データには大きく分けて「構造化データ」と「非構造化データ」がありますが、それぞれの特徴や活用方法は大きく異なります。

本記事では構造化データと非構造化データの違いを分かりやすく解説し、両者を統合的に管理できる「データレイク」の概念やメリットを解説。データレイク構築に最適なクラウドストレージの選び方も紹介していきます。

構造化データと非構造化データの基本

企業活動の中で日々生成されるデータは、大きく「構造化データ」と「非構造化データ」の2つに分類されます。これらはそれぞれ異なる特性を持つため、目的に応じた使い分けが必要です。

構造化データの特長

構造化データとは、データベースで管理しやすいよう、あらかじめ定義された形式に従って整理されたデータのことです。たとえば、顧客情報(氏名、住所、電話番号など)や売上データなどが挙げられます。これらは、主にRDB(リレーショナルデータベース)などのデータベースで管理されます。

構造化データの特徴は以下の通りです。

  • データ検索や整理が容易

データが構造化されているため、特定の情報に素早くアクセスし、分析を行うことが容易になります。

  • 一貫性とスケーラビリティの強み

データの形式が統一されているため、データの整合性を保ちやすく、データ量の増加にも柔軟に対応できます。

非構造化データの特長

非構造化データは、定義された構造を持たないデータのことです。テキストデータや画像データ、動画データなど、私たちが普段目にする情報の大部分が非構造化データに該当します。近年では企業が扱うデータ量の増加とAI技術の進化に伴い、非構造化データの活用が注目されています。

非構造化データの特徴は以下の通りです。

  • テキスト、画像、動画、音声など多様なデータ形式

顧客の行動履歴や市場トレンドなど、従来の構造化データだけでは得られなかった洞察を得ることが期待できます。

  • データの柔軟な保存と利用が可能

データ形式が自由であるため、さまざまな用途に合わせた柔軟なデータ保存と活用が可能です。

  • AIや機械学習での活用

自然言語処理や画像認識などの技術により、非構造化データからビジネス価値を創出できる可能性が広がっています。


構造化・非構造化データをまとめて保存するデータレイク 

企業では、これまでデータの種類ごとに異なるシステムで管理を行うのが一般的でした。しかし近年、構造化データと非構造化データを統合的に管理できる「データレイク」が注目されています。

データレイクとは、あらゆる種類のデータを一箇所に集約した巨大なデータストレージ を指します。構造化データ、非構造化データを問わず、データレイクにはさまざまなソースからのデータを、そのままの形式で保存することが可能です。蓄積されたデータは用途に合わせて自由に抽出・加工・分析することができるため、ビジネスにおけるデータ活用を促進する強力な基盤となります。

データレイクの利点

データレイクは、以下のような利点から、多くの企業で導入が進んでいます。

  • 大容量データの効率的な管理

データの種類ごとにサイロ化することなく、一元的にデータを管理することで、ストレージコストの削減やデータの一貫性確保に繋がります。

  • 非構造化データの検索・処理の柔軟性

従来のデータベースでは扱いが難しかった非構造化データを容易に保存・検索・分析することが可能になります。

データレイクの課題

一方で、データレイクの導入にはいくつかの課題も存在します。

  • 取り扱いの複雑さ

さまざまなデータ形式に対応する必要があるため、データ管理の仕組みが複雑になりがちです。

  • コスト

大規模なデータレイクを構築・運用するには、相応のコストがかかります。

これらの課題を解決するため、近年ではクラウドサービスを活用したデータレイク構築が増加しています。クラウドサービスを効果的に活用することで、低コストで柔軟かつ安全なデータレイク環境を構築することが可能です。

構造化・非構造化データの管理に最適なクラウドストレージの選び方

データレイクを構築するうえで、クラウドストレージの活用が有効であることは間違いありません。しかし一口にクラウドストレージと言ってもさまざまなサービスが存在し、それぞれ特徴が異なります。最適なサービスを選ぶためには、自社のビジネスニーズに合ったストレージ選びが重要です。

クラウドストレージを選ぶ際は、特に以下の点に注目すると良いでしょう。

  • ストレージの種類

オブジェクトストレージ、ファイルストレージ、ブロックストレージなど、用途に合わせて適切な種類のストレージを選択する必要があります。データレイクを構築する場合、柔軟性と拡張性に優れたオブジェクトストレージを選ぶのが一般的です。

  • 費用

ストレージ容量やデータ転送量、APIリクエスト数など、クラウドサービスごとに課金体系が異なります。長期的な運用コストを考慮し、自社の利用状況に合った料金プランを選択する必要があります。

  • 拡張性

データ量は時間と共に増え続けるため、将来的なデータ増加にも柔軟に対応できるストレージを選ぶことが重要です。

  • セキュリティ

機密性の高いデータを取り扱う場合は、セキュリティ対策が強固なサービスを選ぶ必要があります。データの暗号化機能やアクセス制御機能などを確認しましょう。

  • データ分析機能

データレイクに蓄積したデータを迅速に分析できるよう、分析機能が充実しているサービスを選ぶことも重要です。

これらの基準を踏まえ、複数のクラウドストレージサービスを比較検討し、自社にとって最適なサービスを選び出すことが重要です。

特に近年では、低価格ながらも高機能なサービスが登場しており、データレイク構築のハードルは大きく下がっています。

まとめ

今回の記事では、データ活用を加速させるうえで重要な「構造化データ」と「非構造化データ」の違い、そして両者を統合管理できる「データレイク」について解説しました。

構造化データはデータベースで管理しやすい形式で、売上情報など数値分析に役立ちます。一方、非構造化データはテキストや画像など多様な形式を持ち、顧客行動分析や市場トレンド把握などに活用できます。

これらの異なる性質を持つデータを一元的に保存・管理することで、データ分析の可能性を大きく広げるのがデータレイクです。そしてクラウドストレージは、データレイクをより低コストで柔軟かつ安全に構築することを可能にします。

Person in a suit holding two cloud icons with a connecting arrow, symbolizing data transfer or cloud computing.
ジェネラルクラウドストレージのデータ移行を成功させるポイントとは?

AIとアーカイブの双方に適したストレージ

AIについて確かに言えるのは、学習に大量のデータが必要だということです。大規模言語モデル(LLM)、画像生成、推奨アルゴリズムのために入力できるデータが多ければ多いほど、精度の高い結果につながります。しかし、AIは単にビッグデータを読み込めるだけでなく、私たちが所有する膨大な量のデータを理解するのにも役立ちます。AIは、インデックス作成、カタログ化、画像認識を通じて強力な検索エンジンとなり、企業におけるデータの扱い方を再定義しました。つまり、AIエンジンを利用できるようになった途端に、ほぼすべての企業データが価値あるものとして見なされるようになったのです。長期アーカイブの「コールド」なデータでさえ、AIモデルを通せば貴重な洞察を得られる可能性があります。アクティブアーカイブにおけるコールドデータの種類 もちろん、組織にはアーカイブ以外にもさまざまなデータがあります。特にメディアを多用する組織では、新しいデータや積極的に利用するデータが絶えず流れ込む状況に対処する必要があります。しかし、コールドデータ資産を徹底的に理解し、その戦略的価値を最大限に引き出すことも重要です。 Active Archive Allianceの年次レポートによると、コールドデータは主に以下の3つに分類されます。履歴データ:過去のプロジェクトや分析のために収集されたが、現在は積極的に使用および学習されていないデータ。更新されたデータによって置き換えられた、旧バージョンのデータも含まれる。長期コンプライアンスデータ:参照またはコンプライアンスの目的で保存されているが、進行中のAIタスクでは積極的にアクセスされないデータ。規制遵守や法的要件のほか、長期的な分析のために収集されたデータが含まれる。実験データ:主要なワークフローの一部としてではなく、実験目的または予備調査に使用されるデータ。これらのデータセットは参照用として保管されるが、実験が終了すると定期的にアクセスされることはない。AIに適したアーカイブ環境を作成するコツは、AIパイプラインの各段階に適切なストレージを選択することです。Wasabiでは、データの取り込みとアーカイブの段階に重点を置いています。ストレージに求められるのは、効率的に拡張して膨大なメディアアーカイブを収容できることです。また、人間とAIの両方にシームレスなオンデマンドアクセスを提供しながら、低コストで実用的に実装できることも重要です。Wasabiは、これらの要素をすべて兼ね備えたクラウドオブジェクトストレージを提供します。さらにWasabiはこの度、Active Archive Allianceに最新のクラウドオブジェクトストレージベンダーとして参加いたします。コスト要因 アーカイブに携わる方であれば、「安価で大容量」という表現で販売されるアーカイブストレージを目にしたことがあるかもしれません。「安価で大容量」なクラウドストレージは、テラバイトあたりの初期コストが低いかもしれませんが、予期しない隠れたコストが発生し、全体の価格が急上昇することがよくあります。クラウドオブジェクトストレージの領域では、ストレージに支払う料金をはるかに上回るデータアクセス料金や利用料金が発生する可能性があります。実際に、Wasabi 2025 Cloud Storage Index Reportによると、ストレージ料金の半分近くがストレージ以外の料金に充てられていたケースも確認されています。安価なコールドストレージ層では、データアクセスのインスタンスごとに料金が請求されます。そのため、1,000件あたりわずか1セントなど、少額の料金設定の場合でも、合計額がすぐに膨らんでしまいます。こう言ったケースは、特にAIを扱う際に当てはまります。AIは、新しいモデルの学習や微調整の目的で、アーカイブデータへ定期的にアクセスします。AIを活用したアクティブアーカイブ戦略を検討している組織は、クラウドストレージを選択する際、お買い得に見える製品にも注意を払う必要があります。データへのアクセスやデータ移動に高額な料金を課して予算を圧迫することのないストレージプロバイダーを検討しましょう。Wasabiを選ぶメリットWasabi...

学びを資産に:パートナー向けの最新トレーニングコース「Wasabi 技術認定」

新年が明けて1か月以上が経ちましたが、2025年の目標はまだ覚えていますか?その目標にはおそらく、販売ノルマの達成、顧客向けサービスのアップセル、クラウドストレージサービスに関する知識の向上などが含まれていることでしょう。Wasabiは、チャネル向けに設計されたクラウドストレージで効率を最大化し、利益率を拡大できる体制を提供します。また、Wasabiの多様なパートナー向けサービスを通して、お客様の目標を念頭に置いて設計された、独自の教育サービスをご利用いただけます。 最新トレーニングコースであるWasabi 技術認定は、チームで設定した目標の達成に向けたサポートを行います。このコースはシステムエンジニアやソリューションアーキテクトを対象としており、Wasabi Hot Cloud Storageの技術的な詳細や、お客様が最も求める機能について学ぶことができます。チームのメンバー全員がアクセスしやすく、使いやすい仕様になっています。トレーニングコースの内容トレーニングは、Wasabi Hot Cloud Storageの紹介と、Wasabi Account...

データセキュリティの現状:データ侵害を引き起こした2024年の主な攻撃

はじめに 2024年も、サイバー攻撃が多く発生した年となりました。特にランサムウェア攻撃は、驚くべき数で重要な機関に大混乱を引き起こし続けています。Sophosによるレポート「The State of Ransomware 2024」によると、2024年は59%の組織がランサムウェア攻撃の被害を受けました。標的となった企業の98%はデータを回復できたものの、大きな混乱と多額のコスト被害が発生しました。攻撃の際、要求される身代金の平均額は200万ドルでしたが、これに復旧費用が加わり、平均273万ドルのコスト負担が組織にかかる結果となりました。昨年、ハッカーは世界最大規模の組織や政府機関などに対して、業務の麻痺、データ損失、金銭的な損害を与えました。しかし、攻撃の多くは簡単な対策で軽減または完全に回避できた可能性があります。それでは、2024年に発生した破壊的なランサムウェア攻撃をいくつか見てみましょう。医療機関 2024年初頭、米国最大手の医療機関がランサムウェア攻撃を受けました。その結果、1億3100万人もの患者の記録が漏洩するデータ侵害が発生しました。流出した情報には、個人健康情報(PHI)、支払い記録、患者の社会保障番号、個人識別情報(PII)などが含まれていました。この医療機関は、情報が流出したことで数々の規制に基づく制裁を受けることになりました。さらに、処方箋を処理する目的などで提供していた医療ソフトウェアアプリの停止も余儀なくされました。また、決済サービスや歯科および医療記録アプリが停止したことで、医療に支障をきたし、患者の健康に影響を及ぼす可能性も示唆されました。課題 攻撃者は、盗んだ認証情報を使用して医療機関のネットワークとデータ資産にアクセスしました。実際、こういった攻撃は珍しくありません。Sophosのレポートによると、ランサムウェア攻撃の29%は認証情報の侵害をきっかけとしています。この医療機関では、多要素認証(MFA)が採用されていませんでした。そのため、攻撃者は盗んだ認証情報を悪用してネットワークへ侵入することができたのです。ユーザーとそのデバイスを認証する機能がなかったことで、正規のユーザーになりすました攻撃者を識別できず、侵入を防ぐことができませんでした。ソリューション MFAを採用していれば、攻撃の大部分を阻止できたはずです。MFAは、ネットワークアクセスを許可する前に、テキストメッセージや電子メールで固有コードを受信するようユーザーに要求します。これにより、盗まれた認証情報の使用をブロックすることができます。また、モバイルアプリを使用した新しいMFAモードでは、モバイルデバイスのなりすましによるSMSメッセージの傍受リスクを回避でき、より強力な保護が提供されます。さらに強力な認証対策になりうるのが、マルチユーザー認証(MUA)です。MUAでは、データの削除や暗号化、アカウントの変更や削除などを行う際、複数のユーザーが確認する必要があります。これにより、システムが侵害された場合でも、ランサムウェア攻撃による悪影響を軽減することが可能です。政府機関 ...